新型コロナウィルスの流行に伴い、映画館や映画上映を企画する飲食店、上映イベントなどが営業自粛に追い込まれています。BSSTOでは「暮らしにシネマチックなひと時を」をテーマに、映画上映に携わるプレーヤーの皆さんやイベントを紹介してきましたが、これまで取材やイベントでつながった方の多くが、大きな影響を受けています。
本コラムでは、「コロナ禍に考える映画上映のいまとこれから」と題し、映画のある場の現状と、クラウドファンドやオンライン上映など各所で始まっている取り組み、そして今回の非常事態が落ち着いたそのあとの世界がどのように変わるのか、映画上映という視点で考えます。
いま何が起きているのか知り、情報の波に飲まれるのではなく、波にのり波を生み出す。そう在るために週に1度のペースでまとめています。
本記事は4月15日現在の情報をもとに執筆しています。また、情報のソースは各社のオフィシャルWEBサイトやSNSアカウントとしておりますが、ご紹介するお一人お一人に対して個別に確認をした訳ではございません。最新の情報は読者の皆様の責任でご確認ください。また、考察や未来予想については、あくまで編集部の見解でありますこと予めご了解ください。
ミニシアター・エイド基金
先週のコラムでも紹介した「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」のクラウドファンディングがスタートした。コロナ禍で経営が切迫する全国のミニシアターの支援のため、映画監督の深田晃司さんと濱口竜介さんが発起人となりスタートした同プロジェクトでは、クラウドファンディングサイト「MOTION GALLERY」上で1口5,000円からの「未来チケットコース」と1口3,000円からの「全力応援コース」という形で広く一般から支援を募っている。4/13(月)からスタートし、4/15(水)午前の時点で8000万円を超える資金が集まっている。集まった資金は、全国79劇場・68団体(4/14(火)現在)に分配される。
また、「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」には加わらず独自に資金集めをしている施設もある。例えば、BSSTOで連載コラムを執筆いただいている藤沢市・鵠沼海岸の「映画と本とパンの店 シネコヤ」は、寄付付きのファンクラブ制度をスタートし、応援を呼び掛けている。
常設の施設ではなくイベントとなるが、Do it Theater (株式会社ハッチ)は、5月に大磯ロングビーチでの開催に向けて『ドライブインシアター2020』のクラウドファンディングをスタートした。同団体ではこれまでにも自動車メーカー等をスポンサーにしてドライブインシアターをプロデュースしてきたが、今回は一般から資金を募って主催する模様だ。外出制限が長期化しコロナがある社会状況の中で、いかにして映画の場を残すのかという模索が始まっている。
Photo by Thomas William on Unsplash
さて、今週は日本ではあまり知られていない海外の取り組みについても紹介したい。
コロナ禍で映画やTVの撮影現場がストップし、俳優たちは休業状態にある。そんな中、インドの映画界の大御所で俳優・プロデューサーのアミターブ・バッチャンは、ボリウッド俳優たちと協力し、全て自宅で撮影した短編映画『Family』を4/7(火)からTwitterで公開している。
Presenting ‘Family’, a made-at-home short film featuring @SrBachchan, #Rajnikanth #RanbirKapoor @priyankachopra @aliaa08, #Chiranjeevi @Mohanlal, #Mammootty, @meSonalee @prosenjitbumba #ShivaRajkumar & @diljitdosanjh.
Supported by #SonyPicturesNetworksIndia & #KalyanJewellers. pic.twitter.com/menuDz808H— sonytv (@SonyTV) April 6, 2020
同作はなくしたサングラスを探すあらすじの短編コメディで、バッチャンをはじめとしたインド映画のスター俳優たちが、それぞれのカットを自宅で撮影。つなぎ合わせて4分30秒ほどの映像にまとめている。映像の最後にはバッチャンが視聴者に語り掛ける。
「インドの映画産業は一つだ。私たちは一つの家族だ。だが、私たちを支え私たちと働くもう一つの家族がいる。それは映画産業を支える労働者や日雇い労働者たちだ。彼らはロックダウンで困難に直面している。私たち映画人は連帯し、TV局のスポンサーを受けて基金を作った。この基金は彼らが困難な時期を乗り越えることに貢献する」
Stay Homeを余儀なくされている今だからこそ実現した、映画産業と文化を守ろうという俳優たちの取り組みだ。
ちなみに、自宅で撮った映像をつなげて1本の作品にする企画として、国内でも上田慎一郎監督が『カメラを止めるな!リモート大作戦!』をスタートしている。4月末〜5月頭Youtube公開とのこと。
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また、「ドライブインシアター」ではドイツで先進的な取り組みが行われているので紹介しよう。
ドイツでドライブインシアターは「Autokino」という(Auto車、Kino映画館)。
日本でもバブル時代に存在した常設のドライブインシアターが、ドイツにはコロナ前から営業している。その一つがドイツ西部の都市エッセンにある「AUTOKINO ESSEN」だ。1000台まで駐車可能なスペースで、現在はコロナ対応のルールのもとで上映が続けられている。例えば次のようなルールだ。
・一つの車に大人2人+その14歳以下の子どもまで
・チケットは事前購入のみ
・チケットは車の窓越し(窓を閉めた状態で)QRコードスキャン
・音声はカーラジオから出力(ラジオやファンヒーターの貸出しはお休み中)
・売店は閉まっているので飲食物は来場者がおのおの持参
こうした対策の上で、夜帯(21時台スタート)と深夜帯(0時台スタート)の1日2本をほぼ毎日上映をしている。作品ラインナップはドイツ映画とハリウッド映画など。『ジョーカー』や『ジェミニマン』などはロングランの作品のようで、昨年秋から25週連続で上映されている。
ドイツのドライブインシアターは、エッセンのほかにベルリン(4Kプロジェクター、2スクリーン)と、ドイツ西部の小都市マルルでも営業されている。
マルルのドライブインシアター「Autokino in Marl」は、コロナの流行を受けて、Colin Germesinという企業家、モーターバイクの販売会社、デュルメン(地名)のイベント技術会社によって開設された。Colin氏は長く閉館していた地元の映画館「Loe Studios」の経営を昨年引き継いだばかりだったが、コロナの影響で休館。モーターバイク販売会社もオンシーズンをコロナが直撃してビジネスが成立しない状況。イベント技術会社も受注していたイベントがキャンセルとなり機材が浮いた状態にあった。
経営危機に直面した3社が、それぞれ、映画・土地・大型LEDビジョンを出し合って作ったのが「Autokino」とのこと。地元当局との間で取り交わした衛生ルールのもと、現在も営業されている模様だ。
(情報元:西部ドイツ放送(Westdeutscher Rundfunk)の記事)
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日本では、当初2週間の我慢だとされていた自粛も、G.W明けまでとなり、状況次第ではさらにその先まで続く可能性がある。仮に対人接触の8割減が実現し、1か月で収束をみたとしても、世界で流行が続く限りは、流行前のような移動や交流が戻ってくるとは限らない。エンターテイメントをはじめとした「不要不急」の場への影響は長期に及ぶだろう。
働き方はテレワークが当たり前になる。都心の会社に出勤するスタイルから自宅中心の行動に変わる。余暇の時間は都心へ遊びに出るのではなく、家族との時間や、ひとりの時間が自然と増えるのではないか。ローカルな経済とオンラインの経済が引き続き拡充する。それはそれでポジティブに受け止めたいところだ。
オンラインイベントやドライブインシアターなど、コロナが存在する社会状況下で息を長く続けていく必要がある。またより充実させなければならない。ミニシアター支援などと並行して、そろりそろりとコロナに適応し、「アフターコロナ」の社会像をつくる実践に参加する。そういった動きが次のフェーズとして生まれてくるのではないだろうか。
ショートフィルムを専門に扱うBSSTOとしては、ショートフィルムができる価値提供に向き合っている最中です。
・短いからこそ取り回しがいい(=オンラインイベント向け)
・手軽に制作できる(インディペンデントの人でも、お金や時間をかけなくても、映画は作れる)
そんな特性を生かした新プロジェクト・新サービスをマルルのドライブインシアターと同様、いろんな主体とのコラボレーションで生み出していきます。
※本コラムは週に1回程度のペースで掲載をして参ります。
(執筆 大竹悠介 / リサーチ 安田佳織)
Writer:BSSTO編集部
「水曜夜は、わたし時間」
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