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Sep. 19, 2025

【映画にみるインテリア】映画にみるインテリア
〜 Interior Design In Cinema 〜 vol.18

京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。

このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対して、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。

毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。

今月のブリリアショートショートシアターオンラインは「占い」特集!なんでも9月9日は「世界占いの日」なんだそうで、占いは運命の救急であるという考えから制定されたんだそう。世の中にはいろんな「日」がありますねー。

むかし義母を横浜の中華街に連れて行った時に、「手相をみてもらいたい」というので初めて「占いの館」を訪れました。ところが緊張しすぎた義母は手を見せながら自分の生い立ちをしゃべりまくり、ほとんど何も聞けないまま規定の時間が終わるという苦い思い出があります。その時は損をしたように思いましたが、占いって「特別な力を持っているであろう人が、自分の話に真剣に耳を傾け相談に乗ってくれる」そういう体験にお金を払っているのかもしれないな、と今は思います。

今月の映画Netflix『ムーチョ・ムーチョ・アモール:カリスマ占星術師ウォルター・メルカド』

NETFLIX

そんな占い師さんが出てくる映画はたくさんありますが、今回は本物の占い師さんのお家がみられるドキュメンタリーをご紹介します。プエルトリコ出身の占星術師、ウォルター・メルカド。彼は1970年ごろからテレビを中心に占星術を紹介し、その後中南米、アメリカと活動の場を広げた超有名人なんだそうです。

大学ではダンスを学び、俳優としても活躍していた彼がふとしたきっかけでしゃべった星占いが大反響をよび、その中性的な容姿、人を魅了する立ち振る舞い、彼オリジナルのファッションセンスで瞬く間に人気者になりました。番組では彼の自宅でのインタビューを中心に当時の活躍ぶりを紐解いていくのですが、とにかく華のある人、そしてサービス精神と愛に溢れた人、という印象。ものすごくショーアップしているので、今みると神聖な感じはしないのですが(失礼!)占いの内容が前向きで、エネルギッシュ。毎日自分の星座が出るのを楽しみに待っていた、というファンの気持ちがよくわかります。あんなふうに言われたらうれしいよね。

NETFLIX

そんな彼が住むプエルトリコ、サン・フアン市の邸宅は、部屋ごとに壁が塗り分けられていて、アートや装飾品、ヒーリングアイテムが所狭しと置かれています。インテリア的にいうと、マキシマリストとよばれるスタイルのお手本のようなお家です。ファッションアイコンとも呼ばれる彼のドレスがかけられた衣装部屋の壁はコバルトブルー。ビーズやスワロフスキーで縁取られた色鮮やかなドレスに負けない、鮮やかな壁です。

彼は特定の宗教に与しない立場を貫いていたようで、彼の部屋に置かれた宗教アイテムも仏教、キリスト教、なんでもあり。それでも広い面積を持つ壁がまとめてくれているのがよくわかります。多様な価値観、全部ひっくるめて彼のパーソナリティだというのを体現しているようなお部屋でした。

占いって境界のあやうさみたいなところが面白く、ほんとかうそか、当たるか当たらないか、そうなるかならないか、グレーのところで楽しむのが正解なんじゃないか、と思います。彼の人生からも、そんなギリギリにとどまることの大切さ、むずかしさが感じられて占いについて改めて考えさせられました。

今月のショートフィルム『フォーチュンクッキー / In the fold 』

占いをテーマにしたショートフィルム、正統派もありましたが、「オレンジの皮が切れずにむけたらオーディションに合格する!」なんて挑戦もありましたね。私も小学生のころはそんなことばかりしてたなー。

今月のおすすめは『フォーチュンクッキー / In the fold 』、時代も場所もわからない独特な世界観がおもしろかったです。街の小さなチャイニーズレストラン、従業員もお客さんも多国籍、ファッションもそれぞれでそのミックス感が生き生きと感じられます。店員の愛想もよく、笑顔で入ってきた男性が慣れた様子で左手をかざし席に着くと、店内の奥では旧式のパソコンがカタカタと占いをはじめ…。

いや、ほんと面白かった。なんとなくどれも日常の光景のような気がするんですが、そういう気持ちでみていると置いていかれます。対比の表現がとてもうまくて、何度もみたくなる味わいのある映画でした。まだの方はぜひご覧ください!

https://www.fortuna-maria.com/items/115088539

↑宗教アイテムはインテリア好きにも人気です。スペインの蚤の市でもたくさんのマリア像が置かれていて、宗教に関係なくほしくなりました。

Writer:DECO-TE

京都で家族+猫2匹と暮らすインテリアコーディネーターです。 はじめてハマった映画は『ダーティ・ダンシング』、ビデオテープが擦り切れるほどみて研究し、高校の体育の授業では創作ダンスも披露しました。 好きな映画は一時停止しながら何度も見るのが好き。お部屋の細部をみながら、その人の人生や生活を想像して楽しんでいます。

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