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Jun. 09, 2025

【ワイン with ショートフィルムの時間】ワインwithショートフィルムの時間~vol.5

土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。

今月のピックアップ・ショートフィルム:
数々の海の風景が印象的な作品 『最終フェリーに乗って』

5月24日に華やかに閉幕したカンヌ国際映画祭。それに併せて、ブリリア ショートショートシアター オンラインではカンヌショート特集を開催しています。パルムドール受賞作品やノミネート作品の数々はいずれもすばらしく、特にわずか10分ちょっとでありながら、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の歴史をひとつのエピソードに凝縮した作品、『沈黙を破った男』には思わず圧倒されてしまいました。そんな良作揃いのなかで、“ワインを合わせる”という視点で選んでみたのが、『最終フェリーに乗って』(アメリカ/香港)です。

ある中年の漁師が、年老いた母親と共に中国沿岸に多く浮かぶ実在の島、“塔門”で暮らしています。かつて香港で殺し屋だった過去を持ち、現在は母親と静かな生活をしている彼のもとに、弟子だった中国人の女性が現れます。彼女は最終フェリーが出航する前に彼を殺そうとするのですが…。ショート作品でありながら、長い映画の一部を切り取って観ているような、終わってもまだまだこの先が続くような、そんな物語性の強い、心に残る作品です。

この作品にお似合いのワインは・・・

ワイン名:パソ・ダス・ブルーシャス
生産者名:トーレス

https://www.enoteca.co.jp/item/detail/080050152

ボードで海を渡る光景、ひらひらと風になびく干物、深い闇に覆われた空と海など、数々の海の風景が印象的な作品ですが、フィルムノワール的な雰囲気の中で、はっと目を引くのが魚の調理シーン。採ってきたばかりの新鮮な魚を中華包丁で鱗を落とし、大きな中華鍋でジューッと音を立てながら料理しているのが、やたら美味しそうなのです(この料理は、魚を丸ごとフライパンで焼く“香煎魚”でしょうか・・・?)。
この魚料理に合わせるなら・・・と考えたのが今回のワイン。素材を活かしたシンプルな調理法のようなので、フレッシュでミネラル感があり、魚介と相性抜群のパソ・ダス・ブルーシャスを選んでみました。“スペインで最も上質な白ワインの産地”として名高いガリシア地方の海岸沿い、リアス・バイシャスで造られており、“リアス式海岸”という名前の由来にもなった、深く入り組んだ海岸線が特徴の産地です。
本作品の舞台となる香港~深セン沖は250もの島々からなっていることも、ワインと映画の共通点と言えます。美味しそうな魚料理と島の光景の余韻に浸りながら味わうのにピッタリではないでしょうか。

このワインを手がけるのは、「世界で最も称賛されるワインブランド」にも選ばれたトーレス。フランスとの国境に近いバルセロナの近郊、ペネデス地方でワインを造り続けて140年以上の歴史を持つ、スペインきっての名門です。彼らがガリシア地方で手がけるパソ・ダス・ブルーシャスは、スペインの土着品種アルバリーニョを使って造られています。土地由来のミネラル感と爽やかな味わいが魅力で、魚介との相性が抜群。映画に登場するような新鮮な魚のソテーはもちろん、お刺身をはじめ、フリットなど幅広く合います。魚料理を楽しむときには、ぜひ試していただきたい1本です。

Writer:エノテカ広報・佐野

全国にワインショップを展開するワイン専門店「エノテカ」で広報を担当。映画とワインが大好物。映画やドラマにワインが出てくると、思わずチェックしてしまいます。ワインだけでもおいしく楽しめますし、映画単体でももちろん楽しいですが、2つをつなげてみるとより世界も広がって見えてきます。夜のリラックスタイムは、ぜひワインと映画のマリアージュを楽しんでみてください。

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