店舗を持たない“ノマドな古着屋”としてヴィンテージ映画Tシャツを紹介してきた「weber」が今年1月に独自の視点でセレクトした映画を劇場で上映する映画配給レーベル「weber CINEMA CLUB」を創設! 6月には東京・表参道のカフェ「モントーク」(2022年3月閉店)の跡地に、藤原ヒロシ氏がディレクションを手がけオープンしたコンセプトストア<V.A.>にて、映画『羊たちの沈黙』とのコラボレーションによるポップアップストアを期間限定(6月22日で終了)で展開した。
「weber」も5月には渋谷にアポイント制の実店舗をオープンさせるなど、次々と新たな試みを展開しているが、なぜ映画配給に乗り出したのか?「weber」主宰者の池田仁さんに語ってもらうインタビュー後編をお届け!
映画配給レーベルを名乗っていますので、まず一番やりたいのは自分たちが好きな映画を買い付けて、それを劇場で上映するということなんですが、「映画配給」にはかなりの時間を要するため、自分たちの強みでもある映画にちなんだマーチャンダイジングもできればと思って始めました。
いま、僕の周りの映画関係者の方に話を聞いても、コロナ禍以降、業界的になかなか厳しいという話が出てくるんですけど、少しでも僕らの活動が映画業界の活性化につながればという思いが強いです。
今年の2月に第1弾としてデビッド・リンチ監督の『ブルーベルベット』4Kリマスター版を配給しましたが、今後も面白いラインナップが続きますので、ご期待いただければと思います。
奇しくもデビッド・リンチの追悼上映になってしまったというのが大きな要因ではあるのですが、とても大きな反響がありました。
僕らの長所でもあるマーチャンダイジングの部分でも、劇場で販売をさせていただいたんですが、数日で完売しました。(上映劇場の)シネマカリテ新宿の方も「ここまで人が集まったのは、初めてのことで驚きました」とおっしゃっていました。
僕らの好きな「映画×ファッション」というもののパワーを感じた瞬間でした。
「weber CINEMA CLUB」ポップアップストア期間中の<V.A.>
もともと『羊たちの沈黙』でも『ブルーベルベット』と同じように配給もやりたくて権利を取りにいっていたんですが、残念ながら取れなかったので、別の方法で何か盛り上げることはできないか? と考えたんですね。
藤原ヒロシさんが1990年代後半に、自身のレーベルである〈AFFA(Anarchy Forever Forever Anarchy)〉で『羊たちの沈黙』の“目”のグラフィックをモチーフにしたTシャツをリリースされていたんです。それを思い出して、<V.A.>も藤原さんがディレクションされているという縁もあるので、そこで何かご一緒できるというのは“ストーリー”としても面白いなと思って僕から提案させていただきました。
そこで単にTシャツを売るだけでなく、もう少し奥行きを持たせられないか? と考えて、以前から知り合いであるアーティストのNAIJEL GRAPH(ナイジェル・グラフ)さんにお声がけして、ヴィンテージのポスターを扱う「ウッドマーキー(WOODMARQUEE)」さん、輸入盤VHSを扱う「リピト ビデオ(LIPIT VIDEO)」さんにもご協力をいただき、こういう形でやらせてもらうことになりました。
今回のポップアップストアでコラボレーションした映画『羊たちの沈黙』のポスター
まだ詳細は言えないんですが、ある作品の配給とマーチャンダイジングの権利を取得していて、10月に全国の劇場で公開する予定です。
もうすぐ詳細が解禁されますが、僕自身も大好きな作品ではあるんですが、公開当時に劇場では観ていなくて、多くの人が僕と同じ、もしくは作品名は知っているけど観たことはないという人がほとんどだと思います。本当に素晴らしい作品なので、是非ご期待いただければと思っています。
(インタビュアーもインタビュー時にお聞きしましたが、「これは楽しみ過ぎてやばい!」というのが正直な感想です。)
ヴィンテージポスターや輸入盤VHSが彩った「weber CINEMA CLUB」のポップアップストア
話が前後しますが「weber CINEMA CLUB」を始めるきっかけになったのが、2023年に『ゴーストワールド』という映画の22年ぶりの公開を記念したコラボレーションTシャツを作らせてもらったことで、もちろん作品のパワーが大きいのですが、ものすごい反響をいただいたんですね。
「ファンの人に届ける」ということの重要性を改めて認識したんですが、一方である映画関係者の方と出会って、お話をした時に劇場は「コロナ禍以降、客足が戻らずに本当に大変だ」ということをおっしゃっていたんですね。ちょうど『ゴーストワールド』での成功体験もあって「映画×ファッション」で、僭越ながら少しでも映画業界を盛り上げることができるんじゃないか? という思いで「weber CINEMA CLUB」をスタートさせたんです。
その思いはいまも同じで、配給、マーチャンダイジング、それ以外の活動も含めて映画業界を盛り上げる――特に、ひとりでも多くの人に映画館に足を運んでもらえるような取り組みをしていきたいなと思っています。
これは実現が可能かどうかはわかりませんが、Tシャツと同様に映画そのものの制作もできないか…? そんな気持ちも1ミリくらい抱いています(笑)。他にもやりたいことが、沢山ありすぎて困っています(笑)
これまでもお話ししましたが「好き」をベースに、既存のルールや常識に捉われず自分たちらしい活動をして行けたらいいなと思います。
「weber」も基本的に同じで、「好き」を大事に続けてきて、その輪が少しずつ広がっているのを感じているので、末永くご愛顧いただけるブランドにして行きたいと思います。
あとはブルース・ウェーバーといつか一緒に仕事ができたらいいなと思っています。
NAIJEL GRAPHが手掛けた「weber CINEMA CLUB」のオリジナルTシャツ。描かれているのは、映画好きなら誰もが知るあの人!?
はい、ヴィンテージTシャツ約1000枚と、新しいオリジナルのTシャツを販売する「大Tシャツ展」が7月18日(金)から「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」で開催されます。今年は、このイベントのために準備し、買い付けたものがかなり多くあります。特に映画のヴィンテージTシャツは、400枚以上あるので、見応えがあるかと思います。
『マイ・プライベート・アイダホ』、『ユージュアル・サスペクツ』、『ファーゴ』、『プラダを着た悪魔』、『マイ・インターン』など、本当に人気のある作品のヴィンテージTシャツがたくさんありますので、ぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。
映画とファッション。自分の「好き」を原動力にその垣根を軽やかに飛び越えて行動に繋げてゆく池田仁さん。
彼が仕掛ける「weber」と「weber CINEMA CLUB」の今後の動向に、引き続き注目していきたい。
最後に、7月18日(金)から「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」で開催される「大Tシャツ展」で販売されるヴィンテージ映画Tシャツをピックアップして紹介!
あなたの気になる一枚、映画を見つけに、weberの世界を訪れてみてはいかがだろうか。
リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスが共演した1991年の青春映画『マイ・プライベート・アイダホ』
劇中でビル・マーレイが着用していたTシャツが再現された2003年の映画『ロスト・イン・トランスレーション』
1989年のマイケル・ムーア初監督作『ロジャー&ミー』
印象的な劇中の台詞がプリントされた1995年の映画『ユージュアル・サスペクツ』
タペストリーのようなプリントが目を惹く1996年のコーエン兄弟監督作『ファーゴ』
試し刷りの際に生まれたと思われる『スター・ウォーズ』と『タイタニック』という通常あり得ない組み合わせは、ヴィンテージならではの一枚
カメラマンのラリー・クラークが監督し、ハーモニー・コリンが脚本を書いた1995年の破滅的な青春映画『KIDS/キッズ』
主演のオドレイ・トトゥがプリントされた2001年の映画『アメリ』は、ジャン=ピエール・ジュネ監督の色彩感覚が光る一枚
劇中で狂気的な演技を見せた浅野忠信がプリントされた2001年の映画『殺し屋1』
続編も待たれる、アン・ハサウェイとメリル・ストリープが共演した2006年の映画『プラダを着た悪魔』
リュック・ベッソンが殺し屋の少女を描いた1990年の映画『ニキータ』
ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが共演した2015年の映画『マイ・インターン』
池田仁/weber主宰
自身が務める大手ファッション通販サイトに勤務する傍ら2018年からweberをスタート。2025年には渋谷にアポイント制のショールームを開店。Tシャツと映画と自然をこよなく愛する。
weber
ヴィンテージTシャツを軸にファッションとカルチャーを横断する独自の世界観を発信するヴィンテージショップ。希少な一点物のセレクトに加え、ヴィンテージTシャツに特化したオークションの主催、未来のヴィンテージをコンセプトにしたTシャツの制作などTシャツというメディアの新たな価値を提案しています。
Instagram: @weber71_
weber CINEMA CLUB
weberが手がける映画配給レーベル。独自の視点でセレクトした映画の配給や「ファッション×映画」を軸にしたマーチャンダイジングを展開。Tシャツを通じて培った世界観を映画にまで広げ、映画業界全体を盛り上げる一助となることを目指して活動中。2025年10月に、新たな全国公開作品を配給予定。
Instagram: @weber_cinema_club