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COLUMN
Dec. 11, 2019

【上映会のつくりかた】第2回 : 小規模上映のコツ~お客さんとのコミュニケーション~

「映画上映を自分の場所でやってみたい!でも、なにから始めればいいんだろう?」
上映設備は?作品の権利は?実際に準備を始めようと思うとハードルを感じてしまうもの。そこで、飲食店などを会場に上映会を主催する「旅する映画館 café de cinéma」のちゃっぴーさんに上映会のコンセプトの立て方や、準備のポイントについて連載をいただくことになりました。全5回のコラム、2回目は、雑司が谷のカフェでの上映と、小規模な上映会ならではのお客様との「距離感」について。

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こんにちは。映画の上映会を企画・主催する「旅する映画館 café de cinéma」主宰のちゃっぴーです。最近数多くの、そして様々なスタイルの“上映会”が開催されていますが、その中で「旅する映画館 café de cinéma」の特徴の一つである、小規模ながら“日常の延長線上にある映画(館)”を目指すスタイルと、アットホームな場を作るコツについて、前回に続いて少しお話しできればと思います。

ちゃっぴーさん

小規模上映にこだわるワケ

前回お話しした、ボクの企画・主催する上映会は大きく分けて3つのカタチがあります。
(A)小会場ながら地域や場所(店)と一緒に、“日常の延長線上にある映画”を目指す上映会【10〜15人規模】
(B)映画にプラスα(例えばゴハン)を加えた上映、興味のきっかけは映画でもゴハンでもOK!来てもらい、もう一方を知り、さらには両方楽しんでもらう上映会【30人前後】
(C)パートナーの要望に応じた作品選びから上映までをトータルにサポート実現する規模の大き目な上映会【50人以上、ケースバイケースで100人、300人・・・など】

その中でも特にこだわって開催し続けているものが、そして一番多く開催しているのが、(A)の小規模且つ定期的な上映会です。やはり、イベントを主催する身としては、大きく、ハデな、話題になるような企画を実行したいという思いはあります。イベントとしてのある種の醍醐味だと思います。しかし、それ以上に、この小さい規模での上映会は、自分にとって、旅する映画館 café de cinémaにとって、楽しく、大事な時間となっています。
なにしろ、規模が小さいということは、観にきていただくお客様との「距離感」が非常に近いのです!
当たり前のことですが、規模が大きくなればなるほど、来てくださったお客様と、こちら側(主催側)は物理的にも時間的にも、距離感は遠く離れてしまうもの。もちろん、その中での近い距離感も存在しますが、大多数のお客様とは多分「会う」ことなく過ぎ去ってしまうのではないでしょうか?
でも、規模が小さければ、来てくれたみなさんの顔を見て、話すことができ、まさに全員と「会う」ことができます。それに定期的に開催しているからこそ、来ていただける機会も頻度も上がる可能性があります。そうすることで、より良い距離感が生まれ、もっと気軽に、フランクに、映画を楽しむだけでなく、その場を楽しんでいただけるのではないかと思います。

会話ができることで、お客様とボクで、お客様同士で、お客様とお店で、それぞれコミュニケーションが生まれ、単なる主催者と観客という関係以上の共有感が生まれてきます。それはさながら「サロン」のような場所。好きなモノ・コトをきっかけに、映画や映画だけでない、もっと広い趣味や考え方をフランクに話せる場所になっていけば嬉しいと思っています。
そのためには、規模が大きくなくて、定期的に開催している場所、毎回「映画」という共通項を提供できる場所、ドリンクやゴハンでちょっと気楽に楽しめるリラックスできる場所があってもいいのではないかな?と思っています。
なによりボク自身、あまり人が多く、知らない人に囲まれた中にいるのが苦手・・・ということも大きな理由かもしれませんが(笑)

年間100回近く(2019年は100回以上)上映会を開催している中で、小規模且つ定期的な上映会は、前回お話しした隔週開催のヱビスキネマ(恵比寿、ビストロダルブルにて)をはじめとして、その他に月1回開催のゆるいえいがかん(雑司が谷、yurucafe)、Movie at Portland Cafe(三軒茶屋、Portland Cafe and Market)、シネマ at KENT(目黒、KENT STORE TOKYO)、そして2ヶ月に1度の青猫キネマ(不動前、M.A.青猫)があります。
※過去には他にも4-5箇所ありましたが現在は終了もしくは休止中

どこも1年以上つづいいている場所ばかりですが、その中でもゆるいえいがかん(雑司が谷、yurucafe)は、「距離感」の近さ、そしてコミュニティ感が独特な上映会です。

静かな住宅街に囲まれた雑司が谷・鬼子母神西参道

「ゆるさ」が一体感を生む上映会のコツ

yurucafeでの上映は、始めてからすでに3年が経過しています。カフェ自体がオーナーの気質もあってか、“ゆるい”雰囲気でゆったり過ごせる、まさにyurucafe(ユルカフェ)。だからこそ、ここでの上映会の名前は「ゆるいえいがかん」。
元々建築に携わっていたオーナーが、全て手作りで作り上げた2階建の居心地の良いカフェですが、2階はレンタルスペースとしても活用されています。ここが、毎月1回(特定の曜日等は決めていません)、ひとときの間、映画館に変わります。
上映は20時から。料金は¥1,500(税込)で、1ドリンク付き。オーナーが作るいわゆるカフェメシとともに映画を楽しんでいただけます。定員はおおよそ10名。過去には最大で30名近くご入場いただいたのですが、現在は多くても15名前後としています。前回ご案内した「ヱビスキネマ」(恵比寿の老舗ビストロの一角で開催)と異なり、完全に映画を観る空間となりますので、より映画と向き合ってご覧いただけます。何より、映画上映時はオーナー自らも一緒に楽しむために、その時間お店を閉めて、一緒に鑑賞する、ほんとにユルいお店なんです。

店舗外観

ここで、上映を始めたきっかけは、2016年の8月、まだyurucafeが雑司が谷に移転する前の江戸川橋にあったころ、café de cinémaにも何度か来てくれたアーティストの友人が、「個展と一緒に映画の上映をやらないか?」と声をかけてくれたことがきっかけです。
実は、旅する映画館 café de cinémaは、スタイルとは別にコンセプトとして「映画×場所×〇〇」として、何かを掛け合わせた上映会を意識しています。なので、yurucafeでの最初のきっかけは「映画×yurucafe×アーティスト(人)」でした。
その時はアーティストが国内外を旅した時の写真をベースに「旅」「ファッション」「アート」をテーマにした個展であったため、そのコンセプトにあった作品を2作品上映しました。
それから移転前に1回、そして移転後2回開催してから、定期上映として「ゆるいえいがかん」をスタートさせたので、実は2019年11月でVOL.31といいつつ、実はすでに36回開催していることになるのです。

上映の模様

yurucafeの特徴は、特にお客様。オーナー独力で作り上げているカフェの雰囲気、そして雑司が谷という街のゆったりとした雰囲気に馴染んだ地域のお客様が非常に多くいらしています。
そして映画上映がこの場所で定着するとお店の元々のお客さんだけでなく、ボクの他の上映会会場のお客様でも、「ゆるいえいがかん」に足を運んでくれる方が多くなりました。
そして、上映後は2階でアフタートークをしたあと1階に降りて、さらにお酒や食事を楽しみながらオーナーも一緒にいろいろ映画について、ワイワイとまさに店全体で楽しむ時間を過ごしていただけます。

なので、ゆるいえいがかんのお客様は、他の会場以上に、一体感が強い感じがします。それは、オーナーもお客様も一緒にお店全体で、毎月の上映会を開催している、まさにゆるいけれども、映画館になっている瞬間なのかもしれません。
このゆるいえいがかん、たまに特別編と称して、ワークショップやゲストを迎えてちょっと趣向をプラスした上映も行っています。この場所ならではの、ちょっとゆるい企画を今後もつくっていければと思います。

ところで、「旅する映画館」というキーワードは、実はこのyurucafeから始まったのです。きっかけとなったアーティストに言われた一言。ボクの映画(上映会)も旅をしているようなものだね、旅する映画館だね、と。
まあ、まさにそのまんまなのですが、ちょうど東京以外での上映も実施していたし、まさに様々な地域、特に映画館のない地域での上映をつくっていきたいという想いは当初からあったので、この「旅する映画館」というワードを使わせてもらい、「旅する映画館 café de cinéma」として、より自分の目標を表現した名前となったのです。

「ゆるいえいがかん」参加者の皆さんと(左から2番目がオーナーの中澤宏仁さん)

コミュニケーション、作り込まないのが café de cinema流

ちなみに、「ゆるいえいがかん」だけでなく、ボクの上映会で共通しているのは、お客様同士が楽しんでもらえる空間作り。
コツ、と言うわけではないですが、ポイントはいくつかあって、1つ目は「なにもしない」ことです(笑。なぜって、全部御膳立てしちゃえば一方通行で終わってしまうことが多いと思います。もちろん、アフタートークで映画についての解説や裏話などをしていますが、ボクは評論家ではないので、言える事(わかる事)は限られてる。だからあまり深堀しすぎず、「なにもしない」なんです。
2つ目は、ボク自身がその映画が好きである事。いえ、全部の作品が絶対的に好き、ではないです。でも自分が何かしら引っかかっていた作品であればこそ、好きな映画だからこその感情、感覚ってあると思うのです。
そして、カフェなど飲食店で上映する際は、その場所と一緒に場を作り上げていく事。お店も主体的に関わるからこそ、一体感が増すのだと思います。
せっかく距離の近い場所に集まっているんだから、ボクはあくまでもきっかけを投げかける存在。全部話したりしません(し、できません!)。でも好きな映画だからこそのポイントもあるし、お店のスタッフからも楽しい雰囲気が伝わってくれば…もうかなり楽しい場所になるのではないでしょうか?
実際、映画に関しての情報は、お客様の方が知っていることが多いこともたくさん!例えば映画に出てくる地域について、文化について。そして、誰かが話をしてくれることで、他の人も話をしやすくなる空気になります。
もちろん来ていただく人によって受け取り方は様々ですし、実際ボク自身も知らない人との会話は苦手な方。だからこそ、なるべくみなさんに声をかけて、反応を見ながら、一歩一歩進めていきます。だから、1回よりも2回、3回と来ていただいた方が、そのお客様にとってもより一緒になって会話が作りやすい雰囲気になっているはずです。

次回の開催は?

そんなゆるいえいがかんの次回は2020年1月14日に開催します。ご興味をお持ちの方はまずは一度足を運んでみてください。
1月14日(火)20時上映開始
『Bar25』(日本未公開&未DVD)上映 / 1ドリンク付き¥1,500 / 定員10名程度
詳細はこちら
毎月1回開催ですが、特定の曜日等ではないため、詳細は旅する映画館 café de cinémaのFacebookページでご確認ください。

『Bar25 時間の枠を超えた日々』

yurucafe

豊島区雑司が谷のゆる〜いカフェ。。
営業時間:
月・火・木・土・日 11:00〜22:00
水・金 11:00〜16:00
定休日:不定休
アクセス:豊島区区雑司が谷3-10-6 副都心線雑司が谷駅から徒歩5分
Facebook

旅する映画館 café de cinema

主にカフェやバー、レストラン、フラワーショップなどが、その時、その場は“映画館”に・・・普段訪れる場所が、ある瞬間“映画館”になる。その場所と集う人、そこに“映画”というエッセンスを加え、日常の延長線上にある映画を目指し全国で上映会活動を行う。
https://cafedecinema.com/
※1 場所はその時々の店舗の予約状況で変わります
※2 定員数が10名なので、どうしても観たい場合は事前連絡で座席確保もしています

旅する映画館café de cinémaでは上映権利許諾のご相談やサポートなども対応しています。規模や実現性に合わせた対応方法などもアドバイスできますのでお気軽にご連絡ください。
問い合わせ:contact@cafedecinema.com

Writer:ちゃっぴー(祖山 裕史)

旅する映画館 café de cinéma主宰
映画業界に憧れ、文化施設のコンサルタントからデジタルビジネスを経て、幾つかの企業で映画を中心としたVODサービスの立ち上げや企業の立ち上げに参画。現在はsimpleplus合同会社を設立、主に映画のデジタル関連のライセンスやビジネスに携わる。café de cinémaはライフワークとして、もっと映画を楽しみ語らうサロン的な雰囲気と場所を目指し、映画だけではなく上映場所や“何か”を合わせた、気軽な上映会を日々開催している。

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