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COLUMN
Sep. 04, 2018

【シネコヤが薦める映画と本】〔第4回〕夢だけじゃない?ディズニーが社会に与えた、もう一つの影響

海水浴客で賑わう江ノ島から電車で一駅。閑静な住宅街に囲まれた鵠沼海岸商店街の一角に「映画と本とパンの店・シネコヤ」がある。こだわりの映画と本を組み合わせたセレクション。街の人たちに映画と本のある風景を届ける竹中翔子さんが、オススメの1本と1冊をつづる連載コラム。
今月は『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』と『ディズニーランドの秘密』をご紹介。

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映画を観終わったあと、しばらく放心状態になった。何が起きたか、よくわからなかった。「あれ?終わり…?」と、数分間どういう状況なのか認識するのに時間がかかった。そんなラストだった。
少女たちがあるところに走っていく、その行く先には…。
このラストには、複雑な気持ちになった。どう捉えるか、それは監督から観客へ投げかけられた問いでもあった。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年)は、難しい映画ではないが、心底そのテーマについて考えたくなる映画だ。

ラストがもたらすメッセージ

この映画は、何が言いたかったのか?仲間内でそんな議論になった。ある人は「ラストの意味がわからない」、またある人は「貧しい人たちをバカにしているのかと思って、腹が立った」という解釈もあった。
最初からラスト直前まで、一貫して感情的な映像はほとんどないにもかかわらず、ラストに差し掛かるとき、急にドラマがはじまる。ラストの1シーンは、一体何を残したかったのか。

© 2017 Florida Project 2016, LLC.

6歳のムーニーと母親のヘイリーは定住する家がなく、“世界最大の夢の国”フロリダ・ディズニーワールドのすぐ外側にある安モーテルでその日暮らしの生活を送っている。シングルマザーで職なしのヘイリーは厳しい現実に苦しむも、ムーニーからみた世界はいつもキラキラと輝いて、モーテルで暮らす子どもたちと冒険に満ちた楽しい毎日を過ごしている。しかし、ある出来事がきっかけとなり、いつまでも続くと思っていたムーニーの夢のような日々に現実が影を落としていく―。

全編iphoneで撮影した『タンジェリン』(2015年)で世界中を驚愕させたショーン・ベイカー監督が、今度は35mmで撮影。美しい映像の質感はそのせいか、映画ファンの評価も高い作品となった。また、子どもたちの目線で撮られた自然な姿に心打たれた人も多いのではないか。

フロリダのディズニーランド近くの片隅で暮らす、子どもたちの日常。ただ、日常を描いていたに過ぎない。その美しさや危うさがリアルに存在する感じ。そこには、何を伝えたいとか、そんなものは何もなかったんじゃないかと思う。子どもが芝居をするでもなく、遊びの中の会話がただ流れてくる…その日常がラストに向かって少しずつ積み重なっていく。ただそれだけが意味あるものだったのではないだろうか。

ディズニーが作り出した世界

この映画を観て、ディズニーが残したものが何だったのか、アメリカ社会においてディズニーランドとはどういった位置づけにあったのか、そんなことを知りたくなった。『ディズニーランドの秘密』(2011年|新潮社|有馬哲夫(著))は、ウォルト・ディズニーが何を作りたかったのか、乗り物マニアだったウォルトの夢とはなにか、そしてディズニー一家の歴史などに迫る本だ。これを読むと、ウォルトの“夢”に向かう真っ直ぐな精神性には疑いが無いことがわかる。筆者もディズニーランドというものを肯定的に捉えている。

しかし、疑問に思う。ディズニーがもたらしたアメリカ社会への影響はとてつもなく大きな弊害もあったのではないかと。この映画のタイトルでもある『フロリダ・プロジェクト』とは、1960年代にフロリダにディズニーワールドをつくるときにつけられたテーマパーク開発計画の名前だそう。その意味を知ったとき、この映画が言いたかった本当のところに行き着きたくなった。

子どもたちの日常が積み重なった先に起きたことが、一体何だったのか…その本当の意味を。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』予告編

今回読んで欲しい【本】

「ディズニーランドの秘密」(2011年|新潮社|有馬哲夫(著))

『フロリダ・プロジェクト』(2017年/日本/117分/ショーン・ベイカー)

■監督 ショーン・ベイカー
■出演 ウィレム・デフォー/ブルックリン・キンバリー・プリンス/ブリア・ビネイ
スケジュール:917日(月)〜107日(日)までシネコヤで上映

© 2017 Florida Project 2016, LLC.

「映画とパンの店・シネコヤ」

【営業時間】
営業時間:9:00〜19:00(L.O)20:00(CLOSE)
毎週木曜日定休
【料金】
1DAY・1日出入り自由
一般:1,500円(貸本料)
小・中学生:1,000円(貸本料)
※18:00以降は1ドリンクが付きます。
※お得な年間パスポート制度あり
【アクセス】
神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-4-6(鵠沼海岸商店街 旧カンダスタジオ)
小田急江ノ島線「鵠沼海岸」駅から徒歩3分くらいです。
【問い合わせ】
TEL:0466-33-5393(代表)
WEB:http://cinekoya.com/

Writer:竹中翔子(たけなか・しょうこ)

株式会社シネコヤ代表取締役
学生時代に映画館のアルバイトスタッフを経験し、映画の魅力にハマる。地元映画館の閉館を受け「もう映画館はダメだ!」と思い、映画だけではない+αの空間づくりを目指し、「シネコヤ」として本格的に活動をはじめる。鵠沼海岸のレンタルスペースで毎月2回、フードや会場演出をこらした映画イベントを主宰。2017年4月鵠沼海岸商店街の一角についに「シネコヤ」をオープン。貸本屋を主体とした「映画と本とパンの店」というコンセプトで新たなスタイルの空間づくりを行っている。

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