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Aug. 25, 2021

【SHORT FILM】紛争とパラスポーツの今 『さぁ、動こう!』石川奈津美さんが語る

1年延期された東京パラリンピックがスタートしました。BSSTOでは、赤十字国際委員会(ICRC)との連携企画として、パラスポーツに取り組む人々や地震や地雷被害で障害を負った人々を支えるパキスタンの取り組みを記録した短編ドキュメンタリー映画『さぁ、動こう!』を2021年8月25日(水)〜11月24日(水)まで配信しています。
本記事では、第二回ヤングリポーターコンペティションの大賞受賞者で、同作品の監督でもある石川奈津美さんに、制作の背景や今日本の視聴者に伝えたいことを一問一答形式で伺いました。

石川監督(左から2人目)

【Q.1】ICRCと早稲田大学が共催するヤングリポーターコンペティションで受賞したことが、今回の制作のきっかけと伺いました。コンペはどんな内容で、なぜ応募されたのでしょうか?

高校時代にオーストラリアへ留学し、その経験からLGBTに興味を持ち始めました。帰国したタイミングでカミングアウトに失敗し自殺した大学生のニュースを見て、日本ではどうなっているのだろうと思ったのが応募した作品を作るきっかけになりました。内容は代々木公園で行われている「レインボー・プライド」で出会った、ゲイと公言している牧師さんの活動を追ったドキュメンタリーです。
そもそもLGBTとは?キリスト教って同性愛はタブーじゃないの?宗教ってLGBTにどう関係している?など私の中にあった疑問を、取材を通じて撮影しました。第二回ヤングリポーターコンペティションのテーマが「多様性と寛容」と作品に沿っていたので応募を決めました。

【Q.2】パキスタンで取材の話が決まった時に思ったことは?

パキスタンの印象はイスラム教の国くらいしか印象がなく、いったいどんな国なんだろうとわくわくしていました。決定後、どんな国なのか、ICRCは現地でどんな活動をしているのか、ICRCの駐日代表部と打ち合わせを重ねてどんな取材をするか決めていきました。

【Q.3】登場人物はどのように決めたのでしょうか?

ICRCの方と話しテーマを「パラスポーツ」に決め、パキスタンにはこんな方がいるよとICRCの方に提案していただきました。

【Q.4】撮影中、楽しかったことと苦労したことを一つずつ教えてください。

【楽しかったこと】
出会う方皆さん歓迎してくれて、取材に関わらないこともたくさん教えてくれました。
ザイナブ選手にヒジャブ(髪の毛を隠すスカーフ)の巻き方を教えてもらったり、
患者さんと一緒に施設においてあるゲームをしたり…
パキスタンで出会った方との交流がとても楽しかったです。

パキスタン・ムザファラバード

【苦労したこと】
英語での取材に苦戦しました。
インタビュー内容は事前に準備していましたが、話を聞きながら出てくる問いを自分で聞けず、同行していたICRCの職員に助けてもらいながら取材を進めました。
もう少し英語を勉強しておけばよかったと後悔しました。

【Q.5】本作の制作を通して、ご自身の考えや人生観で変わった点はありましたか?

とにかく行動力に驚きました。一番びっくりしたのは、インダス・モーター社を訪れた際、同行していたFoP(Friends of Paraplegics)の車いすに乗っている職員さんが、「車いすのここが使いにくいから改善してほしい」と直接交渉をしていたことです。
自分ができないことや、弱点は、恥ずかしがらず、隠さず、改善しようと努力したらいいのか…とその場面を見ながら考えていました。ほかの方がどう思うかを意識しながら生活していましたが、弱点を認めて隠さずに生きるほうが自分にとって楽だなと感じ、以前より自分をさらけ出して生活できるようになりました。

【Q.6】最後に、本作を視聴する日本の皆さんに伝えたいことは?

作品の中でサルワルさんが、障がい者にとっては今の状態が普通であること、障がいがあるからこれはしちゃだめと決めつけてはいけない、と言っていました。今回は障がいを持っている方に焦点を当てて取材を進めていきましたが、これらは誰にとっても当てはまる気がします。チャンスさえあれば、どんな人でも、どんなことにも挑戦できます。可能性は無限大です。パキスタンはそんな可能性に溢れた国かもしれないと思いました。障がいについて、普通について、少しでも考えるきっかけになったらうれしいです。

石川 奈津美

上智大学文学部新聞学科卒業。ドキュメンタリーを制作する水島ゼミで制作した「虹色の十字架」で第二回ヤングリポーターコンペティションでICRC賞を受賞。

赤十字国際委員会(ICRC)

赤十字国際委員会(ICRC)は、「敵味方の区別なく、傷ついた人は全て救う」という理念のもと、永世中立国のスイス・ジュネーブで発足しました。日本では医療や災害救援のイメージが強い赤十字ですが、ICRCは、赤十字運動を構成する3つの組織の中で最も古く、紛争地に特化して人道支援を行っています。

世界100カ国で約2万人の職員が、「公平・中立・独立」を掲げて戦禍の人々に寄り添い、命と尊厳を守るための様々な活動に従事しています。生活の自立支援や食料・水・避難所の提供、離散家族の連絡回復・再会支援事業、戦争捕虜や被拘束者の訪問、戦傷外科やトラウマケアなど、時には紛争の最前線で現場の人道ニーズに応えます。

政府側だけでなく、反政府グループやゲリラ勢力などすべての紛争当事者と対話して、戦時下にいる民間人に不必要な苦しみが与えられないようにするのもICRCならではの活動です。戦時の決まりごとである国際人道法から役割・任務を与えられているICRCは、人々が戦禍で何を望み、苦しみや悲しみから抜け出すにはどうしたらいいかを常に考え、すべての人が人間らしく尊厳を持った人生を送れるよう力を尽くしています。

Writer:BSSTO編集部

「水曜夜は、わたし時間」
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