【映画にみるインテリア】映画にみるインテリア
〜 Interior Design In Cinema 〜 vol.19

ショートフィルム『Fár /小さな衝突』

本来は日本も自然の脅威に常に晒され共存しているはずですが、都市部に暮らしているとつい忘れてしまいます。人間に都合の悪いものは次々と排除され、隠されているように感じます。それはアイスランドも同じようで、第1週目に配信された『Fár /小さな衝突』はそんな背景から生まれた映画です。

5分13秒のショートフィルム。今まで私がみた中で一番短かったかもしれません。それでも緩急をつけた表現力で、作品にグッと引き込まれました。おもしろいと思ったのは、画面の色彩が白、グレー、青系のグラデーションで構成されていたこと。視覚的ノイズが少ない分、意識は音に集中していたように感じました。衣装や映画美術で観客の意識をどこに向けるのかをデザインしているんだ！とちょっと感動！ものづくりの世界は面白いです。かもめの白、曇り空のグレー、海や空、人間の眼のブルー、肌や髪の色のブルネットやゴールド、そういう自然を連想する色だけで構成されたカラーパレットは美しく、インテリア的にも真似したくなります。

ショートフィルム『季節をめぐる小さな家/ Nest』

今月はもう一本ご紹介させてください！こちらのショートフィルムは定点カメラである家族を１８ヶ月にも渡って観察したドキュメンタリーです。もう好きすぎて、見終わってしばらくは思い出して「ふふっ」って一人で笑っておりました。

定点は監督の家の前、大草原の向こうには海、そのまた向こうには雪山も見える「ザ・アイスランド」な土地に一本古い電柱のような丸太が立っています。そこに歩いて帰ってくる３人の子供達がこの作品の主人公、監督の家族のようです。

しばらく丸太を観察していると、そこがどんな場所かわかります。海と風、馬や渡り鳥の鳴き声しか聞こえない、周りに家もないような所です。そしてある日突然彼らはその丸太をボキッと折って、鉄骨で作ったフレームを重機で上から突き刺し、ツリーハウスを作り始めるのです。

もう本当に痛快で、しかもこちらはただただみているだけなので、工事がぜんぜん進まないなー、とヤキモキしたりもします。進まないツリーハウスをそれでも子供達はたくましく使って遊ぶのですが、ドキュメンタリー、定点カメラだからこそ撮れる嘘みたいな光景がみられます。

きっちり計算して作る映画もおもしろいのですが、こちらの『季節をめぐる小さな家/ Nest』は子供達のたくましさ、人間の営みそのものを祝福しているような、とっても幸せな気持ちになれるショートフィルムでした。

アイスランドで行われたある運命の一日のドキュメンタリー『女性の休日／THE DAY ICELAND STOOD STILL』

© 2024 Other Noises and Krumma Films.

今回はインテリアアイテムではなく、映画の紹介です。実はアイスランドって世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数で16年連続第１位のすごい国なんです！もちろんずっとそうだったわけではなく、1975年10月24日に行われた、あるムーブメントがきっかけだと言われているそう。この映画はその伝説的な１日「女性の休日」に焦点を当てたドキュメンタリー。今回アイスランド特集ということでぜひこちらをご紹介。京都は11月7日からロードショー。男女問わずみてほしい映画です。ちなみにジェンダーギャップ指数で日本はなんと118位、改めて聞くとわたしたちは結構大変な国で生きているんだと実感します。