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Sep. 26, 2025

【ワイン with ショートフィルムの時間】ワインwithショートフィルムの時間~vol.9

土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。

さて、9月のブリリア ショートショートシアター オンラインでは、9月9日の“世界占いの日”にちなんで「未来予報はミステリアスに— 運命感じる占いショート特集」を開催中です。

今月のピックアップ・ショートフィルム:ロサンゼルスの中華料理店を舞台に、アルゴリズムから未来を予言する『フォーチュンクッキー』

魅力的な作品が勢ぞろいのなか、今回取り上げたいのは『フォーチュンクッキー』(2024年・アメリカ)です。この作品は最初から気になったのですが、それは今年公開された劇場長編映画『フォーチュンクッキー(原題:Fremont)』(2023年・アメリカ)をちょうど観ていたからかもしれません。

フォーチュンクッキーって、ご存じでしょうか。機知に富んだおみくじやことわざの紙片を入れ、二つ折りにしたお菓子のことで、特にアメリカやカナダの中華料理店で食後のサービスとして出されることが多く、アメリカ文化のひとつとなっているそうです(ですが、もともとのルーツは日本の「辻占煎餅」にあるという話が有力です)。

だからでしょうか、私が観た長編映画の『フォーチュンクッキー』も、今回ご紹介するショートフィルムの『フォーチュンクッキー』も、どちらもアメリカ製作の映画となっています(監督はそれぞれイラン出身、メキシコ出身であることも興味深いです)。

話の内容はもちろん異なりますが、予測できない未来を常に抱える私たちにとって、人生を占い、メッセージを伝える小さな焼き菓子という存在がドラマになりやすいのかもしれません。何が吉と転じるのか、最後の最後までわからないことを伝える長編映画の『フォーチュンクッキー』も大変面白かったですが、ショートフィルムの『フォーチュンクッキー』も、おっ!と意外性があり、引き込まれてしまう作品です。

主人公ディエゴは、家族経営の中華のレストランで働くメキシコ出身の若いウェイター。自分がこのままここで働いていてよいのか、将来について悩んでいます。このレストラン、ちょっと風変わりなお店で、中華料理を提供するだけでなく、食後に提供するフォーチュンクッキーが目玉となっています。そのフォーチュンクッキーは、なんと、客ごとにパーソナライズされたおみくじが入っているというもの。

高齢のオーナー、リャオ氏が開発した高度なアルゴリズムによって生成されており、伝統とテクノロジーの融合とも言えるフォーチュンクッキーなのです。驚くほど正確で、受け取った者の運命を正確に予言するかのようなフォーチュンクッキー。未来をぴたりと予言するおみくじがあるとしたら、あなたはそれを受け取りたいですか・・・? それともそれを見る自信はない・・・?

16分と短いながらも、人間の運命とは、自分の未来とは…そんなことを考えてしまう良作です。

『フォーチュンクッキー』にペアリングしたいワインは・・・

ワイン名:ニーダー・フレルスハイマー・ピノ・ノワール
生産者名:ビアンカ・ウント・ダニエル・シュミット

https://www.enoteca.co.jp/item/detail/1092B615005100040

中華や点心との相性がぴったりのナチュラルワイン「ビアンカ・ウント・ダニエル・シュミット」のピノ・ノワール

作品の舞台は、アルゴリズムから未来を予言するフォーチュンクッキーを提供するロサンゼルスの中華料理店、「ディム・サム・フィエスタカフェ」。

画面に映る中華料理はそれらが主役ではないことから、ちらりとしか映らないのですが、これがなんとまあ、おいしそう・・・!

こんがりと焼かれてぶら下がる鶏の丸焼きや、色鮮やかな野菜の炒めもの、シェフ自信作の点心など、いずれも食欲をそそる様子をしており、このレストランは料理もきっとおいしいに違いない、と思わされます。

そんな中華料理に合わせたい、と思ったのが、いま個人的に中華や点心に合わせるのにハマっているナチュラルワインの生産者、ビアンカ・ウント・ダニエル・シュミットのピノ・ノワールです。実際、モダンな点心のレストランにこのワインを持ち込んだことがあるのですが、柔らかで優しくじんわりと染みるようなピノ・ノワールの味わいが、シュウマイや小籠包の肉の旨味と重なり合って、驚くほど相性が良かったです。おいしいシュウマイとこのワインを用意して『フォーチュンクッキー』を観れば、“映画×料理×ワイン”の最高のペアリングとなること、請け合いです。

ドイツ・ラインヘッセン南部を拠点とする、ナチュラルワインの生産者「ビアンカ・ウント・ダニエル・シュミット」

写真左:シュミット家4代目のダニエル氏と、ハンガリーで醸造を学んだビアンカ氏
写真右:ワインの生産地であるドイツ・​ ラインヘッセン

ビアンカ・ウント・ダニエル・シュミットは、エノテカが7月から取り扱いを開始したナチュラルワインの生産者です。

ドイツ・ラインヘッセン南部を拠点とする生産者で、野生酵母での発酵や亜硫酸塩の極少量使用、無清澄・無濾過によるワイン造りを実践しており、オーガニックの次元の高さを体現した、果実のピュアさと旨味が溢れ出す洗練したスタイルが特徴です。ニーダー・フレルスハイマー・ピノ・ノワールは、柔らかな赤系の果実味とじんわりと広がる旨味が魅力的な滋味深い味わい。幅広い料理と相性良く楽しめますが、個人的には中華との組み合わせを強く推奨します。青い空を描いたラベルも美しく、食卓の雰囲気を盛り上げてくれるはずです。

Writer:エノテカ広報・佐野

全国にワインショップを展開するワイン専門店「エノテカ」で広報を担当。映画とワインが大好物。映画やドラマにワインが出てくると、思わずチェックしてしまいます。ワインだけでもおいしく楽しめますし、映画単体でももちろん楽しいですが、2つをつなげてみるとより世界も広がって見えてきます。夜のリラックスタイムは、ぜひワインと映画のマリアージュを楽しんでみてください。

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