こんにちは、VR映画プロデューサーの待場勝利(まちばかつとし)です。
今回から5回に渡って映画の新しいカタチ、VR=Virtual Realityを使った映画の紹介をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
先日スティーブン・スピルバーグ監督作品「レディ・プレイヤーワン」が公開されました。私はまだ見ていないですが、まさにVirtual Reality(以降VR)の世界を描いた作品だと聞いています。そんなスピルバーグ監督もVRの映像制作会社のThe Virtual Reality Companyのアドバイザーを務めたりするなどVRに関しては非常に関心があるようです。
しかし、スピルバーグ監督もVRに関しては苦戦しているようです。2016年にスピルバーグ監督がVRについてこんな発言をしています。
「VR技術は伝統的な映画製作にとって危険な進歩になるかもしれない」
VRの映像表現が観客により自由度を与えてしまっているため、「作り手が見せたいもの」より「観客が見たいもの」が優先されてしまい、ストーリーがきちんと見せられないのではないか?という懸念があるようです。
しかし世界ではVRを新たな映画の表現方法と捉えて、VR映画を取り上げる映画祭も増えて来ています。日本でも「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)」が新たにVR部門「VR SHORTS」を設立することを発表しました。私も少しお手伝いしています。どんな作品が映画祭で体験できるのか、ぜひ楽しみにしていてください。
今までの伝統的な映画の表現方法を超えた、革新的な映像表現としてVRを使った映画が始まろうとしています。
そんなVR映画のはじまりを一緒に体験しに行きましょう!
今から約120年前にリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明し、映画が誕生したと言われています。当時の作品はとにかく写真が動くことが新しかったため、色々な風景や状況を記録的に撮影していました。その映像を大きなスクリーンで初めて見た観客は映像の中の汽車に轢かれると錯覚し、あわてて劇場から逃げ出したそうです。映画はこの時から長い時間をかけて大きな産業になって行きました。
今、VRと映像は出会ったばかりです。今後VRを使ってどのような映像表現ができるかを多くのクリエイターたちが試行錯誤しています。映画の創世期と同じように、色々な風景と状況をVR用に撮影しています。今までの映画の表現方法で撮影したらどう見えるかを試したりもしています。映画という形が物語を語るために長い年月を要したように、VRでも少しずつ物語を語る方法を見つけようとしています。
VRが物語を語るメディアとして進化するにはもう少し時間がかかりそうです。それは作品の作り手の進化という意味でもありますし、VRを楽しむ皆さん(=体験者)がVR映像に対するリテラシーをまだ持っていないという意味でもあります。VRでの映像表現は全く新しいものになるため、きっと初めて映画を見た観客のように、VR映画の面白さに気づけずに劇場から出て行ってしまう恐れもあります。
この連載で少しでもVR映画の楽しみ方を知っていただき、VRのリテラシーを高めていただいて、6月に開催される「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)」の「VR SHORTS」に体験しに来ていただければと思います。
今まさに多くのVR映画が映画祭に集まって来ています。その中には、私の人生の中で体験したことのないような映像体験をさせてくれる作品がいくつかありました。物語を語るメディアとしては始まったばかりのVRですが、今後多くの驚きと感動を伝えてくれると思います。次回からは映画祭にも紹介される予定の魅力的なVR映画を紹介していきたいと思っています。
最後に映画ファンの皆さんにVR映画を1本ご紹介いたします。
残念ながら6月の映画祭では登場しない作品ではありますが、VR映画を語る上でも非常に重要な作品になると思いますので、是非ともご体験していただければと思います。(できれば、VR用のヘッドマウントディスプレイで体験してみてください)
この作品は過去の有名な映画をモチーフにしてVR 映画の誕生を表現しています。映画の創世記に観客たちが汽車に轢かれると錯覚して劇場から逃げ出した『ラ・シオタ駅への列車の到着』、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』など、いずれも過去の映画作品に敬意を表しながら、VR映画へ変換した作品になっています。VR映画の始まりを予感させる作品です。
EVOLUTION of Verse / CREATOR: CHRIS MILK
VR CRUISE
⾼品質な映像VR をキュレーションするVR ポータルアプリ。アーティストのライブや エンタメコンテンツ、スポーツ、ニュースなど幅広いジャンルのVR コンテンツを多数掲載。DMM.com、ハコスコ等でVR CRUISE チャンネルを展開中。
VR THEATER
全国の複合カフェ、ホテル、カラオケ、ゲームセンター等で、気軽にバーチャルリアリティを体験できる店舗常設型サービス。
Writer:待場勝利(まちば・かつとし)
株式会社eje、VR推進部執⾏役員。⼤学を卒業後、アメリカで映画製作を学ぶ。TV ディレクター、20 世紀フォックスホームエンターテイメントジャパンで⽇本語版プロデューサー、サムスン電⼦ジャパンではGear VR を担当。2016年から株式会社ejeでVRのコンテンツに関わる。数々のVR Project を担当。ejeではVR CRUISEとVRTHEATERの運営に携わる。
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