都内を中心に全国各地で上映会を開催している、「旅する映画館 café de cinéma」主宰のちゃっぴーです。
このコラムでは、「映画で旅する」と題して、行ったことはないけれど(笑)、映画を観て、通じて、その国、その土地、その場所に行った気分を味わう、そんな体験への入り口を紹介していきます。
今回は、ある上映会で出会った若いお客様との会話をきっかけに。
ちょうど以前ヴィム・ヴェンダース監督の旧作名作を上映したことなどをはなしていたところ、
「えー、ヴェンダースしらないっ」
「うーん、聞いたことあるけど、わからない」
お一人は映画を良く観られているということでしたが、それでも作品は未見だとか。
そんな彼らでも、年末より公開中の新作『PERFECT DAYS』はさすがに知っていましたが、監督がドイツ人監督ヴィム・ヴェンダースであるということはあまり理解していなかったようなんです。
(C)2023 MASTER MIND Ltd.
2023年5月、「役所広司さん カンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞 日本人 2人目」というニュースが飛び交ったことは記憶に新しいですね。
世界三大映画祭で日本人が最優秀男優賞を受賞!
その快挙と、作品が東京・渋谷を舞台にトイレ清掃員の日常を描いた、ヴェンダース監督の最新作という、情報が錯綜したりもしていました。
そして、2023年末、満を辞して国内でも公開。
観た人の多くが絶賛する映画、そして世界中でもヴェンダース監督の最高傑作と謳われ、遂にはアカデミー賞長編外国語映画賞へのノミネートに至りました。
(受賞式は2024年3月10日/日本時間11日に開催)
(C)2023 MASTER MIND Ltd.
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は 1 日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。
(C)2023 MASTER MIND Ltd.
この映画、トイレ清掃員という役柄と、繰り返される日常を描いています。
ただ、平山にとっては、同じ1日はなく毎日を新鮮に生きていく、そんな姿が映し出されています。
そして、なんと言っても、出てくるトイレは役者にも引けを取らないくらい「個性的」な面々。
それも、そのはず。
現在渋谷区には性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレが17カ所存在し、それぞれを世界で活躍する16人の建築家やデザイナーによって生み出されました(2023年3月に17ヶ所全てが稼働開始)。
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THE TOKYO TOILET とは
トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴。
しかし、多くの公共トイレが暗い、汚い、臭い、怖いといった理由で利用者が限られている状態にあります。
本プロジェクトでは、渋谷区の協力を得て、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを区内 17 カ所に設置します。
それぞれのトイレのデザインには、世界で活躍する16人の建築家やデザイナーが参画。優れたデザイン・クリエイティブの力で社会課題の解決に挑戦します。
The Tokyo Toilet
https://tokyotoilet.jp
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一部のトイレはその機能性や形で話題にもなったかと思いますが、17ヶ所全部、そもそもThe Tokyo Toiletというプロジェクトを知っていた方はどのくらいいたのでしょうか、ね?
(ちなみにボクはプロジェクト自体は知りませんでした)
実はこの『PERFECT DAYS』という映画自体、このThe Tokyo Toiletというプロジェクトから生まれたアート映画としての企画が発端。
ヴェンダース監督自体この映画のオファーを受けた際に「なに?トイレ?」となったそう。でもこのプロジェクトの意義や企画、何より主演が役所広司さんということで快諾したそう。役所広司さんも、ヴェンダース監督と聞いて受けない理由はないと、快諾したそうです。
※写真:The Tokyo Toilet WEBサイトより
恵比寿東公園トイレ
鍋島松濤公園トイレ
代々木深町小公園トイレ
はるのおがわコミュニティパークトイレ
代々木八幡公衆トイレ
西原一丁目公園トイレ
神宮通公園トイレ
恵比寿公園トイレ
東三丁目公衆トイレ
神宮前公衆トイレ
恵比寿駅西口公衆トイレ
七号通り公園トイレ
個性的なトイレで起こる日常ながら常に新しい出来事が、淡々とつづられていきます。
そしてこの個性的なトイレを巡って渋谷の街を歩いてみても面白いかもしれませんね!!
そして、トイレ以外にも巡る場所はたくさん。
平山が住んでいるのは江東区。
映画では実際に通える距離にある場所を舞台に展開しています。
電気湯、福ちゃん、地球堂書店…
この辺りもぜひ巡ってみてはいかがでしょうか。
『PERFECT DAYS』で、身近な東京の、さらにコアな地点を巡る旅も、面白そう!!
『PERFECT DAYS』
https://www.perfectdays-movie.jp
「⽇常の延⻑線上にある映画(館)」をテーマに、映画を楽しみ語らうサロン的な雰囲気と場所を⽬指す。
主に10名程度の⼩規模で気軽な上映会に加え、映画だけでなく、映画に合わせたゴハンも楽しむ企画から刺繍ワークショップ、ミュージシャン、焚き火とのコラボなど+αの“体験”を加えた上映会、100人超の野外上映など年間で100回以上の上映会を各地開催中
<イベント告知 >
2月の上映情報
・2月23日(金祝)17:00開場18:00上映開始
CINEMA Bumblebee / シネマバンブルビー『シューマンズ バーブック』
@Flying Bumblebee(渋谷区・代官山)
https://www.facebook.com/events/900383211459833/
・2月26日(月)20:00上映開始
ナワシロシネマ vol.22/ café de cinéma with ブリリア ショートショートシアター オンライン
@ナワシロスタンド(世田谷区・下北沢)
https://www.facebook.com/events/383711557742158/?
・2月28日(水)20:00上映開始
ヱビスキネマ vol.156 作品調整中
@ビストロダルブル恵比寿店(渋谷区・恵比寿)
『PERFECT DAYS』
監督:ビム・ベンダース
124分 / 製作:2023年(日本) / 配給:ビターズ・エンド
あらすじ・ストーリー 東京・渋⾕でトイレ清掃員として働く平⼭(役所広司)は、静かに淡々とした⽇々を⽣きていた。同じ時間に⽬覚め、同じように⽀度をし、同じように働いた。その毎⽇は同じことの繰り返しに⾒えるかもしれないが、同じ⽇は1⽇としてなく、男は毎⽇を新しい⽇として⽣きていた。その⽣き⽅は美しくすらあった。男は⽊々を愛していた。⽊々がつくる⽊漏れ⽇に⽬を細めた。そんな男の⽇々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を⼩さく揺らした。
https://www.perfectdays-movie.jp/