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Oct. 09, 2024

【編集部コラム】<編集部コラム番外編>『お父さんはスパイ』配信記念 スポーツの秋と007

『007』が大好きなSSFF & ASIA スタッフによるBSSTO編集部コラム番外編をお届けします

みなさん、こんにちは。ショートショートでプロデューサーをしてますドラゴンと申します。

殺しのライセンスを持つ英国諜報部員ジェームズ・ボンドの活躍を描く人気シリーズ『007』へのオマージュが多分に盛り込まれた『お父さんはスパイ』が配信開始されましたね!『キングスマン』のような現代的でクイックなアクションが痛快です!ぜひご覧ください。

https://sst-online.jp/theater/16214

007をきっかけに映画業界への扉を叩いた私としては、これは記事を書かずにはいられないと、名乗りあげたものの、何をテーマに書こうかと思っていたところ、10月はスポーツの日があるではありませんか!スポーツの秋!しかも今年はオリンピックイヤー!007とスポーツというテーマで書いたら、文量的にもちょうど良さそう!と思い、頭を動かし始めました。

007とスポーツといえば、まずは『ゴールドフィンガー』(1964)ですね!

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金塊を狙う実業家、ゴールドフィンガーと主人公の初対面はゴルフ対決です。スパイ映画とは思えない、のどかな時間が展開します。パターを決めようとするゴールドフィンガーの足元にわざと金の延べ棒を落とすボンド(案の定ゴールドフィンガーはパターを外します)、ラフでボールが見つからないからと偽のボールを用意する敵の部下、さらにそのボールをすり替えるボンドとせこ過ぎるイカサマ合戦が繰り広げられます。真面目にゴルフしてくれ…。敵のボスとちょっと優雅な「対決」時間を過ごすというのは、たびたび007シリーズにも出てきますが、クリストファー・ノーランはおそらくこれに憧れがあり、『TENET』(2020)での敵とのボートレース対決なんかはこの辺意識しているのでしょう。ちなみに、初代ボンドを演じたショーン・コネリーはここからゴルフにどハマり。

https://www.007.com/the-films/you-only-live-twice/ ©1967 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

お次はなんと相撲です。『007は二度死ぬ』(1967)は舞台が全編日本!かなりリアルに日本をロケ地として使っています。日本の諜報部員アキとの合流に指定されたのは、両国国技館!当時の本当の横綱 佐田の山(本人役!)からチケットを受け取り、相撲を見始めます。そこにアキが大層美しく登場。駆け引きが行われます。相撲も大詰めながら、こちらも大詰めというところで、ボンドが合言葉を言います。この合言葉がまたくだらないので、ぜひ見てみてください。トンデモ日本描写の代表としてよく取り上げられる本作ですが、007はかなり真摯に日本に向き合っているかと。とにかく日本の情景が美しい。日本の諜報部員を演じる丹波哲郎、若林映子、浜美枝の3名は英語ができ、スパイとして十二分に活躍、さらには本物の横綱まで引っ張り出してくるわけですから。本当に貴重です。

https://www.007.com/the-films/on-her-majestys-secret-service/ ©ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE © 1969 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

ボンドにとってウィンタースポーツは欠かせません。『女王陛下の007』(1969)では初めてボンドのスキー能力が発揮されます。ボンドはともかく、ヒロインまでうまいのです。スキーチェイスは圧巻なのですが、ここで注目して欲しいのは、この映像をどう撮影しているかということ。ウィリー・ボグナーというカメラマンがカメラを持ちながら後ろ向きに滑り、スキーチェイスを収めたシーンはありえないショットになっており必見です。

https://www.007.com/the-films/for-your-eyes-only/ ©FOR YOUR EYES ONLY © 1977 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

3代目ボンドことロジャー・ムーアは3作品でスキーチェイスを展開しました。『私を愛したスパイ』(1977)のスキーからの大ジャンプは伝説です。『ユア・アイズ・オンリー』(1981)がすごいのはありとあらゆるウィンタースポーツの選手が襲ってくること。クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせて行うバイアスロンを観戦していたかと思えば、その選手が襲ってきて、スキーチェイスに発展します。ちなみに、この時の音楽は『ロッキー』(1977)のビル・コンティ作曲。時代を感じる素晴らしいサウンドも必聴です。スキーで逃げる時にボンドはボブスレーコースに侵入。ボブスレーの後ろをスキーで滑るシュールなチェイスもあります。さらに、アイスホッケー選手にも襲われ、女性のアイススケート選手、ビビにはベッドで襲われかけますが、珍しくボンドは拒否反応を示します。『美しき獲物たち』(1985)では、スキーからスノボー(当時はスノーサーフィン)のチェイスに発展します。流行を取り入れた形ですね。本作では、馬術も登場。敵と馬で障害物競走をすることになりますが、敵の施設なので、インチキされまくりで、殺されかけました。

https://www.007.com/the-films/a-view-to-a-kill/ © 1981 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

ロジャーは、『黄金銃を持つ男』(1974)ではキックボクシングを観戦します。ブルース・リーの影響で香港映画が大流行していたのを背景に、香港やマカオ、東南アジアで全編が展開します。映画としては色々弱いのですが、このキックボクシングのシーンは横にいるヒロインの表情が絶品です。美しくもあり悲しくもあり。行われているのは本当のボクシングの試合で、会場の人々はただそれを観戦していて、ボンド映画撮っているとは誰も思っていません。現地でボンドをサポートしてくれるヒップ中尉は娘たちが空手を習っているからという理由で職場に連れてきて、敵たちと戦わせます。ヒップ中尉は当時の東洋人としてはかなりいい役で、ここでもある程度東洋へのリスペクトを感じます。

https://www.007.com/the-films/the-man-with-the-golden-gun/ © 1974 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『ムーンレイカー』(1979)では監督の合気道の先生が敵の用心棒を演じていました。黙ってるか叫んでるかのどこからどうみてもやばい人です。『オクトパシー』(1983)ではビジャイ・アムリトラジ演じるビジャイが現地の仲間として敵が経営するテニススクールに潜入中という設定です。テニスラケットを武器として使うと、路上の人々がテニスの試合のように左右を向くというギャグがまたくだらない。実はこのビジャイさん、インドを代表するテニスプレイヤー。大英帝国を代表するスポーツですからね。ただ、その後の『リビング・デイライツ』(1987)では、冒頭クルージング中のセクシーな女性に「退屈なテニスプロとプレイボーイしかいないわ」と電話で愚痴をこぼされていましたが。そこにパラシュートでボンドが現れ、無事女性は退屈から解放されました。最近だと、6代目ジェームズ・ボンドを演じたダニエル・クレイグのウィンブルドンでの鑑賞中の姿がカッコ良すぎて、筆者はラブでしたね。

 

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https://www.007.com/the-films/die-another-day/ ©2002 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.

5代目ボンド、ピアース・ブロスナンは『ダイ・アナザー・デイ』(2002)ではサーフィンとフェンシングに挑戦。フェンシングのコーチ役で主題歌も担当したマドンナが登場。ごくわずかな出演にも関わらず、第23回ゴールデンラズベリー賞最低助演女優賞を受賞してしまいました。受賞するほど出演してないんだけどなあ。敵とフェンシングをするのですが、ボンドがまたわざと怪我させるものだから、敵も怒ってしまいまして、本物の剣で勝負だ!と厨二病満載の展開でございます。CGの味付けが濃い本作ですが、このシーンはなかなか手に汗握るアクション。たまに見返したくなります。

読者の皆様にはやはり6代目ボンド、ダニエル・クレイグがお馴染みでしょうか。『スカイフォール』(2012)では一度失踪して、再起をかけ、トレーニングに励みます。ちゃんとプールで泳ぐ姿も。ダニエルは007でも他の映画でもやたら裸になることが多いです。ただボンド史上最大のスポーツへの貢献は、やはり2012年のロンドンオリンピックの開会式でしょう。

『幸福と栄光』と名付けられたまさにショートフィルムで、ボンドはエリザベス女王をバッキンガム宮殿から開会式会場までエスコートしました。

次の007はどんなスポーツに挑戦するのでしょうか。そもそも007次回作はいつなんでしょうか。スポーツの秋でもありますが、映画祭の秋でもあります。秋の国際短編映画祭のリアル会場開催がまもなくスタートします。皆様ぜひ足をお運びください。

WRITER:Dragon

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア プロデューサー。小学生でディズニー映画、中学生で007を見て以来映画とは長きにわたる付き合い。大学では、アメリカの映画文化などについて学びつつ、崔洋一監督にも学ぶ。卒業論文のテーマはアメリカの総合大学における映画教育について。

Instagram:  https://www.instagram.com/dragonryutaro/

Writer:BSSTO編集部

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