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COLUMN
Aug. 28, 2018

【映画にみるファッション】『ブルックリン』
―パーソナルを象徴するファッション―

シネマチックなライフスタイルのヒントを様々な視点から紹介するコラム「Cinema for Life」。
今回は現在最新主演作『追想』が絶賛公開中のシアーシャ・ローナンが主演し、2016年のアカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされたドラマ『ブルックリン』。
アイルランドからニューヨークのブルックリンにやってきた少女の青春や揺れ動く心を描いた本作を、ファッションの切り口でイベントクリエイターの菅原敬太氏に語って頂きます。

パーソナルな魅力を引き立たせる色使い

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

アイルランドの小さな田舎街に暮らす主人公 エイリシュ・レイシー(シアーシャ・ローナン)は、不満を抱えながらも食料品店で働き母と姉ローズ(フィオナ・グラスコット)の3人で静かに暮らしています。
街は閉鎖的で封建的な雰囲気ですが、ファッションにもその傾向が現れています。

エイリシュは、アイルランドのナショナルカラーであるグリーンのコートやケーブル編みのニットを着用していますが、どこか家庭的で同じくグリーンのカーディガンを着用する母親の影響を強く感じます。
しかしながら閉鎖的で封建的というのは、ある意味伝統的と同意語であるように思います。

伝統とは先人達のトライ&エラーの結晶です。
その証拠に、エイリシュの赤毛は、補色のグリーンとあわせることで強く引き立ち、さらに白い肌が赤とグリーンの発色をより鮮明に美しく際立たせる中間層の役目を果たすなど、パーソナルな魅力を引き立たせる色使いに関しては完璧で、先人達が何故この色に辿り着き自分達の色にしたのかがよくわかるのです。

髪色はパーソナルな魅力の一つ

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

一方で、オフホワイトのニットを着こなす姉のローズ(フィオナ・グラスコット)からは、母親や社会の中でも一定の評価や立場を得た自立した大人の女性像が感じられます。

主張しすぎないオフホワイトにローズの赤毛を合わせることで、柔らかい雰囲気の女性像が演出されていて、家族思いのローズという人物像が存分に表現されています。
また仕事着である中間色のグレーのスーツとローズの赤毛を合わせることで、冷静で知的な中に明るさや女性のエレガントを社会の中で感じさせてくれるのです。

昨今では、髪の毛の色を簡単に変えることができるので、様々な髪の毛の色に老若男女問わず変えてしまう傾向にありますが、髪の毛の色は自身のパーソナルな魅力の一つです。
自身の肌の色や身の回りの色にもっとも映えて、溶け込む色は、生まれ持ったそのままの色であるということを再認識する必要が私達にはあるのかも知れません。

新しいパーソナルが芽生えた証

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

家族と故郷に別れを告げアメリカへと旅立ったエイリシュ。慣れない生活とホームシックで涙に暮れる日々を過ごしていましたが、誠実なイタリア系アメリカ人トニー(エモリー・コーエン)と出会い恋に落ちます。

恋するエイリシュは、これまでの暖色系のグリーンから、恋が芽吹いた春を彷彿させるイエローやライトブルーなどの淡い色を好んで着用するようになります。

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

そして、ハイウェストにフレアーなプリーツスカートは、その揺れ感が恋する女性の胸躍る気持ちを表現しているようで、現代人の私達が見ても胸躍る気持ちにさせてくれます。

人は、環境の変化、心情の変化に伴って新しいパーソナルが芽生えて、新しいファッションに身を包みたくなります。
だからこそ新しいファッションは、新しいパーソナルが芽生えた証であり、自分自身の変化や成長を、ファッションを通して感じることも、ファッションの大切な役割でないかと思います。

成長した姿を象徴するアイテム

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

エイリシュとトニーの仲が深まると、エイリシュのファッションにも変化が感じられてきます。

アイルランドに住む頃は、全体的にグリーンのボリュームが多く、どこか自身の内面を守る鎧としてグリーンを身に纏っている印象もありましたが、様々な経験を通して成長したエイリシュは、自身のアイデンティティーとも言えるグリーンのアイテムをポイントで活用するようになってくるのです。

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

その象徴が、多色使いの花柄フレアプリーツスカート。
ベースカラーのベージュが落ち着いた大人の女性を表現していますが、イエローやレッドの花柄が入ることで女性の華やかさも同時に表現しています。そして草の絵柄のグリーンが入ることで、エイリシュのパーソナルと完璧にリンクしてくるのです。
このコーディネートでは、一見上着のグリーンのカーディガンに目を奪われてしまいますが、成長したエイリシュの姿を見事に表現しているのはこのスカートではないかと思います。

ファッションにゴールはない

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

ファッションの持つ一つの側面に、その時々の自信の立場や感情を表現する役割があります。

今の気分を表現したカラーやスタイルのファッションを身に纏うことで、相手にわかりやすくメッセージを送ることができますが、最たる例として冠婚葬祭やスポーツのファッションなどで、誰しもが一度は意識して実践したことがあるかと思います。

しかしながら良く考えてみると、日常のファッションの中にも、これまでの自信の様々な経験を通じて得たパーソナルなカラーやアイテムを、エイリシュのように取れ入れているものです。

だからこそ一人一人自分のカラーがあることで個性的に見えますし、しばらく会っていないと成長して別の人のように見えるのではないでしょうか?

©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ブルックリン』を通して感じたのは、経験や成長が止まらない限りどんどん新しいパーソナルが自分自身から湧き上がってくるということ。
だからこそパーソナルなファッションに正解やゴールはないのではないでしょうか…。

あなたの今のパーソナルを象徴するファッションは何ですか?

『ブルックリン』

ブルーレイ発売中
¥1,905+税
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

Writer:菅原敬太(イベントクリエイター)

新製品発表会を中心とするPRイベントのプロデューサー。
キャリア20年を誇り現在も週1本ペースでPRイベントに携わり多忙を極めるも空き時間には「服」と「甘味」を求める「ファッショニスタ」であり「カンミニスタ」でもある。 「PR演出」「ファッショナブル プロモーション」を提唱し講演や講師としても活躍中。
文化服装学院 非常勤講師 Instagram: @sgwrkta
www.synchronicity.jp

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