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MAGAZINE
COLUMN
Sep. 25, 2018

【てくてくシネマ散歩】@ストックホルム
~日本からショートフィルムを携えて出かけてみたら~

「北欧」「スウェーデン」で連想するものといえば、自然、デザイン、インテリア。イメージ通り、スウェーデンの街並みや日常には素敵なものたくさんあります。けれど、それ以上に、ささやかな日々を彩り暮らしを楽しむヒントがあると思います。

2009年にショートショート フィルムフェスティバル & アジアでスウェーデンを特集して以来、スウェーデンの文化や暮らしに魅せられた筆者が、今回3度目のスウェーデン滞在で出会った日々のかけらをお届けします。

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スウェーデン人は短い夏を屋外で楽しむ

北のヴェネチアと呼ばれることもあるスウェーデンの首都ストックホルムは、まるで水の上に浮いているように、数多くの島からなる街。本当に自然が豊かで遠くまで行かなくてもピクニックやランチにぴったりの広場や公園、ガーデンがたくさんあります。ゆったりと思い思いに家族や友人と夏のひと時を過ごす人々の様子を見ていると、日々の喧騒を忘れてしまいます。

今回、ストックホルムから列車で約1時間半のNorrköpings(ノルショーピン市)で開催した現地映画祭との提携イベントでも屋外で日本作品を上映しましたが、皆さん自宅からブランケットや折り畳みのイスを持参していて、それだけ屋外で過ごすことが身近なのだと感じました。

スウェーデンでは、北欧の長い冬を快適に過ごせるように、室内のインテリアを工夫したりキャンドルを灯したり、屋内装飾の文化が発展したと言われています。その反対で夏の間は、日本人からすると少し肌寒いディナータイムにも、皆こぞってテラス席を陣取り、短い夏を謳歌します。

初めて訪れた時、レストランの屋内が空っぽでテラス席が満席のお店ばかりでビックリしたのを憶えています。街を歩くと、おしゃれで快適そうなテラス席や居心地の良さそうな内装のお店が数多く並び目移りしてしまいます。

インテリアが素敵なのは自宅だけではありません。オフィスのラウンジの使い方にも注目です。現地の映画祭チームのオフィスにお邪魔したのですが、シンプルながらに居心地のよさそうな空間づくりをされていたのが印象的です。「フィーカ」と呼ばれるコーヒーブレイクの習慣が有名ですが、きっと休憩時間も仲間と過ごす大切なひと時なのでしょうね。

環境にも優しいマーケット「ロッピス」を楽しもう!

福祉国家としても有名なスウェーデン。父母で合わせて480日分の育児休暇が付与され、子どもが8歳になるまでの間にそれぞれのライフスタイルに合わせてお父さんも育児休暇を取るのが当たり前になっています。映画祭関係者でも育児休暇を取った男性に何人も出会いました。平日にベビーカーを押しながら散歩をして、子供たちと過ごす時間を持つパパ達の姿を見かけるとほっこりした気持ちになり、少し羨ましくなります。

環境を大切にする習慣が根付いているスウェーデンでは、ゴミの1パーセントしか埋立地に送られず、古いものを修理して長く使ったりリサイクルしたりすることがとても身近です。他国からゴミを輸入してリサイクル処理を行っていると報道されたほどで、ロッピスと呼ばれるフリーマーケット、セカンドハンドショップやアンティークのお店もたくさんあります。Norrköpingsの映画祭イベントでも週末にロッピスが開かれ、街の人たちが不要になった衣類などを出品して賑わっていました。こうしたお店ではその時その瞬間にしかない一点ものや、思わぬ堀だしものと巡り会えたりと一味違う楽しいひと時を過ごすことが出来ます。

デザインとアートを訪ねる旅

ストックホルムを訪れる方にお勧めの場所を少しご紹介。アルヴァ・アアルトやアルネ・ヤコブセンなど世界的建築家に多大な影響を与え、北欧モダンの父とも呼ばれる、スウェーデン建築家グンナール・アスプルンドが手がけた市立図書館です。

足を一歩踏み入れるとそこには観たことのないような時空を超えた知の殿堂が広がり、何度訪れても言葉を失ってしまいます。この図書館の不思議な魔力を実際にその場に立って感じて頂きたいです。市内の中心部からほど近くアクセスしやすい場所にあるので、機会があればぜひ。

また、同じくアアルトが手がけた「森の墓地」という世界遺産もストックホルムからほど近い郊外にあります。
(公式サイト:https://skogskyrkogarden.stockholm.se/in-english/
針葉樹の森に抱かれる静謐なこの場所は、どこまでも静かで時が止まっているような神秘に包まれていますが、でも不思議と哀しくも寂しくもなく、心穏やかになってしまう温かい場所です。以前訪れた際にいつか眠りにつくときはここに埋葬されたいと本気で思ったものです。

ストックホルムの地下鉄はまるで美術館のようにアート作品で彩られていているところが少なくありません。観光客が立ち寄ることの多い中央駅T-Centralenもその一つ。思わず「わぁ」と声をあげたくなるような作品が駅の天井で出迎えてくれます。私も全てを見たことはないのですが、市内に10か所以上にいろいろな作品があるそうですので、途中下車して駅廻りをするのも楽しそうですね。

建築や街なみだけではありません。スーパーにも「かわいい」が隠れています。牛のマークが印象的なミルクのカートンや、クネッケと呼ばれる定番のクラッカーのような堅いパン、シリアルのパッケージなどに心を掴まれてしまいます。

ちょうど今回の滞在中に、北欧初のユニクロがストックホルムにオープンしてニュースになっていましたが、その紙袋も北欧オリジナルで素敵なデザインでした。ちなみにそのユニクロに勤めている知人に聞いた話で印象的だったのが、日本と同じサービスを提供するという意図で、両手で商品を手渡すことなどを徹底しているそうです。海外でも大人気のユニクロが、北欧でどのように受け入れられ、文化が融合していくのか、これから楽しみです。

文化から始める国際交流

今回現地でのイベントで日本の作品を紹介した際、たくさんのお客さまから『日本に行ってみたくなった』と声をかけて頂きました。自分自身も北欧やスウェーデンに心惹かれたきっかけはショートフィルムでしたし、2000年に日本で公開された『ロッタちゃん はじめてのおつかい』(原作は宮崎駿が映画化を熱望した『長くつ下のピッピ』のアストリッド・リンドグレーン)や、音楽もABBAはもちろん90年代に世界的ブームを起こしたカーディガンズにスウェーデンの歌姫と呼ばれたメイヤ、と実はスウェーデン発の文化が昔から好きだったと、後から気が付きました。

人々の暮らしや価値観やスタイル、デザイン性、インテリアに音楽と多種多様なそれぞれの国の文化というものを、視覚的・感覚的に届けてくれるのが映画なのだと改めて肌で感じました。

スウェーデンに限らずショートフィルムを通して日本をその文化や風土、新しい才能や感覚を世界中に届け続けていくこと、またその逆を世界中の作品を通して日本に紹介すること、この二つを大切にしたいと思ったスウェーデン滞在になりました。

Writer:田口恵里(たぐち・えり)

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア フェスティバルマネージャー
アメリカ留学中にサンフランシスコ国際映画祭にインターンとして参加し映画祭の魅力に開眼、帰国後からSSFF & ASIA事務局に参加し今年で15年目。今大切にしていることは、ショートフィルムが担うアートの可能性と日本作品の海外発信の先にあるもの。
好きなことは旅とアートとヨガと雑貨 (特にアンティーク) ・古着屋さんめぐり。

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