土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。
Gerard & Kelly, E for Eileen, 2024. 4K video, color, sound, 22 min. Nikki Amuka-Bird. Courtesy of the artists and Marian Goodman Gallery. © Adagp Paris, 2024 EFE_Still
国際女性史月間である3月、様々な女性の物語を描いたショートフィルムが特集されていますが、インテリア好き、建築好きであることから気になったのが、『アイリーン・グレイの孤独』です。
モダニズム建築の巨匠とされる、ル・コルビュジエ。
東京・上野にある国立西洋美術館はル・コルビュジエが設計を担当し、世界文化遺産に登録されていることでご存じの方も多いかと思います。
そんなル・コルビュジエが脅威を感じ、才能に嫉妬したとされるのが、アイルランド出身の女性建築家、アイリーン・グレイです。彼女が愛する建築家ジャン・バドヴィッチのために設計したフランス、コート・ダジュールの見晴らしのよい高台に建つヴィラ、「E.1027」を実際に使用して、『アイリーン・グレイの孤独』は撮影されています。
Gerard & Kelly, E for Eileen, 2024. 4K video, color, sound, 22 min. Nikki Amuka-Bird. Courtesy of the artists and Marian Goodman Gallery. © Adagp Paris, 2024 EFE_Still
この作品に描かれるのは、アイリーン・グレイの生涯のパートナーであるジャン・バドヴィッチの不実さやヴィラにまつわるグレイの息苦しさと苦悩です。
「E.1027」は、のちに“モダニズム建築史上の傑作”と称えられる建築で、シンプルかつモダン、そして機能的な造りとなっています。映像からは、コート・ダジュールの青い海を臨む、深いブルーが印象的にあしらわれた建築やインテリアの魅力と、アイリーン・グレイに潜んでいた苦悩を垣間見ることができます。
南フランスを訪れ、実際にグレイという人物の片鱗を建築から感じてみたい(現地で一般公開されているそうです)・・・そう思わされる作品です。
Gerard & Kelly, E for Eileen, 2024. 4K video, color, sound, 22 min. Nikki Amuka-Bird. Courtesy of the artists and Marian Goodman Gallery. © Adagp Paris, 2024 EFE_Still
南フランスを舞台に、実際の建築を使用して撮影された『アイリーン・グレイの孤独』に合わせるなら、やっぱりロゼワインしか考えられません…! “キング・オブ・ロゼ”として名高い、フランスでもトップクラスのロゼワインの造り手、ドメーヌ・オット★が手がける「バイ・オット・ロゼ」は、この作品を観ながら楽しむのにぴったりのワインです。美しく淡いピンク色、桃やアプリコット、パッションフルーツなどの香りにフレッシュでフルーティーな味わい。このロゼワインのグラスを傾けながら鑑賞すれば、コート・ダジュールの風が吹き込んでくる…そんな気分になれるかもしれません。
ドメーヌ・オット★は、プロヴァンスにおけるロゼワインの品質を飛躍的に向上させた第一人者として知られています。100年以上も前から、独自の哲学に基づく自然農法による耕作を取り入れており、プロヴァンスでのオーガニック栽培の先駆け的存在です。「バイ・オット・ロゼ」は、ドメーヌ・オット★が手がけるフラッグシップワインのセカンド的存在。グルナッシュ、サンソー、シラー、ムールヴェードルという南フランスのブドウをブレンドしており、フラッグシップワインよりもグッと手軽に楽しめつつ、その上質な味わいは“キング・オブ・ロゼ”のエッセンスもたっぷり。ロゼワインの入門編としてふさわしい1本です。ロゼワインは、リラックスタイムに楽しんでこそ。映画を鑑賞しながら、どうぞゆっくりとお楽しみください。