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INTERVIEW
Sep. 14, 2018

【Special Interview】「青春」という名前が付く前の「目覚め」を描く
~映画監督・松居大悟が語る新作『スワブ』~

映画・テレビドラマ・舞台などで、監督・脚本・演出、時には俳優としてマルチに活躍する松居大悟さん。『私たちのハァハァ』(2015年)や『アズミ・ハルコは行方不明』(2016年)などエッジの立った作品で、コアなファンから熱い支持を受ける今注目の若手監督だ。
そんな松居監督が監督したショートフィルム『スワブ』が、この度シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)で入選を果たした。武田梨奈さん、阿部純子さんらが出演し、4KHDRの高精細映像で撮影された本作の魅力を聞いた。

『スワブ』
【監督】松居大悟
【出演】武田梨奈、細井鼓太、阿部純子、他
【作品時間】20:00
【制作国】日本
【ジャンル】ヒューマン
【あらすじ】
物心ついた頃よりカトリック系の児童養護施設で暮らす小学3年生の江川マサオは、いつ来るかわからない両親の迎えを待つ。学校でいじめにあいながら日々を淡々と送っていたマサオだったが、ある日教会でうたた寝をしているシスター(白川)の口元から滴るヨダレを目撃し、得体の知れない感情を覚えてしまう。独自の視点で数々の青春を描き若者の圧倒的な支持を得てきた異才・松居大悟が背徳的な性に目覚める少年の煌めく瞬間を鮮やかに映し出す。

10月1日(月)より「ひかりTVビデオサービス」(ビデオオンデマンド)にて配信予定。

青春の前の「目覚め」、ヨダレを浴びる心象風景とは?

この度はシッチェス・カタロニア国際映画祭でのご入選おめでとうございます。予告編からインパクトのある内容ですが、初めに本作のテーマについて伺えますか?

松居
僕は「この世界にまだ言語化されていない感情を描く」ことを作品作りのベースにしています。若い人たちって、好きな人が出来ても、嬉しい悲しい寂しいとか色々な感情が混雑したまま、言語化されないままに行動を起こすもので、そこが良いと思って青春映画をよく手掛けてきたんです。
そうしていくうちに、「青春」という名前が付く前のものが描けないかと思っていて、今回は少年少女の興奮や、青春という名前が付く前のどうしようもない「目覚め」のようなものを描きました。

松居大悟監督

「青春」の前の「目覚め」ですか。それを「ヨダレ」で表現しようと思ったきっかけは?

松居
今回は「ひかりTV」で配信される4K作品であることと、前作のショートフィルム『ゆーことぴあ』と同様に「色気のあるもの」ということが先に決まっていたんです。そこで僕なりに考えて、わかりやすく色気を感じるものというよりも、主人公にとって色気を感じるもの、本来きれいとされていないものを美しく撮ることにしました。

最初に「ヨダレ」というイメージがあったうえでの作品だったと。この作品の見どころや力を入れたシーンはありますか?

松居
中盤から後半にかけて7色に輝くヨダレが少年の心象風景としてあるんですが、どんどん液体が降っていくところに少年の・・・何か喜びがあるというところは重要なシーンだったので、そこは一日かけて撮っています。普通の画質でも伝わるようにはしたんですが、4Kだとより一層明るく見えると思います。

他に脚本や演出でこだわった点は?

松居
単純におっさんの性癖みたいに思われたらやばいと思っていたので、とにかく下品にならないようにしようというのと、出来るだけ少年に寄り添って作りました。

実際にこういう感情を持った少年っているんでしょうか?

松居
うーん…子役の細井君に聞いたら「僕は全然こんなこと思わない」と。この作品を通して何か目覚めると思ったんですけど、目覚めていなかったので、僕ですかね(笑)

松居監督の幼少期はこういうことを考えていたんですか?

松居
小学生くらいの時の記憶って結構曖昧なんですけど、今思うとあった気がしますね。お姉さんの、うなじとか太ももとかわかりやすい点じゃなくて、体液を浴びたいような願望はあったかもしれないです。

子役の細井君、とても演技が上手いなぁと思ったのですが、キャスティングはどのようにされたのですか?

松居
子役はオーディションしたんですが、細井君は僕が監督を務めたテレビドラマ「バイプレイヤーズ」のオーディションにも受かって出ていたんです。その時から「この子は面白いな」と一目を置いていました。
単純に顔が面白いのもありますが、「バイプレイヤーズ」の最終話で大杉漣さんと共演していたんです。漣さんと現場で接した細井君なら漣さんの魂を引き継いでいる気がして、細井君しかいないんじゃないかと思ったんです。

空手有段者の武田梨奈さんが魅せるアクションシーンもあり

人間は自由であるにも関わらず、縛られている人たちが多い

過去にも『ゆーことぴあ』(2016年)や『花瓶に花』(2016年)などショートフィルムを制作されていますが、作り手の目線で、長編には無いショートフィルム(短編映画)の魅力は何だと考えますか?

松居
伝えたいことをストレートに、シンプルに描くことが出来ることです。僕は長編になると、複雑な映画にしてしまうので、ショートフィルムの方が評判はいいですね(笑)

SSFF & ASIAに参加する監督さんは他に仕事をしながら自主製作で撮っている方が多いです。松居監督も学生時代に自主制作からスタートされましたが、現在のように大きな舞台で活躍するに至った転換点や要因をどのように考えていますか?

松居
今こうしてあるのは、単純に「辞めていない」ってだけじゃないですかね。映画を作っている人は皆辞めていくけれど、僕は劇団公演も年に1回あるし、企画無くなることは多いけど台本を書き続けているので。単純にそれだけな気がしますね。

商業的な映画と自主制作をどのようなバランスで作っていらっしゃいますか?

松居
僕は「商業的なものをやったことが無い」という認識でいますね。

全て自分の企画ありきで、ということですか?

松居
自分が描きたくて作っているものではく、「お仕事としてやるべきことをやる」というのが商業的という認識だったら無いと思います。配給会社にちゃんと配給してもらうものが商業映画とするならありますが、線を引いたことはないです。

映画監督には「社会にこれを訴えて変革したいんです」というタイプの人もいると思うのですが、松居監督は誰のため、何のために映画を撮っていますか?

松居
それは、最近よく考えることですね。・・・資本主義への警鐘だとか、現代日本の歪を描くだとかにはあまり関心が無くて、それよりも生きている喜びを感じられる作品を撮りたいと思っています。
自由に生きられるにも関わらず、縛られている人たちが多いなって思うんです。映画のレビューを見ていても、こういう風に言わなければならないとか、言葉や形式に捉われるとか。もっと素直に生きる喜びを感じるのはどう?って思うんです。そう思っていると、世に出ている日本映画に対して、僕はカウンターでありたいという気持ちになります。

世で作られている作品へのカウンター。

松居
やっぱりつまらないというか、形に捉われているし、数字に踊らされているものが多いと思います。

観てくれる人と一緒に育つ作品を作りたい

ご自身の映画作りでも積極的に形式を崩していこうと。

松居
作品を作るのにひとつひとつ命を作るような感覚でいるんです。誰にでも好かれる人間や誰にでも嫌われる人間はいません。人間と同じ命として作っているので、誰が観ても同じような作品にはしたくないんです。
だから、日本の作品がみんな同じように作られていることが嫌なのかもしれないです。「これはラブコメディです」とか、「これは余命もの」ですとか。説明は簡単だし、その方が集まりやすいのかもしれないけど、モノじゃないんだからって思います。

映画が形だけで消費されていく感覚ですね。

松居
そうです、消費されていくのが嫌いなのかもしれないです。
『アイスと雨音』っていう舞台なのか映画なのかライブなのかドキュメンタリーなのか何だかよく分からない作品を作ったのですが、お客さんからの反響が大きくて、そうなっていくうちに自分達の意識も変わっていきました。「あ、『アイスと雨音』ってこういう作品なんだ」って。映画館で作品をかけたことで作品の形が変わっていく、一緒に育っていく感じがいいなぁと思いましたね。

『スワブ』にはどういう反響が来るか、想像するものはありますか?

松居
「変態だ」って最初は言われると思いますが、どこかで「神話」なのかもしれないなって言われたら嬉しいですね。自分の中では普遍的なものを描いたつもりなので。僕はオンラインで公開したものがどう育っていくかってやったことがないので、観た人の顔が見たいですね。

ご覧になられた方には、コメントや感想をぜひお寄せいただきたいですね。

松居
そうですね。

清純派女優の阿部純子さんが関西弁の女性教員を演じる

ところで、10月から舞台「君が君で君で君を君を君を」の公演が始まりますが、ぜひ見どころを教えてください。

松居
僕は舞台と映画を同じ温度でやっているのは大きいなと思っています。舞台演出の人が映画を撮るにしても、映画監督が舞台をやるにしても、どっちかに重心が傾くと思うんですが、僕は同じくらいの温度でやっています。
元々自分が7年前にやっていた舞台があって、それを映画にしたのが『君が君で君だ』なんです。舞台を映画化して、テーマを深堀して伝わるようにして。そして、それをもう一回舞台で作り直そうと思って作るのが「君が君で君で君を君を君を」です。
同じテーマでもアウトプットは7年前と去年と今年で全然違います。改めて愛について、新しく、面白く、作ろうと思っています。

最後に、これから『スワブ』をご覧になられる方へのメッセージをお願いします。

松居
皆が持っている、持っていたはずの衝動を描いているんですが、その感情を思い出したのなら、主人公マサオのように、もやもやして走り出したくなると思います。観る人によって受け止め方が違うのを確かめるという点でも是非観てほしいです。

本日はありがとうございました。

取材:大竹悠介
撮影:吉田耕一郎

松居大悟(まつい・だいご)

1985年福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰。12年、『アフロ田中』で長編映画初監督。『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』など枠に捉われない作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』(15)でベルリン国際映画祭出品、『アズミ・ハルコは行方不明』(16)は東京国際映画祭・ロッテルダム国際映画祭出品。クリープハイプ、銀杏BOYZなどのミュージックビデオも手掛ける。今年3月に公開された741カットの『アイスと雨音』は大きな話題を呼び、最新作の『君が君で君だ』はロングラン上映中。

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Writer:大竹 悠介

「ブリリア ショートショートシアター オンライン」編集長。大学院でジャーナリズムを専攻した後、広告代理店勤務を経て現職。「映画体験の現代的な価値」をテーマに全国の取り組みを継続取材中。ショートショートではWEBマネージャーやクリエイターコミュニティの運営を兼務。

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