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Oct. 01, 2019

【Cinematic Topics】噂の泊まれる映画館「Theater Zzz」を宿泊体験レポート!

JR中央総武線を「両国」で下車。大相撲秋場所の熱戦が繰り広げられる国技館を横目に、歩くほど5分ほど。碁盤の目のように整備された下町・本所の住宅街を抜けていくと、この日の目的地「Theater Zzz」にたどり着いた。2019年8月下旬にオープンした真新しい施設で、外観はカフェかレストランのような印象。コンクリート造の建物は元印刷工場だったそうで、東東京ならではのインダストリアルな雰囲気を感じる。
館内にはラウンジ兼フロントのある部屋と、シアター兼宿泊室の2室。機能としてはホステルと映画館を合わせたような施設だ。泊まれるシアターとして、オープン当初から話題になっていた「Theater Zzz」。しかし、宿泊する部屋と映画を鑑賞するスペースが同じで、屋内にテントを張って寝る、というスタイルついては快適さを疑問視する声も聞く。
「オシャレなイメージを作っているけど、実際どうなんだろうね?」
その疑問に答えるために、BSSTO編集室が実際に泊まって検証してみた。

Theater Zzz外観

ほっと落ち着くプライベートスペースの映画館

チェックイン時間は18:00~22:00。この日は18:30から始まる映画上映に間に合うように18:00に現地を訪れた。迎えてくれたのは運営会社・蒼樹株式会社(ソーウッドと読む)でマーケティングや広報を担当する外山達也さん。外山さんは屋外上映などをプロデュースする団体「Do it Theater」のメンバーでもある。

まずはフロントでチェックイン。このあたりは普通のホステルと同じ。宿泊費は1名3500~4000円ほどで、東京のホステルの相場感覚では妥当なところだ。朝食(540円)とパジャマ&タオルセット(300円)はオプションだ。

宿帳

明るくて清潔なラウンジスペース(施設提供写真)

チェックインを済ませて、早速上映スペースへ。145インチスクリーンに向かって3段の段差が付いた客席(といっても椅子はなく人工芝が敷かれている)がある部屋で、小学校の教室がふたつほど入る広さだろうか。スタッフの李さんが淹れてくれたウェルカムドリンクの中国茶を飲みながら上映前のリラックスしたひと時を楽しむ。

アウトドアをコンセプトにした内装

この日の上映作品は『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年/アメリカ)。フロリダのディズニーワールドの近く、安モーテルで暮らす人々の生活を、母子家庭の幼い少女を中心に描いた作品だ。上映作品は日替わりで、ミニシアター系の作品が多いとのこと。その日に何がかかっているか行ってみないとわからないが、その偶然性が知らない映画との出会いを生むことになると思う。なお、今後Twitterで当日の上映スケジュールをツイート予定とのこと。

スクリーン側から見た客席

選んだ場所は写真右上の幕の内側。他のお客さんとは仕切られたプライベートなスペースで、足を延ばしてリラックスして鑑賞できた。映画を観ながら寝てしまう人も多いそうだ。ちなみに、日中はカフェ営業として上映もしているので、宿泊でなくてもこのリラックスした空間を楽しむことができる。

上映中は照明が落ちるが、真っ暗にはならない。同行者としゃべりながらの鑑賞もOK

旅する非日常体験を東京で

映画が終わると時間は20時過ぎ。19:00~23:00は、フロントのあるラウンジがバータイムとして開放されている。地元の人たちもふらりと飲みに立ち寄るらしい。この時間に、外山さんに話を伺った。

Q:Theater Zzzのコンセプトは?
外山:
「非日常体験を都心の近くで味わえる場所」です。多様な人がまじりあう場所に宿泊して、映画とお茶を楽しむことで、東京近辺に住んでいる人でも1日単位で旅をする感覚を味わえる、というのが意識していることですね。

Q:立ち上げた経緯は?
外山:
私も代表の包 怡萱(バオ イーシャン)も映画が好きで、「泊まれるシアターをつくりたい」という想いをずっと温めてきました。家で映画を観るには機材面で臨場感がいまひとつ。かといって映画館で暗い箱の中に閉じこもってみるのは画一的なスタイル。家で観るのでも映画館で観るのでもない、体験の場所が作れないかと思っていました。
蒼樹株式会社はソーシャルアパートメント事業などを展開する株式会社グローバルエージェンツ社の同僚と2018年に創業した会社で、ホテルのコンサルタントや不動産開発を事業内容としてきました。これまでの仕事はクライアントワークでオリジナルのプロダクトを持っていなかったので、自分たちで運営して得たノウハウを今後に生かす狙いもあります。

外山さん(左)とスタッフの李さん(右)

Q:両国で開業したのには理由があるのでしょうか?
外山:
ものづくりなどクリエイティブな文化が育っている東東京で物件を探していて、出会ったのがこの場所でした。両国は清澄白河や蔵前と比べると目立ってはいませんが、私たちのほかにも新しいホテルや会社があって面白い人たちが集まる場所です。私たちもTheater Zzzの運営を通して、地域の魅力づくりの一端を担えればと思っています。

Q:内装や空間としてのこだわりは?
外山:
私たちの社名「SOO WOOD」の通り、木の温かみを感じる内装にしています。それから、「境界を曖昧にする」ことを意識して作っています。例えば、カフェとシアター、一枚の布で区切った場所での雑魚寝などですね。東洋には、襖のような可動式の建具で一つの空間を幾通りにも利用する知恵がありますが、それをここでも生かせればと思っています。

Q:シアタールームのこだわりは?
外山:
映像音響設備は両国にある音響機器メーカーONKYOさんの協力で、スペックにこだわった機材を導入しています。7.1chサラウンド、4K映像まで対応しています。貸し切りもできますので、映画だけでない様々な用途にご利用いただけると思います。私たちは空間を作りましたが、使い方はお客さんが作っていく、その変化を楽しみたいです。

天井に設置された業務用大型プロジェクター

Q:今後の展開についてお聞かせいただけますか?
外山:
外国からのゲストも含め、宿泊者と地域の人が出会って新しい文化が生まれるような場所に育てていければと思います。先日はスタッフも地域のお祭りに参加させていただきましたが、今後はより地域との交流を深めていきます。
それから、2020年のオリンピックでは両国も会場になりますので、なにかスポーツイベントもやりたいですね。

カフェは「数寄茶(SUKICHA)」のブランドで営業。中国茶をベースに様々なフレーバーの組み合わせを楽しめる

気になる宿泊は・・・?

映画の上映が終わり、ゲストたちが食事等で外出している間に、スタッフがシアタールームの人工芝の上にテントを張ってくれた。宿泊場所は宿泊者ごとに区画が割り振られており、テントは1人用の大きさと2人用の大きさがある。テント、といってもアウトドアショップで販売されているようなカーボンワイヤーと合成繊維で立ち上げるものではなく、綿布を天井から吊ったものだ。
この日の宿泊者は私を除くと女性2人組が3組。いずれも若い同性の仲良し友達といった感じ。一つのテントに宿泊するのは、女性の友達同士だと抵抗がないのかもしれないが、私だったら友人と来てもそれぞれ一人用のテントに泊まる。ちなみに、人の気配は周囲に伝わるので、イチャイチャしたいカップルにはお勧めしない。ドミトリー以上、ホテル未満のプライベート感だ。

1段に2張のテントが張れる

テント内部は意外に広く、身長185㎝の私も足を十分延ばせる。リュックサックぐらいの大きさなら荷物を広げても余るくらいの広さがある。幕の中は自分のお城、秘密基地のようなワクワクを感じる。

寝具はエアーマットを寝袋型のシーツで包んで使う

テント脇にNo.キー式のロッカーがある

電源もあるので、スマホやPCの充電も安心

次に気になる水回りもチェックしよう。ラウンジの奥に洗面台とお手洗い、シャワーブースが設置されている。簡素だが新しく、掃除も行き届いている。洗面台には歯ブラシ等の基本的なアメニティが用意されており、シャンプー・リンス・ボディソープはシャワーブースの中にある。パジャマ・タオルの貸し出しもあるので、手ぶらに近い荷物で宿泊ができる。
宿泊スペースとは離れているので、23:00の消灯後でも他の宿泊者に迷惑をかけずシャワーやドライヤーを使える。

洗面台

シャワーブース

お手洗い

消灯時間の23:00になると、ラウンジと宿泊室(シアタールーム)の明かりが消灯。テントの中には本型のオシャレな照明があるので、消灯後も本を読んで寛ぐことはできる。テントの中で過ごすこの時間は日常にはないリラックスタイムといえるのではないだろうか。

一夜明けて朝のTheater Zzz。朝食は8:00からとちょっと遅め。近くには大きな公園(横網町公園)もあるので、朝の爽やかな空気の中を朝食前の散歩に出かけるのもよいかもしれない。
朝勤のスタッフが作ってくれた朝食は出汁茶漬け。鶏肉と高菜と薬味が入った鶏飯風だ。

金曜日の朝8:30。この日も仕事の私は、Theater Zzzを後にして駅へ向かう。両国に住む通勤者と同じように歩き、ホームで電車を待っているのは、何か不思議な感覚がする。旅と通勤という日常。その二つの境界が曖昧になった感じだ。

平日夜の都内プチトラベル。1泊だけでも、旅行ができて得した気分になった滞在だった。
まだオープンして1か月。これからどんなコミュニティと文化が、Theater Zzzという場所に生まれていくのか。私たちを惹きつける魅力的な場所になるかは、これからの展開次第のように思う。
同時に、外山さんも語っていたことだが、Theater Zzzをどう活用するかは利用者の私たち次第だ。ここに広がるのは余白。Theater Zzzを活用して楽しむ企画を持っている、そんな人こそ、一度遊びに訪れるといいかもしれない。

(取材・文:大竹 悠介)

Theater Zzz(シアターズィー)

「数寄(すき)と出会い、風景が重なる舞台」をコンセプトにお茶・映画・旅の3つの要素が一つの空間で集約し、風景が重なり合うことで新たな可能性を発見する宿泊施設。夜は男女混合ドミトリータイプの体験型宿泊スタイルのホステルとして営業。
住所:東京都墨田区石原1丁目18−7
TEL:03-6456-1435
オフィシャルサイト:http://theaterzzz.com/

Writer:BSSTO編集室

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。
毎週金曜日にショートフィルムをオンライン配信。常時10本ほどを無料で鑑賞できます。
https://sst-online.jp/theater/

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