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COLUMN
Jun. 05, 2018

【VR映画を体験しに行こう -新しい映像世界へようこそ-】〔第5回〕スピルバーグが描く、VR映画のミライ

こんにちは、VR映画プロデューサーの待場勝利(まちば・かつとし)です。
遅ればせながら、先日スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレーヤー1』を鑑賞してきました。VRの可能性を感じさせる映画であると同時に、映画愛に溢れた素晴らしい作品でした。一度だけでは味わいきれない内容で、何度も見たくなりました。

VRで物語を伝えるのは難しい・・・!?

この連載の第1回目でも『レディ・プレイヤー1』を少し取り上げました。その時の繰り返しになってしまいますが、スピルバーグ監督は以前からVRに関して非常に強い興味があったようで、THE VIRTUAL REALITY COMPANYというVRコンテンツ制作会社のアドバイザーを務めています。しかし、VRと映画の関係についてあまり良い発言をしていなくて、例えば以下のようなことを話しています。

「VRでは、観客の意識をどこに向けるか働きかけづらいことから、物語のメッセージを伝えるのが難しいと思います。観客は見回すことだってできるわけですから、どこを見て、どこを見ないようにするかはとても難しく、完全に要点を逃すことになりますね。ストーリーを伝えるエンターテイメントとしては難しいです」

この発言に関してスピルバーグ監督の老いを指摘する声があったようです。しかし『レディ・プレイヤー1』を観て、スピルバーグ監督は老いていないと私は確信しました。スピルバーグ監督の作品を観て育った私としては、昔のスピルバーグ作品のワクワク感が蘇っただけでなく、彼がまだ新しいことにチャレンジしていることに胸が踊りました。

©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED

スピルバーグが挑戦するVR映画とは?

VRの制作会社のアドバイザーをしながら正面からVRを使った映画制作に向き合い、そのひとつの答えとしてたどり着いたのが『レディ・プレイヤー1』だったのではないかと思います。正面から向き合ったからこそ、VRでのストーリーテリングの難しさについて発言したのではないでしょうか。
読者の皆さんにも、ぜひ一度『レディ・プレイヤー1』を観てもらいたいのですが、この作品はスクリーン映画ではありますがスクリーンを使ったVR映画作品のようにも見え、VR空間で進んでいる物語をスクリーン映画に変換して制作した作品なのかなと思えました。その証拠にスピルバーグ監督はVR空間内に映画のセットを制作し、実際にVRゴーグルを着けて、スクリーン用のカメラアングルを考えたそうです。

またスピルバーグ監督はこんな発言もしています。

「ストーリーの約半分はオアシス(VR世界)で、残りの半分は2045年の現実世界で展開するため、バーチャルとリアルの両方のセットを用意する必要があった。2本の映画を同時に製作するようなものだった」

2045年の未来という現実世界を描き、さらにはその未来のバーチャル世界を描かなくてはならないというとんでもない状況の中でこの作品は作られていることを考えると、革新的な作品だと思います。

私は、スピルバーグ監督のVR映画の挑戦はまだ終わっていないと考えます。
THE VIRTUAL REALITY COMPANYの創設者であり、映画『マレフィセント』を監督したロバート・ストロンバーグ氏が「Solely for VR」というプロジェクトにスピルバーグ監督と取り組んでいるという発言をしています。きっと「その時」が来たらスピルバーグ監督のVR映画作品が公開されると思います。私はその日を心待ちにしています。

©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED

世界のVR映画作品が集まる映画祭、いよいよ東京で開催!

今回はこの話で締めくくらなければなりません!

巨匠のスピルバーグ監督も「困難」と言い放ったVRを使った映画作品に対して、いま世界中のクリエイターたちが挑戦しています。その世界中の作品をSHORT SHORT FILM FESTIVAL & ASIA 2018で体験できます。今回は世界中から厳選されたインタラクティブ作品3作品と、360°映像作品18作品を一挙上映します。是非ともVR映画という新しい映像世界を体験しに来ていただければと思います。ひょっとして会場に私もいるかもしれません。見かけたら是非とも声をかけてください。VR映画の未来について大いに語り合いましょう!!

(おわり)

VR CRUISE

⾼品質な映像VR をキュレーションするVR ポータルアプリ。アーティストのライブや エンタメコンテンツ、スポーツ、ニュースなど幅広いジャンルのVR コンテンツを多数掲載。DMM.com、ハコスコ等でVR CRUISE チャンネルを展開中。

WEB SITE: http://www.vr-cruise.com/

VR THEATER

全国の複合カフェ、ホテル、カラオケ、ゲームセンター等で、気軽にバーチャルリアリティを体験できる店舗常設型サービス。

WEB SITE: https://www.vrtheater.jp/

Writer:待場勝利(まちば・かつとし)

株式会社eje、VR推進部執⾏役員。⼤学を卒業後、アメリカで映画製作を学ぶ。TV ディレクター、20 世紀フォックスホームエンターテイメントジャパンで⽇本語版プロデューサー、サムスン電⼦ジャパンではGear VR を担当。2016年から株式会社ejeでVRのコンテンツに関わる。数々のVR Project を担当。ejeではVR CRUISEとVRTHEATERの運営に携わる。
Twitter:
https://twitter.com/VR_CRUISE
Facebook:
https://www.facebook.com/VRCruise

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