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INTERVIEW
Nov. 20, 2018

【Special Interview】テーマやメッセージをあえて持たない!?
『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督が語る映画の作り方&楽しみ方

2018年の日本映画界を熱く盛り上げ、異例のロングヒットとなった『カメラを止めるな!』。監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクトとして、無名の俳優たちと製作され、都内のわずか2館から上映をスタートした作品だ。「37分間に渡るワンカットのゾンビサバイバル映画」から、その作り手たちへとストーリーを展開していく奇想天外さと緻密な構成が大きな話題となり、まさにゾンビウイルス以上の勢いで全国に上映館を拡大。一度観たら誰かに勧めずにはいられない「カメ止め感染者」を続出させている上田慎一郎監督に、インタビューを行った。

劇場公開ポスター

映画監督を目指し上京。波乱万丈の20代前半

子どもの頃から映画を作っていたそうですね。

上田
小6の時にPS1が出て、家には漫画が1000冊ありました。浴びるように映画・漫画・ゲームを観ているうちに、物語を作りたくなりまして。映像を撮り始めたのは中学生のときですね。道を歩いていたら車にあてられ、その示談金10万円で父親にビデオカメラを買ってもらったんです。それで他愛もない自主コント映像を撮り始めました。お笑いもすごく好きだったんで、友達と駅前で漫才やコントをしたり。お笑い芸人になるか、映画監督になるか迷って、最終的には映画の中でコメディもできるから映画監督を目指そうと。映画監督を仕事にしたいという感覚ではなく、あくまでも映画が好きだからという理由でした。

上田慎一郎監督

それで東京に出て映画監督になる修行をしようと。

上田
まず高校時代に毎年映画を撮りながら、演劇部でも作・演出を手がけて近畿2位まで行きまして。いくつかの大学からスカウトされたんですが、生意気にもハリウッドに行こうと思ってたんですよ。英語を勉強してから行こう!と大阪の英語専門学校に入学したものの、全然なじめなくて。2~3ヶ月後に辞めて、お金もないのにヒッチハイクで上京しました。最後に乗せてくれた人に、「映画監督になるにはどこに住めばいいですか?」と聞いたら下北沢だと言われたので、下北沢でトイレ共同風呂無しのアパートに住み始めました。それが20歳のときですね。その後24歳までは、いっさい映画を撮ってなかったんですよ。

20~24歳まではどんな生活を?

上田
映画を作るために東京に出てきたのに、寄り道ばかりしていましたね。自分の秘密基地を作り、そこで営業事業部を立ち上げて映画を作ろう!みたいな発想で、カフェバーを出店しようとしたり。ネズミ講みたいなものに手を出したり、自費出版でSF小説を出版したりして、その度に借金をまみれになって一時はホームレスをしたことも・・・。
その度に借金を繰り返し、24歳のときに「俺は何をやってるんだ」と(笑)もう一回映画ひと筋に戻るため、自主映画製作団体のスタッフ募集に応募したんです。それまではハンディカムでしか撮ったことがなかったんですが、初めて大きいカメラとガンマイクを使って撮り、編集ソフトで編集するという映画作りを学びました。その後独立して自分の映画団体を立ち上げ、映画作りを始めたという感じです。

観客も俳優もスタッフも巻き込み、みんなで作るのが上田流

監督の作品からは楽しい雰囲気が伝わってきますが、現場はどんな雰囲気ですか?

上田
僕が上から皆に指示をするのではなく、横一列に並んで一緒に映画を作るという感じですね。風通しが良く、スタッフ誰もがアイデアを出せる雰囲気だと思います。たとえば撮影とか録音の人も、演出にアドバイスをして下さるんですね。「ここはこういう気持ちだからこうしたほうが面白いんじゃないか」とか。いいと思ったらすぐ採用するし、それは違うと言えばすぐ引いてくれます。
シナリオの新しい項が上がったときも「納得がいかないシーンがあるとか、このセリフは言えないなど、何かあれば個人的に連絡をください」と言っておきます。現場に入るまでに不満や不安をすべてつぶして、現場では楽しむだけ。もちろん脚本を練り込みリハーサルを重ねて現場に入りますが、現場で新しく生まれたアイデアも積極的に取り入れ、みんながアイデアを出し合って。とにかく楽しんで映画を作るっていうスタイルですね。

舞台挨拶の模様

舞台挨拶が頻繁に行われていたのも印象的でした。

上田
この映画が広まる上で、観た人たちの応援の熱量というか、観た人全員が宣伝マンとして広めてくれたのが大きかったんですが、それを狙ってやったわけではありませんでした。映画が終わったあとにキャストが舞台挨拶に出たり、ロビーにいたり、お客さんとSNS上でコミュニケーションをとるというのは、自主映画やインディーズ映画ならよくあることなんですよ。そして今回はその度合いがとても高かった。
まず始めにクラウドファンディングをしたんですね。で、お金を入れてくださった方のことを支援者と書くのが嫌で「チームメイト」と書いていました。100人チームメイトができましたと。この映画を応援してくれる人、一緒に広めようとしてくれる人は、お客さんというよりチームメイトなんです。

その「チームメイト」からもいろいろな反響があったと思いますが、印象に残っているものはありますか?

上田
僕はハリウッド映画を観て育ちまして、思春期の頃観ていたのは『アルマゲドン』とか『インディペンデンス・デイ』などブロックバスター系の大作映画ばかり。大嘘だらけのザ・フィクション映画を浴びるように観て、映画監督を目指し、自分の現実を変えられたんです。だからこの映画を観て「映画作りをあきらめかけていましたが、もう一回撮ろうと思いました」とか、「陸上部で走るのをあきらめていたのですが、あと1年間だけ走ってみることにしました」など、その人の現実が動いたと聞いたときに、胸が熱くなりました。

中学2年生が好むようなザ・ハリウッド映画がいちばん好き

現在はどんな映画がお好きなんでしょう。ベスト3を選ぶとしたら?

上田
エンターテインメントからミニシアター系のかわいいお話、日本映画も観ます。雑食ですが、一番は?と聞かれたら、やはりザ・ハリウッド映画的なエンターテインメント作品。中学2年生が好むようなスパイ映画やタイムスリップもの、刑務所を脱走する話。『オーシャンズ11』みたいなチーム強奪ものなど、王道ジャンルのワクワクする映画を好んでいると思います。
オールタイムベストの中だと、まず『ミッドナイト・ラン』。ロバート・デ・ニーロのアクション映画です。あと『スティング』かな。『マグノリア』もすごく好きですね。エンターテインメントじゃないんで「意外やな!」と言われるし、なぜ面白いのか言葉で説明できないんですけど。ずっと胸の中に残っている作品です。

観る映画を決める基準はありますか?

上田
やっぱり監督で選びます。タランティーノの新作は観なきゃとか。クリント・イーストウッドとかスティーブン・スピルバーグの新作が来たら義務的に観ますね。でも日本映画の場合は俳優で観ることもありますよ。外国映画は字幕か吹き替えじゃないですか。だからどうしても細かなニュアンスのところまで楽しみきれなくて。日本映画の場合は、セリフとセリフの間(ま)や、しゃべりのトーンでニュアンスまで楽しめるから、俳優で観ることも多いです。役所広司さんとか、20代前半の頃は蒼井優さんが好きで、彼女が出ている作品は遠方まで観に行ったりしたこともありました。

なるほど。他にも上田監督流の映画の楽しみ方がありそうですね。

上田
一人の作り手とか一人の俳優の過去作をたどって観てみると、もう一つの大きな物語が見えてきて、より映画を楽しめるきっかけになりますよね。監督の過去作を遡って観ていくと「昔からこういうテーマで一貫してやってたんや!」というのが見えてきて、作品単体以上に楽しめることがあります。あとその監督の経歴をWikiなどで調べて「ここで離婚したから次の作品でこうなったんかな?」と妄想したり。たしかにそういうことってあるんですよ。僕も妻と出会って脚本を見てもらったりアドバイスをもらうようになったりして、女性の描き方がリアルになったんですよね。

メッセージやテーマ性は自然と滲み出てくるもの

監督自身の一貫したテーマ、伝えたいメッセージはありますか?

上田
ないです(笑)『カメラを止めるな!』のセリフにもありますが、テーマやメッセージって出すものではなくて、出るものなんです。もし僕が「今回は映画愛を謳うんだ」と決めて撮っていたら、押しつけがましくなると思うんですよ。
『カメラを止めるな!』の場合は、テーマは映画愛だよねって言う人もいれば、家族愛だよねって言う人もいれば、仕事論の話だよねって言う人もいます。いろいろ解釈が分かれるのは自然と滲み出てくるものに任せているから。もちろん映画は好きですし家族のことも好きですけど、「これを言っていきたい!」っていうのは意識しないようにしています。とにかく、面白いものを作ることが僕の仕事ですね。

いい映画の定義って何なんでしょう。

上田
いろいろありますが、どんなに稚拙で出来が悪い映画だとしても、作り手の「これを作りたかった!」という想いが宿っていれば、いい映画だなと思います。逆に作りたいものが入ってない、「仕事」を超えてない、「これ誰が作りたいと思って作ってんだろう?」という作品はいい映画とは思えないですよね。

最後に、次回作について教えてください!

上田
ワークショップを経てオリジナル脚本で映画を作る、松竹ブロードキャスティングというプロジェクトで次の長編を撮ります。この冬にオーディションをして、来年の春に撮影する予定ですね。10月から公開が始まった『たまえのスーパーはらわた』は、映画祭用に撮った40分の中編で、劇場公開用ではなかったんですが、『カメ止め』効果で「劇場公開しちゃおう!」と(笑)。

ホラー好きな女子高生がさいたま市のPRビデオを作ってくれと頼まれて、血まみれの観光ビデオを作ろうとしててんやわんやする、映像を作る側のお話です。『カメ止め』の女子高生版と歌うメディアもあるくらい似ているところがあるので、『カメ止め』を観た人なら通じる部分を感じられると思いますよ!

取材:大竹悠介
撮影:吉田耕一郎
構成:雨宮あかり

2018年10月8日(祝)に開催されたSSFF & ASIA 2018 秋の上映会トークイベントの模様はコチラ!(Part1とPart2に分かれています)

上田 慎一郎(うえだ・しんいちろう)

1984年 滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。
2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。現在までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。最新監督作である初の劇場用長編映画『カメラを止めるな!』は都内2館から始まり200館以上に拡大する爆発的なヒットを記録し社会現象となった。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに娯楽性の高いエンターテイメント作品を創り続けている。

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STEP1 : BSSTOにユーザー登録(無料) https://sst-online.jp/login/ ※リンク先ページ下部に登録ボタンがあります。

STEP2:キャンペーン応募フォームより応募https://form.jotform.me/ShortShorts/-kametome

【応募期間】
2018年11月30日(金)18:00まで
※当選者には、ご登録のアドレスにメールにてご連絡いたします。otoiawase@v-voice.jpからのメールが受信できるよう設定ください。

【応募条件】
・BSSTOにユーザー登録をされている方(無料)
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
・応募に関する注意事項に同意いただける方。

【注意事項】
※当選発表は、当選者様への当選のご連絡をもってかえさせていただきますので、ご了承ください。
※当選通知後、2日間ご連絡がない場合は、当選を無効とさせていただきます。
※当選結果に関するお問い合せは受け付けておりませんので、ご了承ください。
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・お客さまのご住所が不明、または連絡不能などの場合。

Writer:BSSTO編集室

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