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MAGAZINE
INTERVIEW
Jul. 17, 2018

【Special Interview】坂本美雨が語る「子どもと映画」
~スクリーンで出会うたくさんの人生が教えてくれること〜

やわらかくオーガニックな歌声で、聴く人の心を深く潤すシンガー、坂本美雨さん。大の映画好きとしても知られ、サウンドトラックへの参加やラジオのパーソナリティ、執筆など、その活動は多岐に渡る。「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2018」では「地球を救え!部門 supported by リンレイ」の審査員を務め、初日のレセプションにも登壇。1児の母として「環境問題は、地球を作っていく子どもたちに伝えないといけない大きなテーマ」と語った。そんな坂本さんに、子ども時代の映画体験が人生に与える影響を中心に話を聞いた。

坂本美雨さん

N.Y.ですごした幼少期から、映画は常に身近な存在だった

映画好きで知られる坂本さんですが、小さい頃から映画はお好きでしたか?

坂本
そうですね。9歳の頃N.Y.に引っ越したんですが、向こうでは週末になると家族や友達と一緒に映画館に行っていました。それがとても自然な遊びなんです。私が小さい頃は今より料金もずっと安くて、子どもは4ドルくらい。だから、子どもだけでワイワイ行ったり、友達の親やおじいちゃんが運転してくれて数家族で映画館に出かけるようなこともあって。大きなポップコーンとコーラを持って……アメリカのドラマに出てくるイメージ通りですね。

ご家族では、どんな映画を?

坂本
母とはそのときどきで流行っている映画、例えば『タイタニック』などを観に行った覚えがあります。映画館におせんべいを持って行って、母がガシャガシャと袋を開けるので、「うるさいよ!」なんて言ったりして(笑)
自宅には様々な映画のビデオがあったので、大人っぽいフランス映画なんかも、訳が分からないまま観ていました。

大きな芸術を生み出す繊細な仕事に興味津々の子ども時代

子どもの頃に観た映画で印象に残っている作品は?

坂本
4歳の時に観た『ネバーエンディング・ストーリー』ですね。自分とは切り離せない存在というか、数え切れないほど観ました。音楽が好きで自分でもカバーしたほどです。それから、ファンタジーとリアルが直結し、境目がなくなるようなところにも惹かれた気がします。物語に登場するひとつひとつの生き物にも可愛さと不思議な魅力があります。
次第に「どうやって作られてたんだろう」ということにも興味が出てきて、メイキング本にも夢中になりました。例えば馬が沼に沈むシーン。最初は本物の馬を使い、途中からは偽物の馬をエレベーターみたいなもので沈めていくんです。CGがない時代にそういう特殊撮影をしていたことや、舞台の設計図、セットのスケッチにも、すごくワクワクしました。

少女時代の美雨さんがワクワクしている様子が目に浮かびます。メイキング映像もよくご覧になるんですか?

坂本
はい。作られた過程を見るのが好きなんです。例えば宮崎 駿監督のドキュメンタリー番組みたいなものもすごく好き。作り手の思いと繊細な仕事のひとつひとつが合わさって、大きな芸術を生み出すということに、小さい頃から興味がありました。美術さんや衣装さんなどいくつもの専門分野があって、それぞれがその分野を突き詰めている。そこがかっこいいと感じていたんですね。

観る人の人生に何かプラスになる映画に関わりたい

映画に関わる専門家の中でも、特に音楽家の仕事は気になるのではないでしょうか。

坂本
やはり音楽にパッと耳がいくし、音楽によってすごくエモーショナルになるというか、気持ちを持って行かれます。音楽に泣かされることも多くて。好きなミュージシャンがサントラをやっているというだけで観ることもあるんです。最近、音楽が良かったと言えば『Call Me By Your Name』(邦題:君の名前で僕を呼んで)。好きな作曲家が関わっていることもあって観たのですが、たまたま父(坂本龍一)の曲も2曲ほどサントラに入っていました。

クレジットを先にチェックすることもあるんですね。

坂本
そうなんです。アイスランドの作曲家オーラヴル・アルナルズや、シガー・ロスのヨンシーが関わっていると「間違いないだろうな」って思います。もちろん私自身も音楽で映画に関わっていきたい。できればハッピーエンドの作品がいいですね。大変な思いをして、お金をかけて映画を作るからには、観る人の人生に何かプラスになるものじゃないと。そういう作品であれば、声をかけていただいたり、関われたら嬉しいですね。

6月に開催されたSSFF & ASIA 2018では審査員を務めた。

映画の魅力とは、さまざまな人生に触れ視野が広がること

お子さんにも積極的に映画を見せていきたいという思いはありますか?

坂本
そうですね。自宅にジブリ全集などが置いてあり、彼女が自由に好きなものを選んでいます。トトロと魔女の宅急便、ポニョばっかり観てますよ(笑)最近はメリーポピンズも好きかな。最初はジブリから始めて、次にラスカルとかディズニー辺りを攻めていこうかなと。
同じ作品を繰り返し観るというのは、好きなものが体に染み込んで行く感覚があって、とてもいいと思うんです。新たな何かを発見したり、急に違うシーンが好きになったり、だんだん歌の歌詞を覚えてきたり。いい映画は何度見ても飽きないですよね。

「地球を救え!部門 supported by リンレイ」の作品も一緒にご覧になったのでしょうか。

坂本
私が観ているそばで遊んでいて、気になる作品が流れると彼女も画面に見入っていましたね。特に『シロクマとグリズリー』を夢中で観ていました。あの作品は、キャラクターが可愛いし絵の質感も良くて。今回、意外とアニメーション作品が多かったのですが、環境問題のようなテーマの場合は子どもに働きかける切り口が必要ですよね。これから地球を何とかしていくのは子どもたちの世代ですから。

『シロクマとグリズリー』(原題:Poles Apart)/ Paloma Baeza監督 / イギリス

子どもの頃に映画を観て感じたことが、その子の考え方や生き方に繋がっていくということでしょうか。

坂本
幼い頃から映画を通じていろんな人生に触れる瞬間を重ねていくことで、「私はこう思う」「こうは思わない」といった、自分なりの価値観が固まっていくと思うんです。例えば第二次世界大戦下のユダヤ人迫害(ホロコースト)をユダヤ系イタリア人の親子の視点から描いた『ライフ・イズ・ビューティフル』を観れば、「親の究極の愛って?」と考えるかもしれません。抑圧する人とされる人、いろいろな人間が様々な状況下に置かれたときにどういう行動をするのかで、人間のあり様を考えさせられるかもしれません。そんな機会を作るのも映画のひとつの役割ですよね。

お嬢さんがもう少し大きくなったら、どんな映画を見せたいですか?

坂本
小5くらいになったら『戦場のメリークリスマス』を見せたいです。音楽の良さはもちろん、「じぃじはこういう仕事をしてたんだよ」ということも伝えたくて。あの時代に、軍隊の中で本当の自分を出せない環境にいた人々の苦悩、でも見えてしまう人間臭さみたいな部分も、5年生くらいなら感じとれるんじゃないかな。もしかしたら、「主演のデヴィッド・ボウイ、カッコイイね」くらいかもしれないですけど(笑)

最後に、坂本さんにとって映画とは何でしょう。

坂本「世界がいいところだと感じられるもの」であり、「人の愛や力強さを教えてくれるもの」です。日常生活を送る中では出会えない人の人生に、映画を通して触れられるわけじゃないですか。知らない国の、知らないカルチャーの、他のお母さんのすごい一言とか優しさとか。普通に生活したら着目しないことや、出会えないことにふっと出会える。そこが映画のすごいところですよね。

取材:雨宮 あかり
撮影:吉田 耕一郎
構成:大竹 悠介

坂本美雨(さかもと・みう)

971月、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義で 「The Other Side Of Love」を歌いデビュー。 最新アルバムは、201612月にリリースした、聖歌隊CANTUSとタッグを組んだ 「Sing with me Ⅱ」(坂本美雨 with CANTUS名義)、また、シンガーソングライターの おおはた雄一さんとのユニット「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」として、全国様々なフェスなどに出演したり、大ファンだった小室哲哉さんとは日本だけでなく台湾、上海などでもライブをする等活躍中。音楽活動に加え、2011年より、TOKYO FMを始め全国ネットのラジオ番組「ディアフレンズ」の パーソナリティを担当中。

また、2014年初の著書「ネコの吸い方」を刊行、大きな話題となるなど、マルチに活躍中。 2015年第1子出産、仕事と育児と奮闘中。

OFFICIAL blog:のらネコよ、ちょっとお寄りよhttp://ameblo.jp/miu-sakamoto/

OFFICIAL TWITTER:  http://twitter.com/miusakamoto (@miusakamoto)

OFFICIAL HOME PAGE: http://www.miuskmt.com/

 

Writer:雨宮あかり(あめみや・あかり)

編集者/アロマセラピスト。
高校生の頃に観た『Stand By Me』をきっかけに映画雑誌の編集者を目指すも、女性実用の出版社に就職。雑誌編集者としてファッション、美容、音楽、育児など、女性の生活に関わる幅広い分野の記事を企画制作。3人目の出産後、心と体への興味が高まり自然療法の資格を取得。メディアとパーソナルケアの両面で女性のサポートを続けている。人の生き方や思いを聴くのが好き。  

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