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Jul. 15, 2025

【ワイン with ショートフィルムの時間】ワインwithショートフィルムの時間~vol.7

土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。

今月のピックアップ・ショートフィルム:美しい海辺の風景が印象的な 『浜辺の観覧車』

ブリリア ショートショートシアター オンラインでは、7月に様々な涙が登場する映画を集めた「涙の訳は」を特集中です。ひとくちに涙と言っても、その理由は実にさまざま。それぞれの作品では、悲しいときとは限らない印象的な涙のシーンを、直接的に、あるいは間接的に描き出しています。いろんなシーンでの、いろんな涙がそれぞれ心に残っていますが、今回取り上げたいのは、スペインのとある美しい海岸を舞台にある男性の不思議な出会いを描く『浜辺の観覧車』です。
主人公はアスペルガー症候群の男性、シモン。彼の趣味は、決まった曜日、決まった時間に金属探知機を使いながら砂浜を散歩すること。金属探知機で砂に埋もれた宝物を見つけるのが彼の喜びで、見つけるのはミニカーだったり、バッジだったり。でも、そんな些細なものにも、彼にとってはいろんな物語を思い起させる大切なものなのです。ある日、いつものように金属探知機で宝探しをしていると、砂浜にパラソルを刺してくつろぐ美しい女性、バレリアに出会います。言葉が話せないバレリアですが、手話を交えながら会話を交わすシモン。最初はちょっと険悪ムードが漂いましたが、次第に打ち解けてゆき、シモンは彼女の隣に座って宝物を見せながら、妄想の物語を披露します。通じ合うシモンとバレリアの会話、そして最後の切ないエンディング・・・。美しい海辺の光景と共に、じんわりとなんとも言えない余韻が残る名作です。

この作品にお似合いのワインは・・・

ワイン名:ヴィーニャ・エスメラルダ
生産者名:トーレス

https://www.enoteca.co.jp/item/detail/080052002

この作品をより印象的に、忘れ難いものにしているのが、美しい海辺の風景です。本作品はスペインの作品で、どこの海辺かまではわからないのですが、仮に地中海だとすると、地中海をイメージして造られたこのスペインの白ワインがピッタリでは・・・と思い、選んでみました。加えて、映画に登場するシモンとバレリアが交わすのは会話のみ。特に何か飲んだり食べたりすることはないのですが、ふたりが砂浜でキリリと冷やしたこのワインを飲みながら過ごしていたら、とてもすてきなんじゃないか・・・そんな観点でも選んでみました。

以前にもご紹介したことのある、スペインの名門ワイナリー「トーレス」。彼らの注目すべき取り組みはさまざまにあるのですが、その中でも特筆すべきが、環境への取り組みです。“地球を大切にすればするほど、ワインはより良くなる”――これが「トーレス」のワイン造りの考え方の基本。2008年には、CO2排出量の削減による地球温暖化への影響緩和を目的とした「トーレス&アース」プロジェクトも立ち上げました。こうした功績をもとに、アメリカ・タイム誌が2023年に発表した“世界の気候変動対策を主導する最も影響力のある100人”の1人として、“イノベーター”カテゴリにおいて4代目ミゲル・A・トーレス氏が選ばれているほどです。
「ヴィーニャ・エスメラルダ」 は、1976年に誕生し、50年近くに渡って愛され続けているスペインワイン。日本語で、“エメラルドのワイン”を意味し、“地中海など海辺のリゾート地で、仲間とリラックスしながら楽しむワイン”をコンセプトに造られています。トロピカルフルーツとオレンジの花の上品で豊かなアロマ、口に含むとフレッシュでほのかに甘さを感じる果実味が溢れます。余韻にはシトラスのニュアンスがゆったりと続き、最後までフルーティーな風味が楽しめます。季節は盛夏。しっかりと冷やした「ヴィーニャ・エスメラルダ」のグラスを片手に、気持ちだけでもシモンとバレリアのいるスペインの海辺に飛んで、ゆったり夏の夕暮れに黄昏てみませんか・・・?

Writer:エノテカ広報・佐野

全国にワインショップを展開するワイン専門店「エノテカ」で広報を担当。映画とワインが大好物。映画やドラマにワインが出てくると、思わずチェックしてしまいます。ワインだけでもおいしく楽しめますし、映画単体でももちろん楽しいですが、2つをつなげてみるとより世界も広がって見えてきます。夜のリラックスタイムは、ぜひワインと映画のマリアージュを楽しんでみてください。

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