京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。
このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対して、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。
毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。
今月は待ちに待った食特集!食は人生そのもの。人生の数だけ、食がある。それが1日に3回もあって、一生続いていく。「泣きながらご飯を食べたことがある人は、生きていけます」なんていう名台詞もありましたね(『カルテット』)。食が主役でも脇役でも、人生を語る映画に食は欠かせない存在です。
食をテーマにしたドラマには、「作る人」に焦点を当てたシロさん型(『きのう何食べた?』)と、「食べる人」を描くゴローさん型(『孤独のグルメ』)とがあります。私はどちらかというとゴローさん型にときめきます。孤独に食が楽しめるのは、あの強靭な胃があればこそ。彼らをみていると、享受できる幸せの数が私より多い気がして羨ましく、でも胃を酷使せずとも美味しさを分けてもらえたようで嬉しくなります。
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そんなゴローさんにときめく私がおすすめしたいのが、同じく強靭な胃を持つトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)が主人公の『グリーンブック』です。舞台は1962年のアメリカ、トニーはニューヨークブロンクスに住むイタリア系移民です。映画ではイタリアにルーツを持つ人たちのコミュニティと食の豊かさを垣間見ることができます。
アカデミー賞も受賞しているこの作品、多くの方がご存知かもしれませんが、メインのテーマは人種差別です。60年代のアメリカ南部は特に人種差別が激しく、「グリーンブック」と呼ばれる黒人専用の旅行ガイドブックが存在しました。
ナイトクラブで用心棒として働いていたトニーですが、クラブの改装に伴い急遽別の仕事を探さなくてはならなくなりました。そんな彼をアメリカ南部をめぐるコンサートツアーの用心棒兼運転手として雇ったのが、黒人天才ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)。
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彼が住むのはカーネギーホールの屋上で、骨董品やアートに囲まれたアパートメントはため息ものです!映画のモデルとなった実在のドン・シャーリーも50年間カーネギーホールの上に住んでいたそうで、それだけで映画にぴったりのエピソードですよね。
彼の家は美術的には素晴らしいのですが、同時に彼の孤独や玉座に座り虚勢をはっているようなよそよそしさも感じられます。
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そんなドクター・シャーリーの家と対照的なのが、トニー・リップが愛する奥さんと子供達と暮らす家。家にはいつも誰かしらが集まって、テレビを見たりご飯を食べたりにぎやかなお家。これぞイタリアの家族!といった光景です。
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この映画、見どころが多すぎて、語り出したら止まりませんが、そもそも私が言いたかったのは、トニー・リップの食べっぷりがいいこと!なにせホットドッグの大食い競争で50ドルを稼いでくるトニー、彼がモリモリ食べる姿にこちらまで胸がスカッとします。車で食べるケンタッキーフライドチキン、二人の距離がグッと縮まる大切なシーンです。お馴染みのバケツに入った山盛りのチキンにかぶりつくトニーと、生まれて初めてお行儀悪く食べるドクター・シャーリーの楽しそうな様子にこちらまで笑顔になります。何度でも見たくなる名作です。
そんなしあわせな映画がもう一本、とにかくみんなのハッピーな笑顔に癒される『サークル・オブ・ドーナツ/ Circle of Donuts』。『グリーンカード』と同時代、1964年に創業した”Bob’s donuts”はサンフランシスコにある24時間営業のドーナツ屋さんのドキュメンタリー。日本人監督によって撮られたこのショートフィルムは、同じく日本人で義理の両親からこのお店を継いだオーナーへのインタビュー形式で撮られています。
観るだけでしあわせになれる映画です。アメリカ人のいい部分が集まって、輪っかになってつながっているような。美味しいもの、甘いもののまわりには悪い人は寄ってこないのかなー、と思っちゃうような。人種も職業も貧富も関係なく、ただ「ドーナツを食べる幸せ」を分かち合う人たちに会えます。ぜひご覧ください。
https://www.instagram.com/densetsu.asagohan/
最近いちばんみてる「伝説の朝ごはん」。食の達人たちの食べっぷりがいい。「パワフルな人はよく食べる」、これは間違いないです。編集もリズミカルで、何十年と繰り返されたであろう「ルーティーン感」が伝わります。特に好きなのは準備から味わう、片付けるまでをひとつの型にしていること。最後まで自分で、って大事なことです。