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Aug. 19, 2026

【Creator's File】『雨上がりのパレード』 フー・タン・チャン監督 インタビュー

映像クリエイターとショートフィルムの繋がりを様々な角度から深掘りする「クリエイターズファル」。

今回ご紹介するのは、BSSTOで配信中の『雨上がりのパレード』(原題:Last Rain On My Parade)を手掛けたフー・タン・チャン(Huu Thanh Tran)監督です。

映画祭と連動するクリエイターのためのプラットフォーム「LIFE LOG BOX*」に作品をご登録いただいたことから、今回の配信が決定しました。作品制作の背景や撮影時のエピソードとともに、クリエイターとしてLIFE LOG BOXをどのように活用できるかについて、監督にお話を伺いました。

*LIFE LOG BOXとは:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア、そして株式会社ビジュアルボイスが2023年にローンチした、永続的に保存可能なデータストレージやポートフォリオ機能を備えたクリエイターのためのプラットフォーム。新しい仕事やマーケットプレイスでの収収益獲得を目指し、コンテンツやクリエイターの価値を最大化するサービス。

<監督インタビュー>

LIFE LOG BOXへのエントリーが今回の配信に繋がりましたが、最初にこのプラットフォームを知った時の第一印象をお聞かせください。
インディペンデントの映画監督にとって、非常に多機能で大きなメリットがあるプラットフォームだと感じました。映画祭への作品応募から制作前の資料の保管、そして完成した作品の一般配信まで、すべてを一元管理できます。私のようにテクノロジーにあまり詳しくない映画監督にとっても、素晴らしく実用的なツールです。

作品が「一過性のもの」にならず、安全に永久保存され、世界中のマーケットと繋がり続けるという安心感や可能性は、監督の創作活動にどのような変化をもたらすと思いますか?
映画祭での上映期間が終わると作品が忘れ去られてしまいがちであることを考えると、とても便利でありがたい機能だと思います。映画製作者自身だけでなく、作品そのものがより長い寿命を持てるようになるため、新たな機会が確実に広がるはずです。

「こんな機能があれば、もっとクリエイターの日常が豊かになる」と期待するアイデアがあれば、ぜひ聞かせてください。
将来的にショートフィルムがより多くの観客を惹きつけ、もっと身近でアクセスしやすい存在になってほしいと願っています。そして、クリエイティビティや個々の声が最も純粋かつありのままに表現できる「ショートフィルム」というフォーマットに監督たちが専念でき、同時に持続可能な収入を得られるような環境が広がることを期待しています。

本作をつくろうと思ったきっかけは何でしたか?
ある日、サッカーベトナム代表が大きな試合に勝利した日に、サロンで髪を洗ってもらっていた時に思いつきました。施術が終わっても、街中が大祝福の渋滞(ストリート・ストーム)に包まれていて家に帰れなくなってしまったんです。その時、髪を洗ってくれた女性に目をやると、外で起きている狂騒に心底困惑している様子でした。「もし彼女が、あの怒号のような人ごみの真ん中に突然放り込まれたらどう反応するだろう?」と考えたのが始まりです。

雨の日だけに会う二人の関係性と、ベトナムのサッカー勝利による狂騒というコントラストが非常に印象的です。この物語の発想はどこから得たのでしょうか?
時間の「周期性」を強調したいと考えました。ベトナムは熱帯モンスーン気候のため、雨は自然の静かな営みのように規則的なリズムでやってきます。このリズムが、二人にとって言葉にしない約束となるのです。それとは対照的に、勝利を祝う群衆の熱狂は突然で、無秩序で、圧迫感があります。この予期せぬ出来事が二人の親密でロマンチックな空間を打ち砕くと同時に、二人の不確かな未来を暗示しているのです。

『雨上がりのパレード』(原題:Last Rain On My Parade)というタイトルに込められた意味や意図を教えてください。
英語の慣用句である「rain on someone’s parade(台無しにする、水を差す)」という表現をもとにした言葉遊びです。文字通り「雨」と「パレード(街頭での祝福の行進)」の両方が登場するこの物語に完璧に合致すると感じました。主語を変えてそのフレーズを自分のものにすることで、作品の物語に寄り添う個人的な意味合いを持たせました。

登場人物であるチャー(Tra)とトゥアン(Tuan)の設定についてお聞かせください。静かな洗髪師の女性と、日本行きを控えた年下の配車アプリドライバーという設定には、現代ベトナムのリアルな社会背景や若者の姿が反映されているように感じられます。二人の性格や関係性を描く上で意識した点は何ですか?
私自身、「人々(特に若者)がなぜ故郷を離れることを選ぶのか」という理由に深い関心を持っています。ベトナムの労働者階級の間には、「ジャパニーズ・ドリーム」という考え方が広く浸透しています。日本へ行けばもっと良い暮らしができると信じられているため、チャンスがあれば誰もが飛びつきます。一方で、現地に残る人々は、相手のより良い未来のためには「旅立つことが正しい選択である」と理解しており、愛する人がいつか戻ってくるのをただ待つのです。

「雨」とサッカー勝利による「街の狂騒」の演出的な対比について教えてください。人目を避けて「雨の日」だけに重なる二人の静かな世界と、雨期が明けた後の祝福に満ちた「狂騒の街」の対比が切なさを際立たせます。このロケーション設定や映像演出でこだわったポイントは何ですか?
都市環境においては、プライベートな空間が常に外部の騒音や混乱に侵食されています。街に暮らす人々にとって、騒音や光の公害は親密な時間を奪う要素になりがちです。そのため、本作では2つの空間の音風景(サウンドスケープ)と色彩表現の対比に強くこだわりました。一方は賑やかで鮮やか、圧倒されるような空間。もう一方はプライベートで静か、どこか哀愁を帯びた空間です。

実際の街の熱狂シーンや雨のシーンの撮影において、苦労した点や印象的なエピソードはありますか?
実は、あの「群衆」はスタッフの協力のもと、友人たちが乗るたった17台のバイクで撮影したものです。密集した大通りのように見せるため、あえて非常に狭い路地(ヘム)を選んで撮影しました。雨のシーンも同様に、狭く閉じられた角を選んで降らせています。撮影時期が乾季だったため、こうしたコンパクトな手法をとることで機材の管理や人工降雨のコントロールが格段にやりやすくなりました。

ラストシーンで、チャーが「彼が旅立つ前にもう一度だけ、一緒にあの歓喜の街へ飛び出したい」と願う感情の波についてお聞きします。甘酸っぱい別れと街の祝福ムードが交錯するクライマックスで、キャストへはどのような演出・指導を行いましたか?
キャラクターの自然な感情の選択を制限したくなかったので、あえて具体的な演技指導はしませんでした。ただ、主演女優には一つだけ秘密にしていたことがあります。それは「群衆の中で実際に彼を見つけられるかどうか」を彼女に伝えないでおくことです。そして、「何が起きても絶対に泣いてはいけない」というルールだけを課しました。役への深い没入感と感情の抑圧が重なったことで、最後の瞬間に爆発的な感情の解放が生まれました。カットがかかった後、彼女は大泣きしていましたよ。

劇中ではトゥアンの行き先として「日本」が登場します。日本の観客やBSSTOの視聴者に、特に注目してほしいポイントはどこですか?
先ほどもお話ししたように、ベトナムの若い労働者階級にとって、日本は一種の「ユートピア(すべてがより良い場所)」と捉えられがちです。それが正しいか間違いかを評価するつもりはありません。ただ私の意図として、若者たちが故郷を離れることで、母国にすでにあった美しくかけがえのない何かを犠牲にしたり、引き換えに手放したりしているかもしれないということに、観客の皆さんが思いを馳せるきっかけになればと思っています。

監督にとって「ショートフィルム」というフォーマットの魅力は何ですか?また、今後の創作活動への抱負をお聞かせください。
監督にとって、ショートフィルムは最も自由な創造の表現媒体です。非常に個人的で、時には少し不条理でさえある自分の「声」を表現することができます。今後は、個人的で静かな空間が徐々に失われつつある開かれた世界の中で、「愛」と「人々の移動・離散」を中心とした物語を引き続き描いていきたいと考えています。

Writer:BSSTO編集部

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
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