土地や気候、育て、醸造する人の気持ち。
その味わいの中に感じられる個性的な表情は、ショートフィルムの世界と似ています。
作り手はどんなことを考えていたのか、その年はどんな年だったのか—。
このコラムでは、そんなことを思い浮かべながら、ワインとショートフィルムのペアリングを、ワイン専門店エノテカの広報、佐野昭子さんに紹介いただきます。
ショートフィルムのストーリーと、ワインの香りや味わいが織りなすひと時をお楽しみください。
4月13日からいよいよ始まった大阪万博。テーマである「いのち輝く 未来社会のデザイン」にちなんで、ブリリア ショートショートシアター オンラインでは「未来社会」が描かれるショートフィルムの特集が行われています。“未来”とひとくちに言っても、その視点や表現方法は様々。そのなかで印象的だったのが、『外の音、僕の世界 』(イタリア/フランス)です。
主人公は通訳を務める男性。不思議な特徴を抱えており、あらゆるもの音が少し遅れて聴こえてしまうという、逆に言えば、すべての音よりも先の未来を生きている人物。例えば、手のひらを叩くと、その音が少しだけ遅れて聴こえるという始末。しかもその時差は最初1秒だったのが、どんどんその時間が延びて数時間もの時差となり、仕事はもちろん、日常生活に支障を来すように・・・。こうした奇想天外な設定もユニークなら、その展開も驚きもの。意外な展開については、ぜひこの作品を観てお確かめください・・・!
ワイン名:エスクード・ロホ・ヴィンテージ・コレクション[ボックス付]
生産者名:バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリ
“未来”をテーマにした特集ということで、ふと思ったのが、ワインと“未来”の親和性。
多くのワインには、大体「ヴィンテージ」があります。「ヴィンテージ」とは、ワインの収穫年を指しており、ワインは記載されている年に収穫したブドウを使って造られています(複数の年に収穫したブドウを使って造られる、ヴィンテージがないワインもあります)。過去のある年の秋に収穫したブドウがワインとなり、それを数年後に開けることでそのワインの姿(味わい)が初めて明らかになる・・・。それはまるで未来に届くタイムカプセルのようだと思いませんか・・・??
私はワインを開けるたびに、それも年月を経て熟成したワインを開けるたびに、その年がブドウにとってどんな年だったのか、夏は暑かったのか、秋に雨が降ったのか、私はその年何をしていたのか、などに思いを馳せずにはいられません。そう、まるでそれはタイムカプセルのよう。
本作品の主人公と音の関係もまさにそれで、音は過去からのタイムカプセルのように彼のもとに届きます。ワインは今を生きながらも過去と、これから飲むであろう未来に思いを馳せられる、数少ない飲みもののひとつだと思います。
ご紹介しているワインは、シャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有するロスチャイルド家がチリで手がける看板赤ワイン。しかも、飲み頃まで熟成してリリースされており、8年の熟成を経ています。8年という歳月を封印したタイムカプセルのようなこちらのワインを楽しみながら、“未来”の映画を鑑賞してみるのも一興ではないでしょうか。
エスクード・ロホ・ヴィンテージ・コレクション 2017年は、チリとボルドーのブドウ品種をブレンドして造られたワインを、飲み頃まで熟成させてリリースされています。チリワインと言えば、“安旨”というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらはフランス・ボルドーワインの最高峰、メドック格付け第一級のシャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有する世界有数のワインメーカー、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社が、ボルドーで培った一流のワイン造りの技術を生かしてチリで造るワイン。しかも数年間の熟成を経てリリースされているので、熟成由来の複雑かつまろやかさが加わっています。時を経た味わいをこの価格でお楽しみいただけるという、コスパに優れた1本です。