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Feb. 17, 2026

【ワイン with ショートフィルムの時間】ワインwithショートフィルムの時間~vol.14

土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。

今月のピックアップ・ショートフィルム:ワインにぴったり!じんわりと心温まる人間ドラマと俳優陣の自然な演技が際立つ『ピロシキ』

2月のBSSTOは、ワインに合わせるのにいつも以上にぴったりな、「Recipe of Life~お腹がすくほど愛おしい、ひとくちサイズの人生ドラマ」が特集されています。世界各地の厨房や食卓を舞台に、様々なテーマと共に食のシーンがドキュメンタリーやフィクションで描かれ、それぞれがワインを合わせて楽しみたくなる作品ばかりです。なかでも、じんわりと心温まる人間ドラマと俳優陣の自然な演技が際立っていたのが、『ピロシキ』(2023年・フランス)です。

「病気に入院するお父さんが食事を摂らなくなってしまい、私が作る大好物のピロシキさえ食べなくなった」。そう、母親からふたりの子どもたちに電話が入ります。家庭を持ち、子育てや仕事に忙しい姉と、仲違いをして疎遠になっていた弟ですが、母親からの連絡を受け、入院している父親を病院から連れ出す計画を立てます。父親のささやかな願いをかなえてあげようと、スパイ大作戦のごとく計画を実行し、主治医の目をかいくぐってまんまと父親を明るい冬空のもとに連れ出す兄妹と孫たち。これまでまとまりのなかった家族が急に結束する様は見ていて微笑ましく、たった15分の短編ながら、身体がじんわり暖かくなるようなやさしさを感じる名作でした。

『ピロシキ』にペアリングしたいワインは・・・

ワイン名:バルベラ・ダルバ ブリッコ・デイ・メルリ
生産者名:エルヴィオ・コーニョ

肉の旨みが詰まったピロシキと相性抜群で、イタリア北部ピエモンテの日常酒であるバルベラ種を使ったワイン

タイトルどおり、この映画のカギとなっているのはピロシキです。ピロシキとは、挽肉などの具材を詰めて生地で包んで焼くor揚げて調理するロシアやウクライナの伝統的な家庭料理。

入院する高齢の父親の好物というだけでなく、父親を病院から連れ出すときに、病院側に気づかれないよう、母親が医者に熱弁をふるっているのも、ピロシキのレシピ。その辺りもとってもユニークです。母親曰く、彼女のピロシキはキャベツやジャガイモなどは入れず、肉オンリーなのだとか。そんな肉の旨みが詰まったピロシキには、イタリア北部ピエモンテの日常酒であるバルベラ種を使ったワインがぴったりです。素直な果実味と柔らかい酸が特徴的なワインで、ジューシーなピロシキと相性抜群! いずれ父親が退院し、母親が退院祝いにピロシキを山のように焼いて、子どもたちと共にバルベラのワインで乾杯するシーンまで思わず想像してしまう・・・そんな妄想をかきたてるペアリングです。

『ピエモンテで最も素晴らしいワイナリーのひとつ』と高く評価されるエルヴィオ・コーニョ

バルベラとはイタリア・ピエモンテを代表する固有品種のひとつ。同じピエモンテでも、ネッビオーロというブドウから造られるバローロやバルバレスコが有名ですが、これらは非常に高価なワインであることから、日常的にはこのバルベラで造られるワインが家庭で楽しまれています。

このワインを手がけるのは、バローロ・ラヴェーラの家族経営のワイナリー、エルヴィオ・コーニョ。著名なワイン評論家も、「まだあまり知られてはいないが、ピエモンテで最も素晴らしいワイナリーのひとつである」と高く評価する注目のワイナリーです。

現在ワイン造りを手がけるのは、1990年にワイナリーを興したエルヴィオ・コーニョ氏の娘、ナディア・コーニョ氏と娘婿のヴァルテール・フィッソーレ氏。この家族も仲がよく、娘の名前を冠したワインもあったりと家族愛にあふれていて、映画で描かれる愛情あふれる親子を彷彿とさせます。

ワインは、バルベラという品種の個性であるチャーミングな果実味と凝縮感ある味わい。ピロシキはもちろん、牛肉の煮込み料理や赤身肉のステーキなど肉料理と特に好相性。肉の旨みと、バルベラの爽やかな酸が心地よいハーモニーを生み出します。

Writer:エノテカ広報・佐野

全国にワインショップを展開するワイン専門店「エノテカ」で広報を担当。映画とワインが大好物。映画やドラマにワインが出てくると、思わずチェックしてしまいます。ワインだけでもおいしく楽しめますし、映画単体でももちろん楽しいですが、2つをつなげてみるとより世界も広がって見えてきます。夜のリラックスタイムは、ぜひワインと映画のマリアージュを楽しんでみてください。

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