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COLUMN
Oct. 26, 2018

【てくてくシネマ散歩】from ヴェネツィア国際映画祭
~世界三大映画祭を歩いてみたら~

こんにちは、国際短編映画祭 ショートショート フィルムフェスティバル & アジア スタッフの宋倫です!今回の「てくてく映画散歩」では、私が今年訪れたヴェネツィア国際映画祭についてご紹介します!

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75回目を迎えた世界三大映画祭・ヴェネツィア国際映画祭

829日からヴェネツィア・リド島で開催されていた第75回ヴェネツィア国際映画祭(https://www.labiennale.org/en/cinema/2018)(以下ヴェネツィア映画祭)はアルフォンソ・キュアロン監督作『ROMA ローマ』が金獅子賞に輝き98日に幕を閉じました。銀獅子賞審査員グランプリに輝いたのはエマ・ストーンが出演するヨルゴズ・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』(原題:The Favourite)。どちらの作品も開催中大注目だったことから、現地の観客からは受賞に納得の声が多く聞こえました。

コンペティション以外にも7部門が設けられた今年の映画祭、巨匠エミール・クリストリッツァ監督のドキュメンタリーやVR、短編、過去の名作のリマスター版など映画を通して様々な形で物語と時代を楽しめる作品がそろっていました!

私は825日から約2週間夏季大学プログラムを受けるためヴェネツィアに滞在し、滞在中に映画祭にもほぼ毎日足を運びました。開催期間中はゲリラ豪雨が何度も現れたりカラッと気持ちのいい晴天になったりと天候は一時間に一度変わっていましたが、映画三昧な日々で気持ちはいつも晴れ晴れでした!もちろん映画祭のほかにも、2016年から1年間留学していたこともあり、当時の友人たちと再会できたり、ヴェネツィアで誕生日を迎えたり、とても有意義な時間を過ごせました。

今年のレッドカーペットでは、エマ・ストーンやブラッドリー・クーパー、レディ・ガガなど有名ハリウッド俳優が顔をそろえました。レッドカーペットは会場内にあり観客との距離が近いため、毎日大勢のファンがレッドカーペットの前でサイン色紙やカメラを持って待っていました。特にオープニング作品の『ファースト・マン』に主演したライアン・ゴスリングが訪れた日は、彼を一目見ようと日傘を持った女子たちがレッドカーペットの前で6時間も待っていたそうです!

プレスやセレブだけじゃない!私たちも楽しめる映画祭!

招待状の必要なカンヌと比べて、ヴェネツィア映画祭はとてもオープンな映画祭です。ヴェネツィア本島から水上バスで15分ほどのリゾート地・リド島に会場が設置されていることからリド島やヴェネツィアの住人達もふらっと映画を観に来る、特別な準備がいらないカジュアルな映画祭です。

その上、映画祭は学生をとても大切にしているように感じました。申請すると、学生でもプレスやアクレディテーションホルダー限定の上映回が見放題など優遇が受けられます。また、会場にいるスタッフのほとんどが学生インターンで、専攻によって様々なタスクを担当していました。特に語学を専攻している学生はゲストアテンドに配属されることもあり、私の友人で日本語を専攻していた学生は塚本晋也監督のインタビューを任されていました!

映画祭開催期間中は夏休みで授業がないため、多くの学生たちは一日中リド島に滞在して映画漬けの日々を楽しんでいました。ヴェネツィアの学生は映画好きばかりで、注目作はもちろん、ジャンル問わず様々な映画にチャレンジし、知らない文化を学ぼうとする姿勢が素晴らしいと思いました。

本島とリド島を繋ぐ水上バスは早朝から深夜まで毎日稼働し、朝から注目作品を観ようと大勢の観客やプレスが島に訪れました。ヴェネツィア映画祭は来場者同士の距離がとても近く、一般の観客が国際プレスや名だたる映画祭プログラマーや審査員と一緒に上映を待つことも多々ありました。私がPala Biennaleで『サスピリア』の開場を待っていた時も、隣には偶然にもウーディネ・ファーイースト映画祭のプログラマーが!ファーイースト映画祭で今年のコンペティションに入選し話題になった『カメラを止めるな!』(英題:One Cut of the Dead)について話が盛り上がりました。『カメラを止めるな!』は現地でも大人気で、今年イタリアでの劇場上映が決定したそうです。

注目されている作品は事前にチケットを入手しなければいけませんが、当日券のある映画もたくさんあります!注目作は劇場公開が決まっているものが多いため、あえて映画祭でしか見られない作品を見るのも映画祭の楽しみ方の一つです。

上映を待つ人々@Pala Biennale

塚本監督の『斬、』も注目作品のひとつでした。初日は大勢の観客が長蛇の列を作っていたので諦めたのですが、次の日友人とダメもとでアクレディテーション保持者用のスクリーニングに訪れると、奇蹟的に席が空いていました!

監督やスタッフの皆さんと、出演者の池松壮亮さん蒼井優さんが2階席に着席されていて、観客約1000人からの拍手の中立ち上がり、手を合わせてお辞儀をされていました。長年映画祭の常連として活躍してきた貫禄を感じました。上映が始まり、激しいオープニング音楽に続いて監督の名前が画面にドンッと現れた瞬間、観客席からも「うぉー!!!」と歓声が沸きあがり会場は序盤から大盛り上がり。そして上映終了後、エンドロールとともに監督と出演者が退出するまで約5分間におよぶスタンディングオベーションが起きていた場面がとても印象的でした。

ヴェネチィアの朝はカプチーノからはじめよう!

ヴェネツィアは街中がアートに包まれています!街を歩いていると、レストランのオープンテラスで野外コンサートが開かれていたり、ガラス細工が展示されていたり、様々なアーティストの個展が開かれていたり、新しい発見が毎日ありました。

写真はサンマルコ広場でレストランのオーケストラが演奏している場面です。私はステージとレストランの間にある通路を通ってアカデミア橋へ向かう途中でした。レストランのお客さんでなくても音楽を楽しめるところにイタリア人のオープンな人柄を感じます。

イタリアといえばパスタやピザなどのしっかりした食事の印象が強いですが、朝はスイーツを食べる習慣が根付いているようです。滞在中の朝ごはんは主に学校のバーでクッキーとカプチーノを買って授業が始まる前に済ませます。ルームメートたちとゆっくり食べたい時は家の近くのバーでカプチーノと一緒にティラミスやクロワッサン、一口サイズのケーキなどを注文して外のテラスでおしゃべりしながら食べていました。

もちろん、ピザも食べました!もともとピザは毎日食べても飽きないほど大好きですが、日本と比べて本場のピザはとても安く(ホールピザで5ユーロから)、宅配ピザのクオリティもとても高いものばかりだったので、友人たちと家に集まってよく食べていました。

その中で一番美味しかったのは写真のPizza Bresaola Rucola Grana (牛の薄切りサラミ、ルッコラとチーズのピザ)。牛のサラミを初めて食べたので、その柔らかさと凝縮された肉のうまみがルッコラとチーズにあって最高でした。日本のシェアスタイルとは違い、イタリアでは普段一人一枚、ホールピザを食べるので、この時も一人でペロッとすべて平らげました!

ヴェネツィアの景色

最後は毎日癒されていたヴェネツィアの景色をご紹介したいと思います。一枚目の写真はヴェネツィア映画祭に向かう本島からリド島の水上バスに乗っていた時に遭遇したボートとお兄さん。太陽が海とボートをかっこよく映していました。

二枚目の写真はリアルト橋のすぐ近くにある「Tフォンダコ デイ テデスキ BY DFS」の屋上から見えるヴェネツィア全体の景色です。手前左にある白い橋がリアルト橋で、天気が良かったこの日は奥からドロミテ山も見られました!「Tフォンダコ デイ テデスキ BY DFS」の屋上は無料で入場できる絶景スポットなので、これからヴェネツィアに行く機会のある方にはぜひ訪れることをおすすめしたいです。

映画だけではなく街や人、食べ物も盛りだくさんのヴェネツィア、みなさんも来年9月は旅行してみてははいかがでしょうか?

 

Writer:宋倫(そう・りん)

ショートショート実行委員会プログラミングアシスタント 1996年9月6日生まれ、兵庫県出身。
大学在学中、東京国際映画祭でボランティアをしたことをきっかけに映画祭の魅力を知り、国内の様々な映画祭に足を運ぶ。そこから世界の映画祭を知りたくなり、世界三大映画祭のヴェネツィア国際映画祭が開催されるイタリア・ヴェネツィアに1年間留学。留学中もヨーロッパ各国の映画祭を回り、南イタリアのLa Guarimba国際映画祭に1か月半のインターンを経験する。現在はSSFF & ASIAプログラミングチームでアシスタントを務める。

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