土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。
12月は「シュールなアニメーション特集」。ちょっぴり非日常的なイベントが多く発生する年末にふさわしい特集で、忙しい年末のスパイスとなってくれそうです。中でもなんとも言えない余韻をもたらしてくれるお薦めの作品が、『バケツの中のギター』(2021年・韓国)。描かれるのは、コインさえ出せば、何だって手に入る不思議な世界。家も、食べ物も、職業も、楽器も、それだけでなく、話し相手や一緒に散歩する相手ですら、すべてを自販機でレンタルできるというシュールな社会です。とても不思議な光景ですが、コインがないとすべてがままならず、皆どこまでも孤独で他人には無関心、借りたり返したりを繰り返しながら日々を生きている、そんな姿はどこか私たちの姿に重なります。忙しすぎて毎日を生きることに一生懸命、でも本当に自分のやりたいこととは、自分が望む未来とは・・・。すべてがレンタルできる世界で、簡単には手に入らない自分の夢、ギタリストになることを遠回りしながら目指す少女のひたむきさが身に沁みます。

話したり、一緒に散歩するにもコインが必要…コインさえあれば、パートナーや経験ですら手に入るのですが、その世界はどこまでもむなしさと満たされることのない渇望感が漂っています。観ながらふと、こうした世界とまったく逆行するのが、“ワインのあるシーン”なのでは、と思わされました。ワインはひとりで飲んでももちろん良いのですが、それ以上にシェアして楽しむことこそ、ワインの醍醐味だと言えます。気の置けない友人や大切な人とともに、栓を抜き、乾杯をして、会話と共にワインを楽しみ、ときには映画のようにワインの味わいの感想を伝え合う・・・。『バケツの中のギター』ではとても叶いそうにない(もしくは非常にたくさんのコインが必要となりそう…)からこそ、ぜひ現実の日常を豊かにするためのツールとして、ワインを楽しんでみてはいかがでしょうか。季節は12月。今年を振り返りながら、そして新しい年を祝うのに最適なワインと言えば、シャンパーニュ。『バケツの中のギター』を観た後には、乾杯をしてシェアできる喜びをルイ・ロデレール コレクション245で存分に味わってください。
「世界で最も称賛されるシャンパーニュ・ブランド」に6年連続1位に選ばれ、名実ともに世界No.1の造り手として、不動の地位を築いているルイ・ロデレール。なかでも「コレクション」は、メゾンの顔ともいうべきシャンパーニュです。シャンパーニュ・メゾンのスタンダード・キュヴェと言うと、長らくメゾンのスタイルを均一に表現することが重視されていました。ですが、気候変動でブドウ栽培地の北限とされてきたシャンパーニュ地方のブドウもしっかりと熟すようになり、そうした環境変化を踏まえて「シャンパーニュの未来」を考察したのが、ルイ・ロデレールの副社長兼醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨン氏です。レカイヨン氏はブドウ熟度よりもフレッシュ感を求め、テロワールを表現することを目的に“未来志向のシャンパーニュ”として「コレクション」を造り出しました。コレクション245は、2020年ヴィンテージのブドウをベースに造られており、キレのあるフレッシュさと卓越した骨格とのバランスがすばらしい1本。そのコンセプトからも、新たな年を迎えるタイミングに最適なシャンパーニュです。