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作品座談会
Jun. 21, 2019

【SSFF座談会】暑い夏の夜にぴったり!
ドキドキハラハラ、恋とホラー?!

多種多様なショートフィルムを紹介しているBrillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE(BSSTO)。選定にあたったスタッフがショートフィルムの魅力を座談会形式で語ります。

第4回のメンバーは左から大竹悠介(BSSTO編集長)、青目健(プロジェクトマネージャー)、磯山亜希(プログラミングスーパーバイザー)です。

今回の作品は、不器用な男の『恋の第一歩』と、夏の暑い夜にぴったりなホラー作品『モスキート』。そして思わず引き込まれる本格サスペンス、『渋滞』です。
※この記事にはネタバレを含みます。

「スーツ似合ってた」は期待アリ?――『恋の第一歩』

『恋の第一歩』(英題:The First Step)
Aurélien Laplace監督/フランス/コメディ・ロマンス/2014/19:56

【あらすじ】
とある街の旅行代理店に勤めるエリックは、通りの向かいに住む女性一目惚れ。毎朝彼女の姿を眺めるのが日課になっていた。仕事に身の入らないエリックは上司から異動命令をうけ、彼女に近づくためにある作戦を決行する。

青目
主人公の男性が女性に近づくためにある事件を起こすわけですが、軽いストーカーみたいですね。

磯山
いや~重いですよね・・・この人。

大竹
映画は現実のデフォルメ。片思いの経験というのは誰にしもあるわけで、愛情表現を間違った方向に「やっちゃう」人は多いのかなと。ひたすらラブレター送り続ける人もいるかもしれないし、片思いがつのった挙句とっぴなことをやるっていうのは普遍性があるんじゃないかなと思いました。

磯山
長編だったらついていけないと思いました。短いからまだ許せた気がします。長編にしたら、男性は女性にずーっと付きまとうと思うんですよね、80分でも2時間でも。やり続けられたらちょっといい加減どうにかしろよって思っちゃう気がする(笑)

青目
友人も困るくらいのことをやってしまうから、けっこうドタバタな感じだけど。

磯山
おふたりにとって、「スーツは似合ってたわ」って含みを持った台詞を残すエンディングは、ハッピーエンドでしたか?

大竹
うーん、ハッピーではないですね。

青目
女性としても男性に好意を持っていたということなのかなぁ?

大竹
そうなんですかね?

磯山
どうだろう。

青目
女性は男性の行為を知ってたっぽい、3か月前から。だから女性の方も気になってて。

磯山
だからあの行為をしなければうまくいっていたかもしれないけど、やっちゃったから…。でも、本当に女性が男性に幻滅してたら、あんなこと言わないでいなくなると思いますよ。だからまだポジティブなのかなって。

大竹
ドン引きはしてない。

磯山
してない。じゃなかったらあんな優しくなれないと思うんですよね。だからある意味ハッピーエンドじゃないけど、今後の可能性は含み置いての終わりだったかなあって。

大竹
女性が男性の見せに来たときは男性へ期待感があって、おめかしして来てるのかもしれないですよね。

青目
「もっとうまく誘いなさいよあなた」みたいなところはあるんじゃない?(笑)

磯山
人に好きになられるって基本的には嫌な気持ちしないですよ。それが生理的に受け入れられない人じゃない限り。だから嫌いまではいかなかったんでしょうね。観てても案外良かったんだろうなって思いましたが。

青目
これからうまくいくんじゃないかっていう予感をさせる。

青目
どこから気づいていたんだろうね、女性は。向こうが押しかけてどこかのタイミングで。

磯山
最初からじゃない?気になってたってことはさ、すぐわかったと思うんだよね。

青目
フランスのお国柄はどうなんでしょうね。イタリア人はすぐ告白するみたいなイメージがあるけれど。

磯山
まわりくどいのかな、だってすぐに言ってたら普通にうまくいってたと思うんだよね。よく考えたらショートフィルムってこういう作品が多い気がします。ちょっとおバカな男の人と女の人が出てきて、「あれ、もしかしたらこの二人うまくいくんじゃない?」みたいなポイントでエンドクレジットが流れるとか。

大竹
この作品についてまとめるとどんな感じですかね。

磯山
女の人は好きなタイプだと思います。人に好きになってもらうのは誰にとってもうれしい事だし、最終的にこの二人はうまくいくかもしれないっていうポジティブなエンドに思えたから。いい作品というか、楽しめた作品かなと。大竹さんはハッピーエンドではないと言っていましたが?

大竹
僕は自分の過去の傷を思い出してはずかしくなったっていう(笑)

青目
近しいことをやったと。

磯山
それはたしかに男性ならではの見方かもね(笑)

青目
でも行動に移したっていうのはいいことだと思うよね、やり方はどうであれ。 悶々としているだけで、「いい出会いがないんだよねー」って言いながら、もともと動いてましたっけ?っていう感じの人いるじゃないですか。きっかけは1週間後に異動になるっていうことがあったからかもしれないけれど、動いたっていうことは、これから恋を見つける人にとって良い作品なのかもしれない。

これはホラーか、コメディか。――『モスキート』

『モスキート』(英題:Mosquito)
Timo von Gunten監督/スイス/ホラー/2014/13:00

【あらすじ】
老人はアパートの部屋の中に一匹の蚊を見つける。蚊の出す音に嫌気がさした彼は…

大竹
夜寝ていると、蚊が飛んでます、ブ~ンっていってます、バシッとやるけどつかまりません、と。これありますよね。

磯山
ありますね。万国共通ですよね。

大竹
あきらめて寝るとまたプ~ンと来て、電気つけるといなくて。

青目
消えるんだよね(笑)

磯山
これは夏でホラーというところで選びました。

大竹
ホラーかなあ?(笑)

青目
コメディ、コメディですよ!完全に馬鹿な親父と蚊の戦いみたいな。

大竹
エンディングがなかなか本格的というか、こういう現実をぶっ壊していく感じは面白いなと。

磯山
ほとんどセリフはなかったんじゃないですか?一人芝居だよね。

 

大竹
最後、水のところはどうやって撮ったんでしょうね?本当に部屋を沈めたのかな。

 

磯山
たぶん俳優さんとか撮影にかけない部分を、中身にお金かけてるから描けたんじゃないですかねえ。音楽はベタだよね、ジョーズみたいな感じ。

青目
スイスの映画文化はどうなんですか?

磯山
公用語がいっぱいあるじゃないですか。フランス語、ドイツ語、イタリア語・・・だからいろんな文化があるイメージです。スイスの映画祭に行ったときに上映のスライドは3か国語で書いてありました。

大竹
それでよく一つの国としてまとまってますよね。

磯山
地域のの文化が強いところは映画も強いですよね。カナダでも、ケベックは他の州の人と文化が全然違うから、文化の独自性を保つために映画を大事にしている。

青目
なるほどね。

大竹
主人公のおじさんは、最後死んじゃうんでしたっけ。

青目
たぶん死んじゃったと思う。蚊は逃げて行ったんだよ、このおじさんが穴をあけてあげたから。

 

磯山
最後に「No animal were harmed.」って書いてあった。「動物は傷つけてません。」って。だから蚊は死んでません(笑)

大竹
壮大にふざけてるって面白い。ショートフィルムってがっつり重いものがある一方で、軽い小話系なものもあって、どっちかに分けられる感じがします。BSSTOで配信した『華麗なる晩餐 (NEXT FLOOR)』は重くて、『恋の第一歩』とか『モスキート』は軽い。で、次の『渋滞』は重い。

磯山
重い!!それが10分とか20分とかだからすごいですよね。短いのに感情の起伏が半端なくて。

青目
『渋滞』はハラハラするというか、娘どこ行ったんだろうって。

SSFFスタッフが度肝を抜かれた本格サスペンス――『渋滞』

『渋滞』
Ian Hunt Duffy監督/アイルランド/サスペンス/2015/19:45

【あらすじ】
渋滞した田舎の道。車に乗っていた幼い少女が行方不明になり、父親は仲間をかき集めて捜索を始めた。一体誰が娘を連れ去ったのか?容疑者はそこにいる全員だ。

磯山
これはもう映画祭に応募があった時にみんなが度肝を抜かれた作品です。

大竹
ザ!サスペンスという感じで、2時間ものの刑事ドラマを観たくらいのボリューム感がありますね。

青目
ラストも大どんでん返しというかねえ。

磯山
かなり大どんでん返しですよ。

大竹
これはネタバレはしたくないですね。製作国はイギリスでしたっけ?

磯山
アイルランドだったかな。やっぱりオチがある作品って、内容はどうであれ「観た感」が生まれる気がします。そして誰かに話したくなる。しかもみんなちょっとずつ怪しいんですよね。

大竹
容疑者1、後ろの車の上品そうな夫婦。容疑者2、前の車のワイルド系な男。容疑者3、だいぶ前の方にいるコミュ症っぽい男。容疑者4、一緒に森に行く男。さて誰が犯人でしょう?みたいな。ポスター作るとしたら皆悪い顔している感じ。

磯山
2回観ると1回目には気付かなかったことにも目が行きますね。娘が人形で遊ぶシーンで父親がなぜイライラしてるのかも1回目で観るとただ単にイライラしてるなとしか見られないけれど、実は意味があって。そもそもなんで急いでたのとか、交通事故にあった馬の血をみてクラっとする描写とか、ちょっとした伏線が張られてたんだけど、みんな見事に騙されてる。

大竹
これは自分に引き付けて考えるってタイプよりかは、ただただ流れを追うっていう感じですよね。カメラワークもうまいですね。

磯山
一秒たりとも見逃しちゃいけないっていうのが、序盤の方からあって、尺的には20分あるので、ずっとハラハラで。それで最後にこう来たかって。ショートフィルムを代表する流れな気がします。

青目
完成度が高い。

磯山
アイルランドの作品は本当にクオリティが高いんですよ。2年に1回くらいはオスカーにノミネートされていると思います。

大竹
なんでそうなんですか?

磯山
アイルランドってイギリスに近いからこそ、自分達の文化を大事にしているところで、国の助成金とかも出ているんじゃないかなあ。

大竹
アイルランドに映画祭ってあるんですか?

磯山
一個すごく大きいのがあります。国内作品のコンペティションとインターナショナルのコンペティションがあって、SSFF & ASIAと同じくアカデミー賞公認です。

大竹
アイルランドといえば、ジョン・カーニー、『シング・ストリート 未来へのうた』とか。

磯山
あー!『ONCE ダブリンの街角で』の人だ!

青目
めっちゃ良いですよね。

大竹
今回は軽い感じの2本と重い感じの1本と。

磯山
『渋滞』って初めて観る作品としてはどうなんだろ。

大竹
いいと思います。おすすめしたい映画ってこういう感じだと思うんですよね。

磯山
観た後に誰かに伝えたくなる気がする。「絶対びっくりするから観て!」って。

大竹
やっぱり完成度が高いっていうのは良いですよね。

磯山
自分が好きな作品って相手が好きかどうかわからないから、押し付けても悪いと思うからなかなか進められないんですが、これは好きであろうと嫌いだろうと確実にびっくりするだろうって思うからシェアしやすいですね。

(おわり)

Writer:BSSTO編集室

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。

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