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INTERVIEW
Sep. 18, 2018

【FRONT RUNNER】二人にとって永遠に忘れられない場所になる。
カップルで過ごすオールナイト映画祭の仕掛人に聞く、映画体験の現在

キャンプ場や離島の廃校跡地など特別な場所を会場にして、一夜限りの映画上映会を企画する「夜空と交差する森の映画祭」。年に一回、こだわりの映画と空間で来場者を迎えるこのイベントが、今年は栃木県のサーキット場「ツインリンクもてぎ」で開催される。その特徴は、会場内に複数設けられたステージを巡る「フェス」イベントであることと、夕方に始まり翌朝終わるオールナイトイベントであることだ。
「夜空と交差する森の映画祭」で実現したいこととは何か。代表のサトウダイスケさんに聞いた。

映画のフェスを作りたい!25歳の挑戦。

10月6日(土)に開催される「夜空と交差する森の映画祭」ですが、はじめにサトウさんのご経歴と映画祭の成り立ちについて教えていただけますか?

サトウ
高校時代は放送部に所属していて、『桐島、部活やめるってよ』の主人公のように映画を撮っていました。大学時代には映画サークルを立ち上げて自主制作をしていて、卒業後は就職せずフリーの映像制作者として働いています。
学生時代の2012年くらいから映画の野外イベントをやりたいとずっと思っていて、2014年に初回の「夜空と交差する森の映画祭」を埼玉県長瀞町のキャンプ場で開催しました。そのあと、2015年と2016年は山梨県のキャンプ場で、2017年は愛知県の佐久島で開催しました。

サトウダイスケさん

初回を開催した当時の年齢は?

サトウ
5年前なので、25歳の時ですね。

屋外でやりたいと思った最初のきっかけは?

サトウ
ドライブインシアターというものがあると映画で観て知って、「行きたい」「やりたい」と思っていたんです。実は、「星空の映画祭」や「逗子海岸映画祭」など屋外で上映しているイベントはいくつかあったのですが、当時の私は知らなかったので「自分でつくってやろう」と。
そして、自分が音楽フェスに行った経験や、インディーズ映画を作っていることとくっつけて段々と企画になっていきました。「フェス」という形式でインディーズ映画を観られるエリアを作って、観てもらえる機会が作れたらなぁと。

「インディーズ」というところにこだわりがあるのでしょうか?

サトウ
自分みたいに映画を作っている人が沢山いるけれど、露出の場が少ないことが課題だと思っていました。YouTubeに載せるっていう手段もあるんですが、それだと興味のある人にしか届かない。
音楽フェスでも目当てのアーティストを目的に行ったけど、サブステージに行ったらインディーズの音楽が凄く良かった経験が何度もあったので、映画でも全く同じことが起こせないかなと。そんな偶発的な出会いが大事だと思い、フェスという形式になりました。

恋人と二人でブランケットにくるまって観る映画

次に映画祭のコンセプトについて教えていただけますか?

サトウ
「空間を五感まるごとで楽しむ”映画体験”」です。さらに、その映画体験を「拡張」「文脈」「共有」の3つのキーワードに分けて作りこんでいっています。「拡張」は映画館ではなく屋外で観るなど、スクリーンを設置する場所を新しく広げていくということ。「文脈」は、ディズニーランドでいうところの、待っている列で感じる世界観のようなものです。映画を上映しているエリアまで何もないのではなく、徐々に世界観に入り込むような美術を作ったり、音を鳴らしたり、シャボン玉飛ばしたりと、いろいろ考えています。最後の「共有」は、その場に一緒にいて大勢の人と観るという、空間を共有するという部分ですね。

作品単体を楽しむというよりも、イベント全体の世界観を楽しんでほしいと。改めて映画館で映画を観ることとの違いは?

サトウ
映画館はノイズを無くす場所だと思っています。快適に観るために、椅子を座りやすくしたり、照明が気にならないようにしたり。一方で、野外映画など映画館以外での上映は、ノイズを楽しむ場所だと思うんです。外だと風とか街頭とか夜景なども含め楽しんでもらえます。なので、ノイズのバリエーションがあればあるほど、楽しみは増えるのではないでしょうか。

キャンプをしながら観る映画とか、おいしい食事と一緒に観る映画とか、新しい組み合わせで新しい楽しみが生まれますよね。

サトウ
「拡張」がどこで観るかなら「共有」は誰と観るかです。高校生の頃、初めてラジオで映画『エターナル・サンシャイン』の試写会が当たって、当時付き合っていた彼女と行ったんですけど、その時のシチュエーションを鮮明に覚えているんですよね。
「森の映画祭」はカップルが行きたくなるようなイベントを目指していて、デートに誘いたいイベントになれたらなって思っています。それが二人にとって永遠に忘れられない場所になればいいなと。オールナイトでありながら文化的なイベントですから、誘いやすい健全なイベントだと思います。ちょっと肌寒い時期なので、寄り添って観てもらえたらなぁって。夜は寒いので1枚のブランケットに二人でくるまって観ている人も結構いますよ。

同じ映画を同じ場所を共有して観ることで、ふたりの距離が縮まるという・・・。

サトウ
縮まりますね。一緒に朝焼けを見ますし、不思議な夜だった感が深まるのかなと。実際にお客さんにも「夢のような一晩だった」とおっしゃっていただけました。

今年の見どころは「交換するパンフレット」

今年の映画祭でこだわっているポイントはありますか?

サトウ
パンフレットの装丁は毎年こだわっているのですが、今年は「完成していないパンフレット」を作っています。リング式のノートのような形で、入り口では表紙と最低限の映画のスケジュールや紹介だけ渡します。事前にページのフォーマットをWEBサイトにアップしておいて、あらかじめお客さんにオリジナルのページを作ってきてもらったり、会場内に追加のページを持っている人がいて、積極的に声をかけてもったりする仕掛けを考えています。

パンフレットのプロトタイプ

お客さんがページを作るとはどういう感じですか?

サトウ
例えば、好きな映画を自己紹介帳みたいな感じで書いてきてもらって、ほかのお客さんとエクスチェンジするようなことです。名刺交換みたいに。A5サイズということだけ決めて、持っている人には話しかけてみようと。スタッフも僕も作って持っていきます。

新しいですね。

サトウ
今年の開催テーマが人間と人間の「交差」なので、出会いを物理的に残す仕掛けにできればと思っています。一人一人違うオリジナルのパンフレットになったらいいなと思っています。

今年の開催テーマは「交差」ということですが、その心は?

サトウ
多様なバックグラウンドを持つ人が集まる映画祭ですから、10月6日は普段は出会わない人たちが交差する点になると思うんです。そこでいろいろな出会いが生まれることを期待しています。

会場内に4つあるステージの名前も変わっていますね。「そのとき。」「いつか、」「それから、」「そして、」という接続詞がステージ名になっています。

サトウ
メインステージの「そのとき。」を中心に、時間軸として未来を見た「いつか、」と、ある点を過ぎてからの「それから、」と、「そして、」の4つのキーワードをステージ名にしました。

各ステージごとのキービジュアル

装飾も毎年かなりこだわって建て込みをしています。

サトウ
今年は交差点をイメージして信号機を置いたり、冒険っぽいエリアがあったり、メルヘンっぽい映画があったり、サーキットの目の前のステージがあったり、いろんなギミックがありますね。

会場となる「ツインリンクもてぎ」

「映え」ブームが去っても映画フェスはカルチャーとして残る

今年5年目を迎えますが、これまでやってきての手ごたえは?

サトウ
出品する監督たちが自ら意義を語ってくれるようになったことに手ごたえを感じています。僕たちの映画祭の特殊なところって、やっている内容がとてもマニアックなのに、来ているお客さんが一般の方だということです。自主映画やショートフィルムを観たことないような人たちで、映画業界の人がほぼいない。インディーズ映画を一般の人に観てもらう機会ってそうないですよね。
出品してくれている監督からすると一般の方に観てもらえる唯一の映画祭みたいな感じで、ずっと続けてほしいと言われています。それは嬉しいですね。

仲を縮めたい人と「共有」する映画体験と、インディーズ映画のインフラ。その二つを同時に実現できているところが、森の映画祭のユニークなところですよね。最近、インスタ映えというのがブームで、上手くそういうものに乗っているのかなという気もしますが。

サトウ
そうですね。会場の装飾もこだわっているのでインスタ映えイベントとは言われますね。

そういう「映えブーム」が去ったらどうなると思いますか?

サトウ
インスタ映えも野外映画もブームになっているけど、そういう軸にいたくなくて、一発屋ではなく、カルチャーとして残したいです。音楽フェスは今後もなくならないと思うし、野外映画が無くなっても、映画フェスというカルチャーとしての立ち位置で残っていけたらなと思います。

そういったことを踏まえて、今後の抱負というかビジョンというと。

サトウ
粛々とやっていきたいです。サマソニみたいに数万人規模で開催しようとは考えていなくて、数千人規模を上限として、細くてもいいので長くやっていきたいなと思います。
やっていく場所としてはいろいろな場所で開催していきたいです。中期目標だと宇宙でやりたいなと思っています。尊敬している先輩が初の有人宇宙飛行の会社をされていて、「宇宙で『ゼロ・グラビティ』の上映ができるのではないか」と思っています。「宇宙で交差する映画祭」ってできたら面白いですよね。

取材:大竹 悠介
撮影:吉田 耕一郎

サトウダイスケ

映像作家 / 森の映画祭実行委員会代表
映像制作やスチール、ウェブサイト制作などクリエイティブ全般をてがける。また、2014年より日本初の野外映画フェス「夜空と交差する森の映画祭」を開催している。

夜空と交差する森の映画祭2018

日時: 2018年10月6日(土) オールナイト開催 上映開始 18:30 / 上映終了 5:00
会場: 栃木県 ツインリンクもてぎ ( 栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1 )
チケット: 入場券 11,500円 / ペア入場券 21,000円 / グループ入場券 40,000円
内容: 映画上映ステージ4箇所(『ベイビー・ドライバー』など50本以上の長短編映画を上映) / 飲食ブース / ワークショップ / テントサイト / その他会場演出やトークイベント等
アクセス: 駐車場あり・品川からの往復バスツアー・宇都宮駅からの臨時シャトルバス
サポーター: UPLINK・CHUMS × Honda Access・Pinkoi・She is・Filmarks(フィルマークス)ほか
主催: 森の映画祭実行委員会 (代表・サトウダイスケ)
公式サイト: http://forest-movie-festival.jp
お問い合わせ: mail@forest-movie-festival.jp

Writer:大竹 悠介

「ブリリア ショートショートシアター オンライン」編集長。大学院でジャーナリズムを専攻した後、広告代理店勤務を経て現職。「映画体験の現代的な価値」をテーマに全国の取り組みを継続取材中。ショートショートではWEBマネージャーやクリエイターコミュニティの運営を兼務。

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