食欲の秋到来。海外になかなか行けない今だからこそ、映画で「世界の食事」をのぞいてみるのはいかがでしょうか?
初めまして。パーソナル栄養士のいっしーこと石川威弘と申します。
普段はファスティングと食事指導を使ったオンラインダイエットを教えているのですが、実は栄養士の資格を取ってすぐに世界一周をしていた経験があります。
当時はLCCが世界中を飛んでおり、バックパック一つで旅をしていました。
各地の伝統料理やローカルフードを食べ歩き、スーパーや地元のマーケットを練り歩く旅をしていました。
観光地そっちのけで地元のマーケットを歩き回っていたので、現地の人からは珍しがられたことを覚えています。
各国の食事を食べながらその国の歴史や気候や特産品などを調べて、各国の食文化を自分なりに体感し研究するのはとても楽しかったです。
今回はそんな世界一周経験を持つ栄養士の僕が、ショートフィルムの舞台となった国の食文化についてお伝えしたいと思います。
『The Brunchers /ヒップなブランチ』
(イギリス/約19分)
【あらすじ】
ロンドンのカップルは最高に「ヒップ」なブランチを求めてロンドンを動き回るが、そう簡単にはいかない…。
【いっしーレビュー】
料理の美味しくない国としても知られているイギリスですが、紅茶文化やパイ料理、ローストビーフなど日本でも普段から口にする食べ物が生まれた国でもあります。
お酒で言えばウイスキーが有名ですね。
イギリスには様々な朝食の定番があります。
ベーコン、ソーセージ、ハム、トマト、マッシュルーム、ベイクドビーンズ、ブラックプディングなどをワンプレートに乗せたボリューム満点のイングリッシュ・ブレックファースト。最近ダイエットで注目を集めているオートミールを使ったポリッジ、スモークサーモンとスクランブルエッグをトーストに載せた料理など、イギリスの朝の定番です。
マーマレードも朝食の定番の一つ。朝食のパンにはマーマレードが添えられて出てきます。パディントンやシャーロック・ホームズも大好物だったと言われるほどマーマレードは国民的なもののようです。
しかし、作中でも比喩として描かれているように、若者からするとマーマレードは少し古臭い印象を持たれているのも事実のようです。マーマレードトーストを食べる一般家庭は減ってきていると言います。
日本人がご飯と味噌汁を食べる機会が減っているように、イギリスでも食事は多様化されてマーマレードを口にする機会も減ってしまっているのでしょうね。
『Hunger / 空腹』
(インド/約8分)
【あらすじ】
線路沿いに暮らすホームレスの男は、ムンバイの混雑した交差点でノベルティを売って生計を立てている。彼の夢は憧れの料理を提供するレストランに入ること。ある日、彼はその願いを叶えるチャンスを得る!
【いっしーレビュー】
インドの食事情がよくわかるシーンがたくさん出てくる映画ですね。
インドでは路上屋台で食べ物を販売していることが多く、テイクアウトができるところも多いです。
カレーやタンドリーチキンなど有名料理の他に、マッシュポテトやタマネギ、エンドウ豆を皮で包んで揚げたサモサ。野菜などにヒヨコ豆の粉を水で溶き、スパイスを加えた衣を付けて、油で揚げたパコラなどは屋台で売られている定番の軽食です。
こうした屋台の定番は旅先でローカルフードを食べるのが好きな人なら食べたことがあるでしょう。
少し変わったところで言うと、中がスカスカの小さな揚げパンに緑色のスープを浸して食べるゴールガッパと呼ばれる物もあります。
インド人からは非常に人気があるようで、ゴールガッパのお店の前には人だかりができているのをよく目にしました。
インドを旅していた頃は名前すらわからない不思議な食べ物を恐る恐る食べたのを覚えています。
またインドではカレーのお供にナンを食べることはほとんどありません。チャパティと呼ばれる発酵させていないペラペラのパンでカレーを食べるのが一般的です。
僕はどちらかと言えばナンよりもチャパティの方が好きで、日本でなかなか食べられないのが少し寂しく思っています。
『MEI / メイ』
(台湾/約12分)
【あらすじ】
台北のヌードル屋台で働くシャイな少年、ジアンは、屋台のオーナーの娘のメイにひそかに片思いをしている。想いを心に秘めていた彼だが、ある日、メイが夢見ていたアメリカへと発つことを知る。ジアンは、想いを告げるのか、それともそのまま彼女を行かせてしまうのか?
【いっしーレビュー】
台湾と言えば夜市ですね。作中の撮影現場も夜市の雰囲気があり、アジアならではの空気感を感じることができます。
夜市は僕も大好きでビール片手に色々な料理を食べ歩きました。
外はカリカリ、中は肉汁がたっぷりの胡椒餅(フージャオビン)や豚肉の角煮をほぐしてご飯に豪快に乗せた魯肉飯(ルーローハン)などはいつ食べても美味しく、地元の人も大好きだそうです。
また小籠包や水餃子は絶対に食べたい一品です。有名なレストランに行かなくてもこだわりのある地元の飲食店がたくさんあるため、ホテルや地元民からオススメのお店を聞いてみるとガイドブックには載っていない名店にたどり着くこともできます。
皮からこだわっているお店もあるため、日本ではなかなか巡り会えない絶品の小籠包に出会えることもありますよ。
台湾の面白い食文化は夜市だけではありません。台湾は自炊よりも外食をすることが多く、朝食も外で食べられるお店が多いです。
鹹豆漿(シェントウジャン)と呼ばれる豆乳スープやお粥を食べ歩くのも非常に楽しいです。
暑い国ですが薬膳の考え方が浸透しており、体を温める優しい食べ物を好む文化もあるようですよ。
『You Will Find It / 夢は叶う!』
(ベルギー/約17分)
【あらすじ】
29歳のセリアはスーパーのレジ係。彼女は現実から逃れるため、カラフルでミュージカルな世界に身を投げる。そんなある日、スーパーにイケメンがやってきた!
【いっしーレビュー】
美食の国としても知られるベルギーは食後にスイーツを食べる習慣があり、チョコレートやワッフルをはじめとした様々なスイーツが食べられています。日本と違いワンプレートの食事が多く、食事の満足度を上げるために食後のスイーツを食べるのだとか。
チョコレートで言えば日本でも超有名なゴディバはベルギーのチョコレートメーカーです。綺麗な箱に並んだチョコレートはまるで宝石のように見えますね。
ベルギーはチョコレートの製造技術も高く、プラネリと呼ばれるローストしたアーモンドやヘーゼルナッツに焦がした砂糖を加えてペースト状にしてチョコレートをコーティングする技術もベルギーで生まれました。
こうした背景からベルギーの街にはチョコレート専門店やワッフルスタンドが街の至るところにあり、地元でも親しまれています。
またベルギーのカフェではコーヒーや紅茶を注文した際に必ずと言っていいほどスペキュロスという堅焼きのビスケットや一粒のチョコレートが添えられて出てきます。
ベルギーでは当たり前の風景ですが、日本人の僕らからすると少しお得な気持ちになりますよね。
個人的には作中の主人公を見ていて、海外でよく見かけたスーパーのレジ前に仏頂面で座っているレジのお姉さん達を思い出してしまいました。
海外ではスーパーのレジに椅子が置かれていて、座りながら仕事をしているお店が多いんですよ。
短い時間でも各国の特徴がぎゅっと詰まった作品ばかりで、見ていると自分自身も現地に出かけている気持ちになりました。
どの作品も日常の一部を切り取ったシーンが多く、海外旅行に行きづらい世の中で映画の世界に入り込む魅力を改めて感じます。
今回の4作品の国で僕が一番滞在期間の長かった国はインドです。そのせいか、4作品の中でもインドを舞台にしたHungerが一番お気に入りの作品です。
Hungerはインドの光と闇を同時に垣間見ることができる作品です。
最後のオチなんかはインドの良い部分でもあり、悪い部分でもあると感じますが、コミカルな作風がとてもインドらしくて面白かったです。
10月中はBeeat!!八重洲にて映画の舞台となった国の料理が食べられるイベントも行われているそうです。
コロナの影響で海外グルメを現地で楽しむことができない今の状況がとても残念ですが、その国の料理を食べながら映画の世界に入り込むのは映画の楽しみ方の一つかもしれませんね。
石川威弘 (いしかわたけひろ)栄養士/ファスティングマイスター
パーソナル栄養士として食事指導とファスティングを活用したオンラインのダイエットを提供している。サポート事例はダイエットのみならず、血糖値、血圧、コレステロール値の改善から、アレルギー、便秘、冷え性の改善や妊活に至るまで多岐にわたる。
20代前半の頃に世界一周を経験し、世界の様々な食文化にも触れ、海外の食文化に関する記事の執筆や講演なども行う。2021年10月に「気まぐれ断食」(SBクリエイティブ)を出版。
Writer:BSSTO編集部
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