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May. 26, 2021

【シネコヤが薦める映画と本】〔第34回〕『ノッティングヒルの洋菓子店』
〜「シネフード」の醍醐味〜

海水浴客で賑わう江ノ島から電車で一駅。閑静な住宅街に囲まれた鵠沼海岸商店街の一角に佇む「映画と本とパンの店・シネコヤ」。こだわりの映画と本を用意して街の人たちを温かく迎える竹中翔子さんが、オススメの1本と1冊をつづる連載コラム。
今回は、美しいスイーツが並ぶ映画「ノッティングヒルの洋菓子店」と、美味しいご飯と映画の特別なコラボレーション、”シネフード”について。

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映画と食べ物はとても相性がいい。スクリーンいっぱいに広がる美味しいごはん…記憶に残る美味しいごはんが出てくる映画がいっぱいある。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』『マーサの幸せレシピ』『ディナーラッシュ』『バベットの晩餐会』『青いパパイヤの香り』…などなど上げ始めたら切りがない。
その映画の小道具以上の役割を与えられて、スクリーンの中の食べ物たちはキャストと同じく存在感を放つ。アカデミー賞食べ物部門を作ってもいいくらいだ。

「シネマ厨房の鍵貸します」(1996年・日本ヴォーグ社)は、映画に登場する美味しいごはんのレシピ&コラム本。『クレイマー・クレイマー』のフレンチトースト、『グッドフェローズ』のミートボール、『フライド・グリーン・トマト』のフライドグリーントマト(そのまんま!)。映画好きにも、食いしん坊にもたまらない一冊なのである。この本のレシピでごはんを作って、食べながら映画を観る…という贅沢な休日を過ごしたいものだ。
映画を観ることと同じくらい、食べることも好きな私としては、こういった類の映画が公開されると聞くと、いてもたってもいられず劇場へ足を運ぶのである。

“シネフード”を食べながら…

そんな食いしん坊だからこそ生まれた企画“シネフード”。2013年〜2016年まで、現在のシネコヤができる前に企画していた「隠れ家シネマ」というイベントで提供していた。“映画に出てくる食べもの”を再現して、美味しいごはんを食べながら映画を観る、というコンセプトの“シネフード”は湘南の飲食店に協力を得て、作ってもらっていた。『グラン・ブルー』のエンゾのマンマが作るパスタ、『シンプル・シモン』の丸いオープンサンド…映画の中の食べ物(ときには映画をイメージした創作料理も)を再現し、数々の“シネフード”を送りだしてきた。“シネフード”を前に「わぁ!」と静かだけれど華やかな声を上げるお客さまの反応を思い出すと、なんとも素敵なイベントだったのだなぁと懐かしく思う。

『ノッティングヒルの洋菓子店』を観て、久しぶりにそんな“シネフード”のイベントを思い出した…。

©️FEMME FILMS 2019

(あらすじ)
ロンドン、ノッティングヒル。
名店で修行を積んだパティシエのサラと親友のイザベラの2人は、長年の夢だった自分たちの店をオープンすることに。
ところが事故でサラが急死。夢を諦めきれないイザベラとサラの娘クラリッサは、絶縁していたサラの母ミミを巻き込んで、パティシエ不在のまま開店に向けて走り出す。
そんな3人の前に現れたのは、ミシュラン二つ星のレストランで活躍するスターシェフのマシュー。
20年前、ガールフレンドだったサラから逃げた過去を持つ彼は、あることを償うためにパティシエに応募してきたのだ。それぞれの想いを抱えた4人は、果たしてサラの夢を叶えることができるのか――。

格別な映画体験

世界各国の伝統的なスイーツを作り出す洋菓子店“Love Sarah(ラブ サラ)”。映画の世界から飛び出してきた、色とりどりの甘いスイーツを食べながら、この映画を観たらなんて幸せなのだろう。スクリーンに並ぶ美しいスイーツを眺め、この映画で“シネフード”のイベントができたらなぁ!!と想像が膨らんでワクワクが止まらない。
まるで自分も映画の中に入ったかのような、格別な映画体験。それが「シネフード」の醍醐味だ。

今はコロナ禍で、そういった企画はできないため残念だけれども、世の中が落ち着いたらまたやりたいなと思う。出番が来るまで温めておこう、とヨダレを垂らしつつ、一人、美味しいスイーツの溢れるスクリーンを前にニヤニヤしているのである。

【おすすめの本】「シネマ厨房の鍵貸します」

1996年|日本ヴォーグ社

【おすすめの映画】『ノッティングヒルの洋菓子店』

■監督:エリザ・シュローダー
■シネコヤでの上映期間:5月29日(土)〜

「映画とパンの店・シネコヤ」

【営業時間】
9:00〜18:00ごろ
※不定休(公式ウェブサイトにてご確認ください)
【アクセス】
神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-4-6(鵠沼海岸商店街 旧カンダスタジオ)
小田急江ノ島線「鵠沼海岸」駅から徒歩3分くらいです。
【問い合わせ】
TEL:0466-33-5393(代表)
WEB:http://cinekoya.com/

Writer:竹中翔子(たけなか・しょうこ)

株式会社シネコヤ代表取締役
学生時代に映画館のアルバイトスタッフを経験し、映画の魅力にハマる。地元映画館の閉館を受け「もう映画館はダメだ!」と思い、映画だけではない+αの空間づくりを目指し、「シネコヤ」として本格的に活動をはじめる。鵠沼海岸のレンタルスペースで毎月2回、フードや会場演出をこらした映画イベントを主宰。2017年4月鵠沼海岸商店街の一角についに「シネコヤ」をオープン。貸本屋を主体とした「映画と本とパンの店」というコンセプトで新たなスタイルの空間づくりを行っている。

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