アメリカ映画界の祭典、第92回米国アカデミー賞のノミネート作品が1月13日(月)に発表され、短編実写映画部門にSSFF & ASIA 2019受賞作品の2作品がノミネートされました。今回はその2つの候補作品、SSFF & ASIA 2019オフィシャルコンペティションインターナショナル部門優秀賞の『兄弟愛(Brotherhood)』と、ベストアクトレス賞インターナショナル部門『向かいの窓(The Neighbors’ Window)』をご紹介します。
また『兄弟愛(Brotherhood)』は1月22日(水)より3ヶ月間、Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINEで緊急配信が決定!2月9日(日)(日本時間2月10日)のアカデミー賞授賞式に先駆けてお楽しみいただけます。
米国アカデミー賞といえば、監督賞や作品賞、主演男優・女優賞に注目が集まりますが、その中で「短編映画」はあまり目立たない存在かもしれません。
1927年から始まったアカデミー賞の歴史は世界三大映画祭よりも古く、毎年世界中から関心が寄せられる世界最大級の映画の祭典です。短編映画が参加するようになったのは第5回から。当初は短編コメディと短編ノベルティの2部門で、その後も何部門かに分かれていましたが、第30回からはそれらが一本化され、「短編実写映画部門」の形になりました。
ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(略称:SSFF & ASIA)は2004年に米国アカデミー賞公認映画祭となって以来、グランプリ受賞1作品が毎年アカデミー賞に推薦されてきました。さらに2019年からはインターナショナル、アジアインターナショナル、ジャパンの各部門の優秀賞とノンフィクション部門の優秀賞の計4作品が推薦されています。2017年の第89回アカデミー賞短編実写映画部門では、SSFF & ASIA 2016でグランプリに輝いた『Sing /合唱』がSSFF & ASIAから推薦された作品として初のオスカー受賞となりました。
そして第92回となる2020年アカデミー賞短編映画部門には、SSFF & ASIA 2019受賞作品2作品がノミネートされています。
監督:Meryam Joobeur/25:00/カナダ、チュニジア、カタール、スウェーデン/ドラマ/2018
あらすじ
羊飼いの父は妻と2人の息子とチュニジアの田舎町で暮らす。ある日長男がなんともミステリアスな新妻を連れて長い旅から帰郷してきた。それから3日間、父と長男の間に走り続けた緊張はついに頂点に達する。
解説
『兄弟愛(Brotherhood)』はSSFF & ASIA 2019でインターナショナル部門優秀賞を受賞し、アカデミー賞短編実写映画賞に推薦された、いわば「SSFF & ASIA初ノミネート作品」です。
中東情勢を描いた社会派の作品でもあり、互いの関係に悩む家族のヒューマンストーリーでもあります。監督のMeryam Joobeurさんは、チュニジアにあるセジナンという町で革命後イスラム原理主義化が進み、多くの男性がシリアへ戦闘員として渡った社会現象を、家族という密接な視点から描いたといいます。チュニジアの広大な自然の中にある羊飼いの家族の日常と、そんな家族の間に生まれてしまった微妙な距離感や緊張感のアンバランスさが印象的。25分という短い物語の中に、登場人物たちが背負う過去の重さが垣間見えるとき、タイトルの意味をもう一度考えさせられます。
Meryam Joobeur監督のコメント
この作品の物語は2016年2月に北チュニジアの田舎町で出会った赤毛のチュニジア人兄弟から始まりました。私が2人を発見したとき、私は旅をしていて彼らは羊の群れを連れて緑生い茂る丘を歩いていました。写真を撮りたいと交渉したところ、初めは断られ、私はまた旅を続けたのですが、それからずっと彼らの髪とそばかすの鮮やかな赤色が緑豊かな丘とコントラストするイメージが強烈に記憶に残っていたのです。
チュニジアにあるセジナンという町では、2011年に独裁者ベンアリ元大統領を追放したジャスミン革命後にイスラム原理主義化が進み、多くの男性がシリアへ渡ったといいます。この出来事と兄弟との遭遇が本作の物語を作る土台となりました。
この社会現象を家族という密接な視点から描くこと、そして出会った兄弟に演じてもらうことは心に決めていました。その一年後、私は名前も知らないあの兄弟に会いに再びチュニジアを訪れました。遭遇した場所も思い出せないまま、『兄弟愛』の台本を持って虱潰しに町を巡りました。兄弟と再会できた時、彼らと彼らの弟に出演オファーをし、撮影が行われた2018年3月までの数週間、彼らの持つ魅力は尽きることなく、見る見るうちに私達の絆は深まりました。
また『兄弟愛(Brotherhood)』は1月22日(水)より2月末まで、Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINEで配信を行います。ぜひご覧ください。
監督:Marshall Curry/20:39/アメリカ/ドラマ/2019
あらすじ
幼い我が子と夫の面倒に愛想が尽きたアリーは近所に引っ越してきた20代のカップルの部屋が自宅の窓から見えることに気付く。そこからカップルの自由なライフスタイルを「裏窓」風に覗き見る日常が始まった。
解説
『向かいの窓(The Neighbors’ Window)』はSSFF & ASIA 2019で主演のマリア・ディッジアがベストアクトレス賞インターナショナル部門を受賞した作品です。
この作品の見どころはなんといっても「覗き見」。大胆なカップルのライフスタイルに呆れながらも、現実の慌ただしい自分の生活と比べ、ついつい見続けてしまう。そんなアリーの気持ちに共感する方は多いのではないでしょうか。つい見ている自分も身を乗り出し、アリーと一緒に向かいの窓を覗き込もうとしてしまいます。「隣の芝生は青い」と言いますが、いったい自分の日常とは、幸せとはなんだろうか?そんなことを考えさせられる作品です。
オスカー受賞作品は2月9日(日本時間2月10日午前10時ごろ)のアカデミー賞授賞式で発表されます。今年はぜひ短編映画にも注目してみてはいかがでしょうか。
Writer:BSSTO編集室
「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。
毎週金曜日にショートフィルムをオンライン配信。常時10本ほどを無料で鑑賞できます。
https://sst-online.jp/theater/