京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。
このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対し、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。
毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。
とにかく不思議な作品。ジャンル的にはサイエンス・フィクションと説明されています。製作国はフィリピン・アメリカ・シンガポールで、2024年の作品です。ちなみにタイトル『Vox Humana(ヴォックス・フマーナ)』はラテン語で「人間の声」という意味だそうです。パイプオルガンやシンセサイザーの音色にも名付けられています。
<ストーリー>
地震の直後、警察は森の中で1人の男を発見する。小さな山間の町を襲った自然災害はすべて、この男が元凶かもしれない。動物学者、録音技師、取材班たちが、その真実に迫る。
どうして自然災害の元凶が人間なのか、その謎を解くために集められたのがなんで「動物学者」「録音技師」「取材班」なのか、とにかくずーっとはてな?のまま物語は進んでいきます。都会的な装いの彼らと大自然の対比、謎解き的なストーリーとは距離を置いて自然の音を採取し続ける録音技師、解明できないことをそのままにしておくことになぜか気持ちよさを感じました。
観終わって、不思議な印象が残ったまま(どうやってお伝えしようかなーと悩みながら)2日ほど過ごしていたのですが、今日ふと、デヴィッド・リンチ監督の世界観に通じるものがあるんじゃないか、と。説明不可能なものをわからないままにしても先に進みたくなるのは、謎があるから。本当に災害と男性が関係してるのか。彼は誰で、彼らが話している言語はなんなのか。カメラがほとんど動かず、特定のものをじっと追い続けるカメラワークも、観ている側に説明できない不安感を感じさせます。
こんな風に、形にならないようなものをストーリーにする才能に驚きます。監督はフィリピン人のドン・ジョセフス・ラファエル・エブラハン、先住民族であるイフガオ族(Ifugao)とビサヤ族(Visayan)の血を引いているそうです。大自然と人間との共生や、もしかしたら人間がもつ根源的な恐怖みたいなものも描いているのかな、と思いました。容易にはカテゴライズできない作品です、ぜひご覧ください!
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そんな事情でとり上げたくなったデヴィッド・リンチ。今月のショートショートシアターオンラインは七夕にちなんで「退屈な世界から宙(ソラ)へ - mystery of stars and nature」特集で、デヴィッド・リンチの作品の中では「もう一度、兄と一緒に星空をみたい!」とおじいちゃんがトラクターで旅にでる『the straight story』なんかピッタリなんですが、なにせこれはインテリア解説コラムなのでロードムービーはつらい。というわけで『マルホランド・ドライブ』なんていかがでしょうか。
わたしはこの映画を2回観ました。好きというよりはわからない、わからないけど気になる。多分そんなところだと思います。今回記事を書くために3回目を観たわけですが、年齢を重ねたことで、だいぶ納得感がありました。わからないものはわからないままでいいと思えたし、人がときに一貫性のない生き物だということも受け入れられた、というか。
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女優になることを夢見て、カナダの田舎からハリウッドに出てきたベティ(ナオミ・ワッツ)が「素敵!」と目を輝かせるのは、憧れの女優をしている叔母の家。テラコッタの壁、タイル張りの床やキッチン、暖色で構成された南欧カントリースタイル。テラコッタは1990年代から2000年にかけて世界的に流行したそうで、大学生だったわたしにもぼんやりと渋谷や代官山でテラコッタを見かけた覚えがあります。
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ちなみにインテリアでは土着的、プリミティブなものが近年改めて見直されていて、テラコッタも再燃しています。温かみの中に力強さも感じさせる稀有な素材がアフターコロナに求められているようです。
『マルホランド・ドライブ』、構成が複雑なのでちょっと下調べしてからみると、より楽しめると思います!
現代のテラコッタ。表面は平滑になり、モダンな家具にもなじみやすいようなカラーバリエーションでデザインされています。