国際短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバル & アジアと連携して、国内外のショートフィルムを紹介しているBrillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE。本連載では、一人ずつショートフィルム作家をご紹介しています。長編映画やテレビドラマ、CMやMVで活動している方も多いですが、そんな作り手たちも、あえてショートフィルムを撮り続けています。作り手としてショートフィルムのどんな点に魅力を感じているのでしょうか?4回目の今回は、SSFF & ASIA 2021 オフィシャルコンペティション ジャパン部門で優秀賞を受賞した『フレネルの光 / Return to Toyama』を監督した平井敦士監督に伺いました。
平井敦士監督
『フレネルの光 / Return to Toyama』
平井敦⼠/24:34/フランス、日本/ドラマ/2020
【あらすじ】
フランスで夢を追うため、たくみは父の反対に逆らって日本を離れた。 7年ぶりに帰るふるさと富山。自転車を漕ぎながら取り残された町に懐かしい風景と思い 出を繋いでいく。亡くした父に会いに行けぬまま。
・受賞歴
第23回ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2021(日本) ジャパン部門優秀賞
・ノミネート歴
第73回ロカルノ国際映画祭(スイス)
第35回ベルフォール国際映画祭(フランス)
第26回ジュネーブ国際映画祭(スイス)
ほか多数
『フレネルの光』より
①ショートフィルムをはじめて作ったのは何歳の時でしょうか?処女作の作品名と内容を教えてください。
18歳の時に映画学校の課題として作ったのが初めてです。その時に初めてショートフィルムの存在を知りました。名前は覚えていませんが、道を歩いていたら怖い人が追いかけてきて、逃げる。最後には追いつかれて殴られるかと思ったら、落とした財布を渡してくれるという内容でした。ビデオテープのハンディーカムを渡されて「3分で何か撮ってきなさい。」という課題でした。編集方法を学ぶ前だったのでワンカットで作ったのを覚えています。
②長編にはないショートフィルムの魅力はどんな点にあるとお考えですか?
時間が短いため、感情移入したり映画に入り込む前に映画が終わってしまいます。短い時間で伝えるのは難しいですが、その分、時間を切り取りやすいと思います。
『フレネルの光』撮影風景
③SSFF & ASIA 2021 出品作品「フレネルの光」を制作した背景と、こだわった点を教えてください。
これは僕の話で、僕の家族と友達とふるさとを映画にしたものです。長い間、ふるさとを映画にしたいと思っていました。フランスに行く前から何年もの間、思い続けていました。その間に町は変わっていきました。両親は年を取り、友達の子供が生まれ、親戚が亡くなり、町には新幹線が通り、好きだった映画館が閉館しました。この時間の流れが映画になると思いました。
物語を映画にすることよりも時間を映画にすること、人を撮るよりも町を撮ることに集中しました。
『フレネルの光』より
④SSFF & ASIA 2021 で受賞をしたご感想は?
全く予想していなかったので驚きました。そのあとご褒美に食べたトンカツの味を覚えていません。
今から12年前、東京で映画学校に通っていた時、SSFF & ASIAに作品を出品したことがあります。いつかあの舞台に立ちたいと憧れていた映画祭なので、ノミネートされただけでも嬉しいです。受賞は夢のようです。
⑤コロナ禍で制作活動にはどんな影響がありますか?また、コロナ禍で生じる制約に対してどのように取り組んでいらっしゃいますか?
世界の映画祭にノミネートしていただけたのに、実際に映画祭に出席して、他の監督たちと話す機会を得られませんでした。オンラインで開催されている映画祭が多いですが、映画館で映画を観るのと同じくらい、実際に人と出会うのは大切なことだと思います。今できることは、映画館で映画を観ることの楽しさを忘れないようにすることだと思います。映画館では、新型コロナウィルス感染拡大以前から、各都道府県の興行場法の条例を元にインフルエンザ感染予防対策として換気の量が決められています。映画館は感染のリスクが高い場所ではありません。感染予防対策をしたうえで、少しでも多くの方に映画をスクリーンで観ていただけるように、地元富山県の映画館で上映させていただきました。人との繋がりが希薄になっている今、一緒に映画を観て、知らない人と感動を共有できる映画館の大切さを強く感じます。今後も、劇場で観たい映画を作り続けていきたいと思います。
⑥今後作ってみたい作品や、取り組みたいテーマはありますか?
今は、人との繋がりを感じる場所を映画にしたいと考えています。それは、映画館や銭湯や喫茶店など、僕の好きな場所です。UFOや宇宙や伝説にも興味があるのでミステリアスな映画も作ってみたいです。漁師町で育ったので、海で働く人を撮ってみたいとも思ってます。
『フレネルの光』撮影風景
平井敦士
1989年、富山県富山市水橋生まれ。東京の映像専門学校(バンタン映画映像専門学院・映画監督本科) を卒業し、2012年に渡仏。パリの映画学校(ESEC)で学んだ後、 映画監督ダミアン・マニヴェルに師事。助監督として多くの撮影現場に参加し映像制作を学ぶ。地元富山県で撮影した短編映画「フレネルの光」が、第73回〔スイス・ロカルノ国際映画祭〕のインターナショナルコンペティション部門にノミネートされる。
Writer:BSSTO編集部
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