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Jul. 10, 2024

【Creator's File】『冬子の夏』 金川慎一郎監督インタビュー

映像クリエイターとショートフィルムの繋がりを様々な角度から深掘りする「クリエイターズファイル」。
今回ご紹介するのは、国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2023のジャパン部門にノミネート、数々のCMや広告を手掛けている、金川慎一郎監督。
映画祭とその企画・運営を行う株式会社ビジュアルボイスによる、クリエイターのためのプラットフォームLIFE LOG BOX*に自身の作品『冬子の夏』の情報を登録いただいたことがきっかけで、ブリリア ショートショートシアター オンライン(以下、BSSTO)での作品配信が決まった金川監督に、作品制作の背景や、クリエイターとしてLIFE LOG BOXのようなサービスに期待することをインタビューしました。

*LIFE LOG BOXとは
ショートショート フィムフェスティバル & アジア、そして株式会社ビジュアルボイスが2023年にローンチした、永続的に保存可能なデータストレージや、ポートフォリオの機能を備えたクリエイターのためのプラットフォーム。
新しい仕事やマーケットプレイスでの収益獲得を目指し、コンテンツやクリエイターの価値を最大化するサービス。

『冬子の夏』

■監督:金川慎一郎

■脚本:煙山夏美

■主演:豊嶋花 長澤樹

【あらすじ】
高校最後の夏。進路を決められないまま、ダラダラと過ごす冬子は、行く末を定めつつある親友・ノエルの様子に、苛立ちや焦りを募らせる。行き着いた満開のひまわり畑で、二人は大きな岐路を迎えるーーー。

金川慎一郎 監督

<監督インタビュー>

ーー本作を作ろうと考えたきっかけを教えてください。 

2021年の夏、高校の同級生の脚本家・煙山夏美さんから連絡をもらい、「『冬子の夏』を映像化したい」というオファーを受けました。『冬子の夏』は、群馬県中之条町で開催されている「伊参(いさま)スタジオ映画祭」でシナリオ大賞を受賞した煙山さんのオリジナル作品です。
僕は長年、CMディレクターとして活動してきたのですが、その頃ちょうど、広告以外のものにトライしたいと思っていた時期で、まさにその前日に、それまで進めていた別の映画の企画が止まってしまったタイミングだったりもして、運命的なものを感じ快く引き受けました。

『冬子の夏』より

ーークラウドファンディングのクレジットも入っていました。どの段階でスタートし、結果はいかがでしたか?

いわゆる自主映画ということで、撮影資金の工面にはとても苦労しました。もともと「伊参スタジオ映画祭」のグランプリ受賞者には50万円の補助が出ることになっていましたが、それだけではどうしても足りない。当初からクラウドファンディングで資金調達することは既定路線でした。
クラウドファンディングを実施したのは、撮影を目前に控えた2022年の4月から6月の2ヶ月間。仕事仲間からもたくさんの支援をいただきましたが、何より、僕と煙山さんが同級生だったことに加え、キービジュアルの制作にも同窓生が協力をしてくれたこともあり、高校の仲間たちからとても多くの支援をいただきました。
目標金額300万円でスタートしたのですが、達成金額は約420万円にもなりました。撮影前にとても力強い応援をいただけたと思います。

『冬子の夏』の撮影風景

ーー今回LIFE LOG BOXにも登録いただいた本作。LIFE LOG BOXについてはご存知でしたか?
クリエイターの視点として、このようなプラットフォームの存在をどう思いますか?
今回のように、ご自身の作品が国内外の上映や配給のチャンスを得られるマーケットの場として、また、ご自身の作品データを安全に、永久にストレージできる機能について、クリエイターとしてはどのように魅力に感じますか?

「LIFE LOG BOX」の存在は知っておりました。こういうプラットフォームはとてもありがたいですね。マーケットに出るということはたくさんの人に見ていただけるチャンスが広がるということなので。特に『冬子の夏』のような短編作品は、劇場公開のハードルがとても高く、観ていただく機会も限られています。出口を模索している作品にとって、ひとつのチャンスになる場だと思います。

『冬子の夏』の撮影風景

ーー作品の各所に「冬子の夏」というタイトルのつぶやきが入っていたり、漫画を彷彿させるような、「勝手に大人になんなよ」など、セリフがテキストとして画面に出てきます。
どんな意図でこうした演出を考えたのでしょうか?

劇中で「冬子の夏」というフレーズを連呼するのは、とにかくタイトルだけでも観た方に覚えて帰って欲しいと思ったからです。映像コンテンツは今や無数にある。タイトルだけでも覚えてもらわないと翌日には別の映像コンテンツに上書きされ、観たことを一生思い出さないまま終わると思いました。とてもコマーシャル的ではありますが、映画で使用すると新しく見える気がしたので。
セリフをテキストとして出したのは、このセリフたちが、冬子とノエルの関係が変わっていく重要なセリフだったので観ている人に何らかのショックとともに残す必要があるだろうと考えたからです。

『冬子の夏』より

ーー心情を表すかのような音楽にもこだわりを感じました。
どのように音楽を決定したのですか?

短編映画なので、いろんな登場人物に感情移入する時間はない。とすると、観ている人は必ず主人公「冬子」目線で見る。「冬子」の気持ち=自分や周囲へのイライラを音楽にしたときにどうなるか?の一点集中にすれば、観た人に寄り添う音楽になるのではないかと思いました。
あとは青春映画で絶対に使われていない音楽ジャンルをチョイスしようと思っていました。その方が必ず心に残る音楽になるので。

ーー監督が映画を撮り始めたきっかけや、影響を受けてきた作品、監督はいますか?

影響を受けた作品はたくさんありますが、ディヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』はもっとも好きな映画です。

ーー先月には、ドイツ・フランクフルトのNippon Connectionでの上映も果たしました。
現地にもいかれたとのこと、ヨーロッパの方々の反応はいかがでしたか?

ニッポン・コネクション日本映画祭に参加する金川監督

冒頭の教室のシーンで爆笑していました。正直驚きましたが、各シーンの反応がとてもピュアで、ヨーロッパの観客が「映画を心の底から楽しんでいる感じ」が伝わってきてとても幸せな気持ちになりました。

ニッポン・コネクション日本映画祭にて登壇する金川監督

ーーSSFF & ASIAには2023年に参加、海外の映画祭と異なる点もあると思いますが、共通して映画祭に参加してよかったなと感じる点、また、それぞれのオリジナリティで素晴らしいなと感じる点などお教えください。

ニッポン・コネクション日本映画祭の様子

映画祭は色々な人と出会える最高の場ですね。SSFF & ASIAは、同じ志を持った人たちとたくさん出会えました。
Nippon Connectionでは、ドイツで働いている日本人スタッフから、ドイツと日本の映像制作現場の違いをヒアリングできたのは大きかったです。

金川慎一郎(かながわ しんいちろう)

1980年生まれ。CMディレクター。2003年博報堂フォトクリエイティブ(現プロダクツ)入社、2013年1月株式会社WHITE所属。主な作品として明治「R1乳酸菌」「ミルクチョコレート」「TANPACT」/KIRIN「氷結」「澄みきり」「一番搾り」/DODA /UNIQLO /大正製薬「大正漢方胃腸薬」/P&G「アリエール」「ファブリーズ」/スズキ「ALTO」/Kubota/サントリー「金麦糖質75%オフ」「明日のレモンサワー」「サントリー烏龍茶」/Renta!/ SoftBank/年末ジャンボ宝くじ/ maruho/エン転職/マースジャパン「Be KIND」/KUMON/ 日本マクドナルド「チキンタツタ」「ハワイだヨ!全員集合」/LION「NANOX」「CHARMY Magica」「ストッパ下痢止めEX」/ヤマサ/アサヒグループ食品「MINTIA」/Aflac/日経電子版/Rakuten「楽天トラベル」/JT「ひといき習慣シリーズ」/FamilyMartなど。

Writer:BSSTO編集部

「暮らしにシネマチックなひと時を」
シネマな時間は、あなたがあなたに戻る時間。
「ブリリア ショートショートシアター オンライン」は、毎日を忙しく生きる社会人の皆さんに、映画のあるライフスタイルをお届けします。
毎週水曜日にショートフィルムをオンライン配信。常時10本ほどを無料で鑑賞できます。
https://sst-online.jp/theater/

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