コラム「映画にみるファッション」。
今回は2大スター、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット、そして『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のマーゴット・ロビー共演で話題となった映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を、ファッションの切り口でイベントクリエイターの菅原敬太氏に語って頂きます。
© 2019 Visiona Romantica, Inc. All Rights Reserved.
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、クエンティン・タランティーノ監督が、1960年代のハリウッドで実際におきた事件を題材にした作品。
主役の二人は架空の人物のようですが、物語の中ではその当時のハリウッドスターが実名で登場しています。
本人に似ている俳優がモノマネのように似せて演じているのですが、ことファッションという事では、
「スティーブ・マックイーンは、代名詞ホワイトパンツにブラックのジャンパーだよね。」
「ブルース・リーといえば、タンクトップにグローブでしょ。」
「ロマン・ポランスキー監督は、結婚式に襟元に巻いていたホワイトスカーフが何とも印象的だから。」
といった具合に、随所にタランティーノらしいウィットな演出があり楽しませてくれます。
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ファッションは、その人を印象付けるとても重要な要素の一つです。
スティーブ・マックイーンもブルース・リーもロマン・ポランスキー監督も、実際にはずっとイメージ通りのファッションをしていたわけではないのですが、ハリウッドスターとなればたった1度の着用でも強烈な印象を植え付ける効果がファッションにはあることを証明してくれています。
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リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)はピークを過ぎたTV俳優。
現在は映画スターへの道が拓けず焦る日々が続いていますが、高級感とトレンドを抑えたファッションをしています。
当時、男女問わず流行したサファリルックのディティールが施されたジャンパーを着用していますが、素材がサファリルックに多く用いられるコットンや麻ではなくレザーを用いることで、高級感があるだけではなく大人の男の雰囲気が醸し出され、最終的にはリックのクラス感までも演出してくれています。
また、レザー素材使いという点では、ライトブラン色のジャケットもレザー製で、そこにマスタード色のタートルネック、ダークブラウン色のトラウザーズとブーツといった茶系統のカラー合わせは大人のファッション上級者のコーディネートです。
それから、リックが西部劇で活躍した俳優であるからこそ、レザージャケットに施された、ウェスタンヨークがパーソナルを引き立たせるデザインとなっていて、とてもアイデンティティを感じさせてくれるファッションにもなっているのです。
リックのファッションからは、自身のクラスやアイデンティティを周囲に誇示する上で、ファッションはとても重要なピースであると教えてくれています。
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リックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、リックに雇われた付き人兼スタントマン。
クリフもリック同様に、自身のクラスやアイデンティティを周囲に誇示するファッションをしています。
大衆的な労働着がルーツであり、若者を中心にカウンターカルチャー的定番ファッションアイテムに格上げされた、デニム素材のGジャン・Gパンを、デニムオンデニムでシンプルにコーディネートしていますが、リックのレザー製との対比で自身のクラスを表現しているかのようです。
さらにとても目立つレザーベルトの大ぶりなバックルですが、これは1965年以降の「スタントマン協会員」用ベルトバックルだそうで、スタントマンが自分専用のものとして身に着けたアイデンティティを象徴するようなアイテムです。
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また時代的には、ヒッピー的なフォークロア調のシャツなどが流行していましたが、敢えてアロハシャツをセレクトするあたりは、クリフの何かしらのアイデンティティが感じさせてくれます。
余談ですが、監督のクエンティン・タランティーノは、アロハシャツをこよなく愛用する人として有名です。
もしかして、監督自身のアイデンティティをこういった形で落とし込んだのかもしれませんね。
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リックとクリフが主役の物語ですが、登場する女性達は当時のトレンドそのものといった姿で現れます。
牧場の撮影所でコミュニティを形成し生活する集団は、花柄やペーズリー柄にヘアバンド、バンダナを合わせたとてもカラフルなコーディネートでまさにヒッピーそのもの。
さらにデニムのパンツを股下ギリギリでカットしたホットパンツを女性達が穿いています。
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そしてロマン・ポランスキー監督の妻である女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)も、家の中ではストライプのTシャツとデニムのホットパンツというヒッピーを彷彿させるようなファションをしていますが、外出時はティーンエイジャーを中心に当時世界中で爆発的に流行したミニ・スカートで闊歩しています。
ホワイト色のミニスカートとブーツに対してブラック色のニットをあわせたモノトーンコーディネートにブロンドヘアが相まって、シンプルながらも目を奪われるようなファッションを披露してくれています。
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昔々ハリウッドでは…
題名である『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を日本語に直訳すると、想像力が無限に掻き立てられます。
ファッション視点で考えてみると、
-昔々ハリウッドでは、ファッションが自身のクラスやアイデンティティを誇示するアイテムであった。-
と想像してしまいます。
今では誰もが当たり前のようにしている行為ですが、今当たり前のことは、昔は当たり前でなかったことが多々あります。
ファッションにおいてもハリウッドのスター達が世界中に与えた影響は大きく、誰もが憧れるスターのファッションを真似ることから、世界中の人たちがファッションを楽しむキッカケになったのです。
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自分自身とは何かという問いは、今も昔も変わらない永遠の自分への問いかけです。
ファッションは、その問いに対する答えを表現するアイテムでもあるのです。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
デジタル配信中/ブルーレイ&DVDリリース中
ブルーレイ&DVDセット【初回生産限定】 4,743円(税別)
4K ULTRA HD&ブルーレイセット【初回生産限定】 6,800円(税別)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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Writer:菅原敬太(イベントクリエイター)
新製品発表会を中心とするPRイベントのプロデューサー。
キャリア20年を誇り現在も週1本ペースでPRイベントに携わり多忙を極めるも空き時間には「服」と「甘味」を求める「ファッショニスタ」であり「カンミニスタ」でもある。 「PR演出」「ファッショナブル プロモーション」を提唱し講演や講師としても活躍中。
文化服装学院 非常勤講師
Instagram: @sgwrkta
www.synchronicity.jp