京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。
このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対して、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。
毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。
みなさま、あけましておめでとうございます!今年も「映画にみるインテリア」コラムをどうぞよろしくお願いいたします!
神社仏閣の建ち並ぶ京都ですが、ものぐさな我が家は歩いて30秒ほどのところにある近所の神社で初詣をさせていただきました。10年ぶりにおみくじで大吉が出たり、初めて作った栗きんとんが好評だったりして、充実したお正月を過ごすことができました。日本のお正月、サイコー!
今月は午年にちなんで「馬」が物語のモチーフとなるショートフィルム、そして、1月の1から「ワンカット」で撮影されたショートフィルム(「午年・1月の“ワンカット”セレクション ~行方を照らす“馬”とカメラが見つめる物語」)がセレクトされています。そんなバラエティあふれる作品の中から、今月は『父ありき / Still is』をご紹介させていただきます。
あらすじ-
ある家族の何気ない朝の風景をワンカットで描いた作品。据え置きカメラで撮られた映像を見つめ続ける中で、観客は、この情景に潜む秘密に気付いていく。
この映画、最初から最後までカメラを止めずに撮影する「ワンカット」と、カメラを一点に据えつけて撮る「定点カメラ」で撮られています。あまりにも日常的すぎる家族の風景とダイニングの手前の部屋に置かれ微動だにしないカメラのために、観客は息をひそめて覗き見している気分になります。
このショートフィルムは映画美術的に素晴らしいなーと思いました。もし奥が壁だったら画面は暗くなり、閉塞感のようなものも感じたでしょう。でもダイニングが奥のリビングにつながり、正面の大きな窓からもたっぷりと光が入ることで、(ちょっと首をかしげたくなる家族のふるまいにもかかわらず)暗さのない家庭に感じられます。しかも途中の壁が濃紺に塗られていることで視線はリビングに流れず、フレームのようなやわらかさで受け止めてくれています。
実はインテリアを考えるときも視線は重要視されます。誰がどこからなにを見るか、ってことをきちんと考えておくと、ワンランク上の印象的なお部屋にすることができますよ。視線に着目して改めて家を見直してみると、新年の模様替えのアイディアが生まれるかもしれません。
(C)Netflix
Netflixの映画が続いてしまい申し訳ないのですが、ワンカット撮影で衝撃を受けた作品といえばこちらです。そしてこちらも家族の物語、とりわけ「父」「父性」がテーマの物語でした。
映画は刑事と思われる男性の家庭的なエピソードから始まります。早朝からパトカーで張り込みをしている様子の彼は、同僚の女性に息子の愚痴をこぼしています。そんな中無線で準備が整ったことが伝えられ、住宅地で数台のパトカーを引き連れてある一軒家に突入します。踏み込んだ先には戸惑い怯える母親と父親、「2階に子供達がいるから(驚かさないで)」と叫ぶ二人を制止して突入隊が踏み込んだのが13歳の息子の部屋。壁紙に宇宙のようなイラストが描かれた、まだ幼い頃のままの男の子の部屋です。
(C)Netflix
そもそも「ワンカット撮影」にどんな効果があるのか調べてみたところ、役者の動きとカメラワークをすべて決めてから一気に撮るため、緊張感や臨場感が出しやすい手法なんだそう。役者もスタッフも緊張するだろうし、そんな空気感まで伝わってくるのかもしれません。私は映画の撮影にどんな準備が必要で、どんな工程で撮られるのか知りませんが、ワンカット撮影が途方もないものであることは想像できます。しかもこの『アドレセンス』は4つのエピソードからなり、1話が1時間ほどあるんです。
どうしてそれほどの手間をかけてこの映画が撮られねばならなかったのか。改めてみてみると、やはりその意味はすごく感じられます。常にある不安と混乱、どうしてどこにでもいる平凡な、愛すべき息子が逮捕されなければならないのか、現実を受け止めきれないまま対処を求められる父親。息子と同じ年頃の子供から事情を聞き出さないといけない刑事、まだ少年のあどけなさを残す彼から犯罪に至った深層心理を引き出そうとする心理療法士。次から次に展開される目の前の状況に、当事者として関わっているような気にさせられました。
(C)Netflix
「ワンカット」という、映画の撮影テクニックから改めて映画をみてみるのも面白いですね。いつもテーマを考えるのは大変なことだと思いますが、今年も「ブリリア ショートショートシアター オンライン」さんのセレクトで多様な作品と出会えることを楽しみにしております!
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↑『父ありき / Still is』でダイニングにラグが使われているのもいいな!と思いました。小さいお子さんがいるうちはよごれが気になりむずかしいかもしれませんが、ラグを敷くとリラックス感が増し、見た目にも引き締まり、居心地のいいダイニングになります。こちらのラグはTBSドラマ『フェイクマミー』のダイニングにも敷かれていたようです。