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COLUMN
Sep. 08, 2021

【あの人の映画レビュー】Instagramで話題のクリエイター・パントビスコが
「SSFF & ASIA 2021スタッフセレクション」を観てみたら?

「やさ村やさしのやさしい世界」や「ぺろち」など、脱力系のユニークなイラストが話題、Instagramのフォロワーが57万人を超える人気クリエイター「パントビスコ」。ショートフィルムファンだというパントビスコさんに、BSSTOにて5週にわたって配信中の「SSFF & ASIA 2021スタッフセレクション」の作品レビューを執筆いただきました。

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SOSに気付けるか?生々しい現実を突きつける『Call Waiting』

『途切れない電話 / Call Waiting』
(フランス/約15分)

【あらすじ】
緊急コールセンターのオペレーターとして働くローズは、まだ小さな娘と息子の世話をしながら在宅勤務をしなければならない。仕事と家庭の緊急事態が重なり、状況が緊迫していく…。

【パントビスコレビュー】
かつてこんなにも息が詰まる作品があっただろうか。我々が普段見えていない、いや、見てみぬふりをしている部分にフォーカスした、生々しい現実が突きつけられる一作。緊急コールセンターのオペレーターである主人公。電話口で語られるSOSが映像として描写されていないため、嫌でも観る者の想像力を搔き立ててしまう。私は気付けば主人公と同じ気持ちになっていた。この手法の巧みさが、より映画への没入感を加速させた。SOSの声を上げる者に手を差し伸べることは簡単である。では、SOSの声を上げられない者に対して、どう気付いてあげるべきなのか?私は本作で、大切な気付きを得ることができた気がした。

エゴとペナルティ描く『Cuckoo!』

『ポッポー! / Cuckoo!』
(オランダ/約7分)

【あらすじ】
鳩時計の中に住んでいる孤独な男は、1時間ごとに小窓から飛び出してポッポー!と叫ぶ。

【パントビスコレビュー】
とある役割を割り当てられた男が、自分のエゴを達成しようとする度に大切なものや誰かの命を危険に晒してしまう、というストーリー。図らずも“賭け”に失敗した主人公は、質素だけれど居心地が良さそうな部屋から狭く暗い密室へと追いやられてしまう。それはペナルティのようにも見える。社会という大きな歯車の中に組み込まれた人間はそこから簡単には逃れる事が出来ないという悲しい現状を表しているのかもしれない。また、本作はどんどん便利になっていく現代社会への風刺のようにも思える。

サッカーの試合のもう一つのドラマ『The Game』

『試合 / The Game』
(スイス/約17分)

【あらすじ】
ホイッスルの音と共にスタジアムに歓声が湧き上がる。選手は興奮した様子で抗議し解説者がコートの状況を伝える中、全視線が主審に注がれる。彼はスタジアム中の熱狂の矛先を決める決断を迫られているのだ。

【パントビスコレビュー】
いつもは主役の選手側ではなく、選手“以外”にフォーカスした映像作品。選手が「フィジカル」や「ゲームメイク」のプロならば、審判やスタッフは「コミュニケーション」や「公平・正義」のプロ。選手や試合にドラマがあるように、それを取りまとめる側にもドラマがある。撮影技法的には、審判が常に画面中央に据えられている画が単純に新鮮だったし、選手の一喜一憂をほとんど映さず観客席のリアクションで感情の流れを表現しているところも面白かった。

Writer:パントビスコ

インスタグラムでの作品投稿が話題となり、現在のフォロワーは約57万人。
代表的なシリーズに「LINEシリーズ」「乙女に捧げるレクイエム」「犬のぺろち」などがあり、作品総数は10,000点を超える。
雑誌・WEBにて6本の連載を抱える他、様々な企業コラボやアパレルブランドコラボ、アニメ制作や広告ディレクションなど、業種や媒体を問わず活躍の場を広げている。
Instagram(@pantovisco

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