京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。
このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対して、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。
毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。
バルセロナから無事戻ってまいりましたー!海外旅行がひさしぶりすぎて、行くまでが大変でした。防犯対策や危険なエリアが気になり旅行プランを後回しにしたおかげで、あやうく「バルセロナに行ったのに、サグラダ・ファミリアに入れない観光客」になりかけました。どのガイドブックにも書いてありましたが、今ガウディ建築は予約が必須!お気をつけください。失敗も多々ありましたが、スペインは人も食も街もなにもかもが素晴らしく、大いに刺激を受けて帰ってまいりました。
そんなスペインも参加する大阪・関西万博が今月開幕となりましたね。今月のブリリア ショートショートシアター オンラインは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に合わせ、世界中から「未来」を考える人々が登場する作品が集まりました。
9日から配信の『ヒューズ / The Fuse』はショートフィルムならではの作品。セリフはほとんどなく、観客は音や映像からいま何が起こっているのかを理解しようと息をつめます。主人公カシウスを演じたJorge Gabinoはこれが初めての映画出演だそうで、いい意味での違和感はこれだったのか!と、あとで監督のインタビューを読んで感じました。彼が何十年間と繰り返してきたであろう日常、自分の運命をただ淡々と受け止める様子を見ながら、彼と一緒に生きることについて考えた18分間でした。
室内の光やお店のネオン、古いエアコンの送風音など、細部のひとつひとつに彼が暮らすブロンクスという街を感じたりして、センスのよさも感じます。日本とも深い関わりのある監督のようで、インタビューも面白いです。ぜひご覧ください!
©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020
未来、将来について考えるには、4月はとてもいい季節ですよね。寒くて固まっていた肩の力が少し抜けて、いつもより早起きしてできることがちょっとずつ増える。今まで我慢していたことから抜け出す勇気が出るのもこんな時期ではないでしょうか。
というわけで今月のおすすめ映画は、DV夫から自立するためにシングルマザーとして新たな一歩を踏み出し、ついにはDIYで家まで建てちゃう女性の物語『サンドラの小さな家』にしました。今回この記事を書くために再度見返しましたが、前半はやっぱりしんどいです。公営住宅に申し込むも653番、夫から離れるためのシェルターがわりのホテルも職場から遠く、従業員からも冷ややかな目を向けられる。そんな彼女がふと、「自分で家を建てることができたら…」と小さな夢を持つところから物語が始まります。
©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020
「家を建てる」なんてとんでもないことに思えますが、実際にやってみると割と素人でもできることが多くて驚きます。プロはそれをきれいに、早く、正確にできますが、適切な指導と計画、要所要所で助けがあれば女性でも家を建てるのは十分可能だと思います。もちろん映画の中でも、彼女一人ではなく多くの人を巻き込んで実現していきます。社会的に孤立していた彼女が人に頼ることを覚え、勇気を出して人と関わり、行動する。自分だけじゃなく、人をも動かしていく。そして彼女の自立が、家という形のあるものに結実していく物語です。
©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020
原題は”herself”、私は家や部屋が私自身だと思うことがよくあります。こんな仕事をしてはいますが、トラブルを抱えている時、元気がない時は部屋も同様に混乱していきます。逆に少し前向きな気持ちが出てきてまずはじめに取り掛かるのが部屋の掃除だったりします。滞っているもの(郵便物、提出物、ゴミなど)を捨てたり、繋いだりすることで少しずつ整理されていく感覚がさらなるやる気を与えてくれます。
©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020
いろんなものが芽吹いていくこの季節、ぜひこの映画からパワーをもらってください。ちなみに私も節目の時期、これからの10年を想像しながら足場づくりをしたいと考えています。
0から新築するのではなく、古い民家をDIYで改修して住んでいる著者によるセルフビルドの教科書。DIY部門で一位だそうです。実は私の友人で、私も長年家づくりに参加させてもらいました。手書きの図解がわかりやすくて、改修を通して家の成り立ちがわかる希少な本。「セルフリノベーションの極意とは…「壊すこと」です」に完全同意!これにはものすごく勇気が必要でなかなか踏み出せない一歩でもあります。