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REPORT
Mar. 15, 2019

【イベントレポート】「Cinema for Life~インテリアスタイリスト 石井佳苗さんが語る、
映画と自分らしい住まいの作り方~」イベントレポート

映画を通してライフスタイルを豊かにするヒントを探るBSSTOの連載コラム「Cinema for Life」。そのスペシャル企画として、2019224日(日)にCinema for Life~インテリアスタイリスト 石井佳苗さんが語る、映画と自分らしい住まいの作り方~」が開催されました。
ゲストの石井佳苗さんは、インテリアや空間を中心に衣食住のライフスタイル全般のスタイリングを提案され、ご自身のライフスタイルにも注目が集まる人気インテリアスタイリスト。
今回は映画や様々な事例を元に語られたイベントの一部をレポート記事としてお届けします。

映画から見る自分らしい暮らし

イベント冒頭では石井さんがインテリアや「自分らしい暮らしが表現された映画」として、カナダに実在した画家モード・ルイスの生涯を描いた『しあわせの絵の具』、世界的ファッションデザイナーの仕事やライフスタイルに迫ったドキュメンタリー『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』、ある女性へ著名な建築家が向けた強烈な憧れと嫉妬を描いた『ル・コルビュジェとアイリーン 追憶のヴィラ』の3作品を紹介。
3本とも奇しくも実在の人物の住まいが描かれた作品でしたが、石井さんは、「人と住まいはリンクする。住まいは自分という存在が露わになる存在」と語られていました。

『しあわせの絵の具』
©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

石井
主人公ルイス(サリー・ホーキンス)は、とにかく絵を描く事が大好きな人。彼女の絵は当時のアメリカ副大統領ニクソン氏も買い求めるほど有名になりますが、夫となる不器用な漁師(イーサン・ホーク)との4メートル四方の小さな家が、彼女の絵でどんどんカラフルで可愛い家に生まれ変わっていくところは必見です。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

石井
常に美しいものを生み出す方は、どういう思考でどんな暮らしをされているのだろうという興味から鑑賞しました。全体がクラシカルな部屋の中にうまく本人の好きなアジアの柄をミックスして取り入れたり、広大な庭で花を摘み食卓に飾ったりと、夢のような世界が広がっていて…。この素晴らしい生活があるからこそ、彼の生み出す洋服たちもまた素晴らしいのだと、妙に納得させられる美しい映画でした。

『ル・コルビュジェとアイリーン 追憶のヴィラ』
© 2014 EG Film Productions / Saga Film © Julian Lennon 2014. All rights reserved.

石井
建築界の巨匠コルビュジェが提唱した「近代建築の五原則」を元に、デザイナーのアイリーン・グレイが恋人との別荘として建てた「E.1027」のあまりの素晴らしさに、コルビュジェ自身が嫉妬してしまう様を描いた物語です。
この映画でのコルビュジェはちょっとずるくて、彼女の留守中に「E.1027」に入り浸り、いたずら描きまで壁に描いてしまうのですが、この事で自分の建てた建築と世間で勘違いされる事になっても敢えて否定しないんです。しかも「E.1027」の近くに監視小屋まで建ててしまう始末。
嫉妬心を子どものように燃やす、滑稽で可愛らしくもあるコルビュジェの意外な一面が見られた作品でした。

石井佳苗さんが語る「自分らしい住まい作り」

昨年9月に出版された石井さんの著書「Heima-これからの住まい支度-」。
石井さんも「よくあるハウツー本ではなく、自分がインテリアを考える時に意識する“感覚”や“気持ち”を表現しようと思った」と語る本作。
イベントでは、この本に書かれたコルビュジェの「近代建築の五原則」ならぬ、石井さん流住まいづくりの「8つのキーワード」を元に、ご自身のライフスタイルや、出版に向けた裏エピソードを交えてお話しいただきました。

石井
中学2年生の時に自分の部屋を増築してくれることになって、母から「自分で床や壁や天井や照明を決めなさい」と言われ、分からないなりにカタログとか見たり、工務店さんに今の流行りを聞いたりしながら決めていったんです。完成した空間が良いかどうかは別として、これは面白い体験でしたね。
当時はレコードで音楽を聴く時代、レコードを積み重ねられるパカッと開くクローゼットが欲しくて、作り付けの家具としてその時オーダーしたんですが、そこからスピーカーは?本は?と置く場所を想像しながら、工務店のおじさんにイメージを描いたスケッチを渡したりしてましたよ。
ただ、その時はインテリアが好きというより、とにかく想像することが好きだったかな。

インテリアの原体験をそう語った石井さんがインテリアの仕事に就いたのは30代に入ってから。現在までに何度も引っ越しを繰り返す自称「引っ越し魔」だという石井さんは、いろんな所に移り住んでは、新しいインテリアを試したり、自分の今に合ったライフスタイルを表現していくのが大好きと語ります。

石井
仕事での利便性を考え、今は東京に引っ越し、9年ぶりに賃貸マンションに住んでいます。こういうのも人生を歩んでいく中で訪れた一つのライフスタイル。ただ、子供も社会人になったので、自分の自由にできる住まいが欲しいと今は思っています。

自身のライフスタイルの変遷の中で様々なインテリアをミックスさせてきた石井さん。そこには「自分が好きである」というフィルターを通す一貫性が見られました。

石井
新旧問わず世界中からいろんなジャンルの物を集めては飾っていますので、棚の上にはどんどん物が増えていくんですが、自分が好きなものを集める楽しさや、集めた物を表現する楽しみを味わいたいと思い、「あそぶ。」というキーワードで紹介しています。
ちなみに息子が小学生の時に描いた絵も凄い好きで、今でも棚に飾っているんですよ。本人は「最終的には(絵画教室の)先生が仕上げたから100%僕のじゃない」とか言ってますけど(笑)。

キーワード「享受する。」では、キッチンを部屋に見立て、絵画や鏡、クラフトを配置する事で生まれる変化について語られました。

「8つのキーワード」を語っていく中で、石井さんが特に重要視していたのが部屋に取り込む「光と風」、そして様々な新しい発見への「ときめき」でした。

石井
多くのマンションは、一面だけバルコニーで反対側は光が差し込まないという作りも多いと思いますが、部屋に少しでも光が差し込む方が嬉しいですよね。
そこでドアをガラス戸に変えたり、壁に窓をつけたりして光を取り入れたり、さらにそこへカーテンやブラインド、韓国のポジャギといった布を加える事で、形の見えない風を感じる工夫をすると、日々の暮らしがグッと気持ちが良いものになります。生活の中でこうした気持ちいいと感じることが、私は必要だと考えています。

それから、この本の企画で新しい発見を見つけに海外のいろんな人の家を拝見しようと、日本に近い感覚を持つ台湾を訪れたのですが、有名な謝小曼(シェシャオマン)さん等、参考になる素敵な住まいが本当に多く、本の中でも20ページ程も使ってしまいました(笑)。
この旅で特に大きな大発見だったのが「畳」の使い方。
畳って日本だとリノベーションする際に使いにくいから取り除いてしまうケースがほとんどですが、その使いにくい理由がフローリングで繋げてしまうと、和室で畳に直に座る人と、洋室で椅子に座る人との視線の高さが合わなくなる事だと気づいたんです。
台湾では畳の間に段差をつけて高くしているので、椅子に座る人との視線が合うようになっていて、使い勝手をよくしているんです。畳に対する台湾の方の柔軟な発想は、固定概念のある日本ではなかなか生まれにくいと思うと共に、改めて畳いいなぁ、今度自分の住まいにも取り入れてみたいなぁと思いました。

ショートフィルムとライフスタイル

イベントでは今回特別にセレクトされたショートフィルム『キャビア』も特別上映。
イベントの最後には、石井さんにショートフィルムを体験された感想を伺いました。

石井
『キャビア』は痛快なリベンジ劇が楽しめる作品でしたが、ショートフィルムは話が短い分ギュッと凝縮され、とても記憶に残る作品が多いと感じました。今は映画をTVやスマートフォンなど、いろんなシーンで楽しめる時代になりましたが、短い時間でサクッと観られるのがショートフィルムは良いですね。
今回のようにインテリアにも注目できる作品もあるので、これからもいろいろ観ていきたいと思っています。

イベントでも上映し、石井さんもおススメする『キャビア』の鑑賞はこちら

いかがでしたか?
今回のイベントでは、改めて映画やショートフィルムがさまざまなライフスタイルを教えてくれる教科書という側面もある事に気づかされましたが、もうすぐ新しい年度、新しい元号を迎えようとしている今、石井さんの8つのキーワードを活かし、自分らしい住まい作りを実践されてはいかがでしょうか?

石井 佳苗(いしい かなえ)

雑誌、広告、CM、カタログ、モデルハウスのスタイリング、ショップ.展示会ディスプレイ等、インテリアや空間を中心に衣食住のライフスタイル全般のスタイリングを提案。スタイルにこだわらない、ミックスコーディネートに定評がある。

また、自宅やアトリエのDIYやセルフリノベーションが話題となり、そのライフスタイルも注目されている。

2017年にはNHK Eテレ『趣味どきっ 家で楽しむ私のカフェスタイル』に自宅を舞台に講師として出演。

著書
昨年、自身が編集長となる「Heima-これからの住まい支度-」(宝島社)を上梓。
他「DAILY LIFE」「love customizerNo2. セルフリノベ―ションで作る家」(共にエクスナレッジ)など多数。
現在Instagram(@kanaeishii_lc)でも3匹の猫(通称、猫社員ズ)との日々の暮らしを更新中。
HP:http://www.kanaeishii-stylist.com/

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』 

DVD好評発売中
¥3,800+税
発売・販売元:松竹
© 2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』 

© 2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

© 2014 EG Film Productions / Saga Film  © Julian Lennon 2014. All rights reserved.

Writer:BSSTO編集室

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。

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