幼少期を過ごした島へ戻った二人の兄弟。再会は、封じ込めてきた秘密と向き合う時間となる。島に残された記憶をたどるうちに、二人を結びつけてきた“ある過去”が浮かび上がる――。タウフィーク・バルホームは、これまで『天国から来た少年(Cairo Conspiracy)』の主演や『オーメン:ザ・ファースト』などに出演し、俳優として国際的なキャリアを築いてきました。本作は、彼が脚本・監督・主演をすべて務めた意欲的なデビュー作です。本作の特筆すべき点は、実の兄であるアシュラフ・バルホーム(Ashraf Barhom)との共演。父の死をきっかけに故郷の島へ戻った二人の兄弟が、長年埋もれていた過去の秘密や暗い記憶に向き合う姿を描いています。実の兄弟が「兄弟役」を演じることで、セリフ以上の複雑な感情や、家族間に流れる独特の緊張感をリアルに捉えています。
「親という存在が子供のアイデンティティを形成する際、それが時に暴力的なまでの重荷(Burden)になり得ること」をテーマに据え「その死によって初めて、自分の人生を生きる許可が下りたという解放感」を表現したかったと語っています。脚本は極めて繊細で、比喩的な表現やわずかな予兆を積み重ねることで、観客の想像力に訴えかけるスタイルをとっています。父が具体的にどのような悪行を働いたのか、その詳細はあえて空白にしています。
空白にすることで、観客は自分自身の「家族との確執」や「赦せない記憶」をそこに投影することになります。この「語らない勇気」こそが、脚本が繊細であると言われる所以であり、パルム・ドール受賞の決め手となりました。
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Tawfeek Barhomb
パレスチナ出身の俳優・映画監督。20代から国際的に活動し、『ガザの美容室』や『天国から来た少年』での主演、ハリウッド作『オーメン:ザ・ファースト』への出演で、繊細かつ力強い演技が高く評価される。2025年、初の監督・脚本・主演作『I’m Glad You’re Dead Now』を発表。実の兄アシュラフ・バルホームを共演に迎え、自身のルーツと家族の確執をテーマに据えた。俳優としての鋭い観察眼と、抑圧された感情を静謐な映像美で捉える演出力により、デビュー作にして第78回カンヌ国際映画祭短編パルム・ドールを受賞する快挙を成し遂げた。