ログイン
MAGAZINE
Mar. 17, 2026

【Creator's File】『サリーショップで』 Shruti Parekh監督 インタビュー

映像クリエイターとショートフィルムの繋がりを様々な角度から深掘りする「クリエイターズファイル」。
今回ご紹介するのは、BSSTOで配信中の『サリーショップで』のShruti Parekh監督。

映画祭と連動する、クリエイターのためのプラットフォームLIFE LOG BOX*に作品登録をいただいたことから配信が決定。 作品制作の背景や撮影時のエピソードとともに、クリエイターとしてLIFE LOG BOXをどのように活用できるかをインタビューしました。

*LIFE LOG BOXとは
ショートショート フィムフェスティバル & アジア、そして株式会社ビジュアルボイスが2023年にローンチした、永続的に保存可能なデータストレージや、ポートフォリオの機能を備えたクリエイターのためのプラットフォーム。
新しい仕事やマーケットプレイスでの収益獲得を目指し、コンテンツやクリエイターの価値を最大化するサービス。

『サリーショップで』ポスター

<監督インタビュー>

LIFE LOG BOXへのエントリーが今回の配信に繋がりましたが、最初にこのプラットフォームを知った時の第一印象を聞かせてください。
とても魅力的なプラットフォームだと感じました。作品をアーカイブとして残しながら、日本国内だけでなく海外の観客にも届けることができる、とても意義のある仕組みだと思いました。

作品がもはや「一時的なもの」ではなく、しっかりとアーカイブされ、世界のマーケットともつながり続けるという点について、このような「安心感」や「可能性」は、監督の創作プロセスや考え方にどのような変化をもたらすと思いますか?
短編映画は、作品にふさわしい行き先を見つけるのが難しいことが多いですが、このプラットフォームは、作品を安全にアーカイブしながら、最終的に観客に届けるためのとても良い仕組みだと思います。さらに、映画制作者にとってポートフォリオとしても活用できる点も良いですね。

クリエイターが普段の制作活動でより便利に使える、あるいは役立つ機能として、もし今後期待しているものがあれば教えてください。
今は特にないです!

主人公のニールは、伝統的な衣装(サリー)や形式的な儀式に対して強い「違和感」を感じていますが、この描写は、南アジアの文化を持ち海外で暮らすご自身の経験やアイデンティティに根ざしているのでしょうか?
はい、ある意味でそうですね。子どもの頃、インドの服を着て外出するのが時々居心地悪く感じることがありました。特に女性用のインドの衣装は華やかで派手なことが多かったからです。美しいと思いながらも、大きなTシャツやショートパンツ、ジーンズの方が楽で、時にはまるで仮装をしているように感じることもありました。これはアメリカで育った「第三文化の子ども」としての経験も影響していますし、服を着たときに自分の体や見た目に自然に向き合えるかどうかも関係していました。ニールの場合は、それに加えて性別の表現や、服や肌に対して自然に心地よく感じられることが、より重要なテーマだと思います。

なぜ、この物語の舞台として、伝統が色濃く残り、性別の役割も厳格に定められていることが多いデリーの「サリー屋」を選んだのですか?
インドのサリー店では、伝統的な性別役割と、それを超える表現が入り交じる、とても興味深い場面が見られます。通常は女性が服を買い、男性が店を運営していますが、男性がサリーを試着して見せることもあります。私は子どもの頃、インドを訪れるたびにそれがとても面白いと思っていました。このような日常的な性別表現の自由は、インドでは自然に受け入れられていますが、アメリカではより挑発的・逸脱的と見なされるでしょう。その環境での性別の表現の対比がとても面白く、さらに結婚準備の場面でそれが展開されることで、その緊張感が一層際立つと感じました。

ニールと、ドラァグクイーンとしての顔を隠す店員ゼイブとの絆についてですが、言語や社会的な違いを超えてお互いを「認め合う」瞬間を演出する際、監督として最も大切にしたポイントは何でしたか?
その瞬間は、まさに「認め合う」という感覚だけが伝わるようにしたかったんです。見知らぬ者同士の親密な瞬間を自然でリアルに描くのは難しいですが、幸いにも俳優のアイーシャ・ソニとカマル・バトラは、キャラクターに非常に自然に入り込み、現場でも本当の絆を築いていました。私は、沈黙や間を大切にして時間をかけるよう促し、最初はぎこちなかった関係性が自然に深まっていくように演出しました。

伝統的なインド文化と現代のドラァグクイーンの表現を融合させる際、この二つの世界の見た目や世界観のバランスはどのように意識して演出しましたか?
二つの世界は相性がぴったりです!インドの衣装や装飾の鮮やかで華やかな美学は、ドラァグ文化の大胆で派手な美学と非常によく合います。ザリの場合は、古いヒンディー映画やボリウッドのヒロインたちからインスピレーションを受けてもらいたかったので、少し誇張を抑えた、より“クラシック”なルックにしています。1950〜70年代の映画のヒロインたちはすでに濃いメイクや華やかな衣装を身に着けていたので、ドラァグ文化に置き換えても自然に感じられるんです。

女性監督であることが、作品の内容や現場の雰囲気に影響していると感じますか?たとえば、自分にしか表現できないテーマがあると感じたことはありますか。または、制作現場で特に公平な空気を意識したことはありますか?
女性監督であることは、私が作る映画の方向性に大きく影響しています。私の作品は、女性やジェンダー、アイデンティティをテーマにしたものが多いです。女性と一緒に仕事をするのが好きで、これまでの作品でも女性プロデューサーや主要スタッフと一緒に仕事をしてきました。女性が中心の現場では雰囲気が違うこともありますが、最終的には、価値観を大切にし、撮影現場に入り込みやすい厄介な力関係を乗り越えることが大切だと思っています。私は、映画制作の避けられないストレスの中でも、共感や思いやり、感謝の気持ち、そして楽しむ心を大切にしながら、現場をつくるように心がけています。

『フリーダ』ジュリー・鄭モア監督 © Miramax Films

監督を志すきっかけとして、影響を受けた女性監督や作品はありますか?
幼い頃から、私はヒッチコックや古いヒンディー映画に親しんで育ちました。高校時代には、フランス映画の『アメリ』と『LA HAINE』に衝撃を受け、映画に対する考え方が大きく広がりました。私は幸運にも、女性監督だけでなく、目標にできる憧れの南アジア出身の女性監督たちを見て育ってきました。ミラ・ナーイル、ディーパ・メータ、グリンダー・チャーダの作品やキャリアには大いに刺激を受け、彼女たちの歩みを見ることで、自分自身の道も想像できるようになりました。その後も、気に入った映画の監督が女性だとわかるたび(例えば、メアリー・ハロンの『アメリカン・サイコ』やジュリー・テイモアの『フリーダ』など)さらにこの道を進もうという気持ちが強まりました。

サリーの色や質感、そしてメイクは非常に印象的ですが、これらの要素はキャラクターの内面を象徴するために意図的に使ったのでしょうか?また、これらのビジュアルがどのように「内なる解放」を表現しているのか、詳しく教えていただけますか?
サリーはそもそも目を引くデザインで、どれも個性的で、美しい織物が使われ、大胆な色使いが特徴です。そのため、キャラクターに合うサリーを見つけるのは難しくありませんでした。ザリには、鮮やかで暖色系の色を選び、最終的に美しい炎のようなオレンジのサリーに決めました。もちろん、たっぷりのザリ刺繍(金糸の刺繍)も施されています。ニールの名前は「青」を意味するので、それにちなんで、そして性別表現の探求を反映させるために、少しモダンなデザインのアクアブルーのサリーを選び、銀色の幾何学模様のザリ刺繍をあしらいました。また、ザリのメイクやジュエリー、全体のルックについては、デリー在住のドラァグアーティスト、シャブナム・ベワファに相談する幸運にも恵まれました。

デリーの喧騒と二人の主人公の間の静けさとの対比が美しいですが、この作品において「静けさ」はどのような役割を果たしているとお考えですか?
社会の周縁にいると感じる人々は、しばしば静けさの中に身をひそめます。静けさは、盾であり仮面にもなり得ます。しかし、二人の主人公が出会ったとき、互いの中にある自分自身の一部を認め合うかのような感覚が生まれます。その静かなつながりが、信頼の瞬間を生むのです。騒がしい家族や賑やかな店、喧騒に満ちた都市の中で、この瞬間は控えめな二人にとってとても大きな意味を持ちます。

日本でも、多くの若い人たちが「伝統的な家族の価値観」や「結婚式での自分の役割」に対してプレッシャーを感じています。この作品を通して、そうした人たちにどんなメッセージを届けたいですか?
私は、この作品やキャラクターたちが、日本はもちろん世界中の若い人たちに響くことを願っています。特に、自分には合わない伝統的な枠にはまることを求められ、プレッシャーを感じている人たちに届けばと思います。周りに合わせたり、同調したりする方が楽なこともありますが、それではしっくりこないこともあります。本当の自分を見つけ、主張することは、社会的な圧力もあって怖くて大変なプロセスです。でも、時には「枠を壊す勇気を持った誰か」とつながるだけで、道が開けることもあります。この映画が、自分らしさを模索している若い人たちに、少しでも孤独を感じずにいてもらえるきっかけになればと思います。

Shruti Parekh監督のように新しい視点を持つ女性監督の活躍が、映画業界にどのような変化をもたらすと思いますか?また、次回作でぜひ取り組んでみたいテーマはありますか?
私たちは、依然として男性中心の社会に生きており、映画業界も男性優位です。だからこそ、女性監督が業界をより良い方向に変えていくことは間違いありません。女性が中心となる作品、女性が取り仕切る現場、そして女性自身が書き、演出する女性キャラクターがもっと必要です。才能ある女性映画制作者は以前より増えていますが、最高レベルでプロとして活動する女性監督は依然として非常に少なく、この状況は変わるべきだと思います。私はこれからも、社会の周縁にいるキャラクターたちが生き抜き、成長していく物語を描き続けたいと考えています。

Writer:BSSTO編集部

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。
毎週水曜日にショートフィルムをオンライン配信。常時10本ほどを無料で鑑賞できます。
https://sst-online.jp/theater/

Share

この記事をシェアする

Related

0 0
記事一覧へ