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May. 26, 2026

【映画にみるインテリア】映画にみるインテリア
〜 Interior Design In Cinema 〜 vol.26

京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。

このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対し、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。

毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。

気持ちのいい季節になりました!京都の我が家は間口が狭く奥行きは長い、いわゆる「うなぎの寝床」です。それでも家の前には同方向にのびる道があり、背面にも駐車場があることで、この季節だけ風が吹き抜ける気持ちよさを感じることができます。夏になると風、というより空気が動かなくなるので、この時期が一年で一番快適!ずっと5月ならいいのに…。

今月のショートフィルム『水のささやき / The Water Murmurs』

今月はカンヌ特集、ご紹介するのは2022年カンヌ映画祭で短編パルムドールを受賞した作品です。監督は中国出身の映画監督チェン・ジエンイン(Jianying Chen)、次世代のアジア人女性映画監督として注目されています。

<ストーリー>
隕石衝突の影響で海底火山が噴火し、川沿いの町は水没の危機に直面する。避難前日、ニアンは幼なじみに別れを告げに向かう途中で町の人々とすれ違い、失われゆく故郷の記憶を胸に刻んでいく。

ひとことでいうと「ものすごい湿気を感じる映画」でした。
静かに、しかし着実に上がる水位、雨も続き、空気もつねに湿っているようです。人がいなくなり、山が建物内に進出することで、植物がもつ湿気も霧となって充満しています。

「隕石衝突」というSF的な設定ではありますが、描かれているのは自然を前にして無力な人間の姿と営みです。死にゆく街を出て生き延びようとする人と、抗うことを止め受け入れる人。奇しくも先月と同じく「隕石衝突」ですが、受け止め方、描き方はさまざまだと感じました。批評家からは「タルコフスキー的(静謐で詩的な映像美)」とも評された作品だそうで、切なくて余韻がのこるうつくしい短編映画でした。

今月の映画『スワロウテイル』

『水のささやき / The Water Murmurs』で人のいなくなった廃墟を見て思い出したのが『スワロウテイル』でした。1996年の日本映画、『Love Letter』で注目を集めた岩井俊二監督、二作目の長編映画です。

(C)1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

ひさしぶりに見返してみたら、全然廃墟ではありませんでした(笑)。美術を手掛けたのはこちらでも何回かご紹介させていただいた種田陽平さん、架空の街「円都(イェン・タウン)」は九龍城の写真集『CITY OF DARKNESS』から着想を得たそうです(注)。

当時学生だった私にとって、遊んでいた都内のすぐそばに、知らない街「円都(イェン・タウン)」が存在するというパラレルワールドは衝撃的でした。さらにそこには中国語、英語、日本語をごちゃまぜにして会話する「円盗(イェン・タウン)」という移民たちが暮らしている!実際の撮影も、有明や新浦安、鶴見など都心と付かず離れずの距離で撮影されていて、セットの向こうに見えるリアルな景色に親近感が沸きました。

私はいわゆる氷河期世代で、バブルの喧騒は先輩から聞く世代ですが、この映画が作られたアフターバブルの時代に、都心で泥臭く暮らす円盗たちが最高にカッコよく、たくましく見えました。そこに暮らす人間が街と共に変容し、作用し合うような、そんな時代だったのかもしれません。

家というのはもちろんですが単体で存在するものではなく、窓から何が見えるか、廊下から誰の声が聞こえるか、どんな匂いがするのか、あるいはしないのか、それらすべてが形作っているものだと思います。
外からの影響を怖がらずに受け止め、利用する。そんな空間作りも面白いんじゃないかな、と感じます。

注:『ホットセット』種田陽平 美術監督作品集 メディアファクトリー

種田作品好きにおすすめしたい、柄物壁紙。現代の輸入壁紙だとちょっとおしゃれになっちゃうけど、異世界を作り出すためにはぜひトライしていただきたいアイテムです。

Writer:DECO-TE

京都で家族+猫2匹と暮らすインテリアコーディネーターです。 はじめてハマった映画は『ダーティ・ダンシング』、ビデオテープが擦り切れるほどみて研究し、高校の体育の授業では創作ダンスも披露しました。 好きな映画は一時停止しながら何度も見るのが好き。お部屋の細部をみながら、その人の人生や生活を想像して楽しんでいます。

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