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Aug. 18, 2026

【映画にみるインテリア】映画にみるインテリア
〜 Interior Design In Cinema 〜 vol.29

京都の町屋でインテリアコーディネート業を営むDECO-TE(デコ・テ)と申します。

このコラムでは映画のインテリアに焦点をあて、物語をより深く味わう体験を一緒に楽しんでいきたいと考えています。映画のセット、背景をつくる方々を「美術さん」とよびますが、インテリアコーディネーターが「こうありたい」という理想や未来に向かって部屋を作るのに対し、彼らは過去の蓄積が表出した姿を作り込みます。映画をみるときはおしゃれかどうかは関係なく、住人の人間性がダダ漏れているお部屋にキュンとします。

毎回その映画の空気感を感じられるようなアイテムもご紹介していきますので、お楽しみいただければ幸いです。

今月のショートフィルム『The Burning Night / 燃夜』

今月は「さよなら、子供だったあの夏」をテーマにキュレーションした作品群です。「子供でいられる場所」と「新しい場所」とのはざまに立ち躊躇っているような、そんな切ない作品ばかりです。

『燃夜 / The Burning Night』は香港の作品。広州を舞台に、少年のある夏を描いた作品です。

活気あふれるアジアの街、そこにオリンピックの熱狂と反日デモによる暴動、思春期の少年たちのエネルギーがないまぜとなって燃え上がっています。夜の街に浮かび上がる炎、集団の興奮と少年の孤独、圧倒的なパワーを淡々と見つめる作り手の視線など、随所に静と動の対比を感じました。

うちの子供たちを見ていても思いますが、若さってほんと危うい、見ていてヒヤヒヤします。自分も同じようなことをやってきたとは思いますが、間違ったり失ったりするとあとが大変なのよ、とつい言いたくなっちゃう大人の私です。

今月の映画『花様年華(かようねんか)』

(C)2000 BLOCK 2 PICTURES INC. (C)2019 JET TONE CONTENTS INC.ALL RIGHTS RESERVED

ショートフィルム『燃夜 / The Burning Night』を観て、懐かしくなったのが香港の夜。

私が香港に行ったのは大学生のころ、バンコクと2都市を巡るツアーでした。ジャッキー・チェンにハマった私にとっては念願の香港だったわけですが、前日にバンコクの屋台で買ったジュースでお腹を壊し、ホテルからは一歩も出られず。当然、香港の夜は見ておりません。

そんなわたしがなぜ懐かしく思い出すかというと、ウォン・カーウァイの映画とともに青春時代を過ごしたから。彼が撮る夜の香港と、その街に暮らす男女はとにかくかっこよかった。

わたしは普段インテリア・コーディネーターとして「照明は絶対電球色!蛍光灯は機能的だけど、家はオフィスじゃありません!」と声高に主張しておりますが、ウォン・カーウァイに関しては「まぁ、蛍光灯もありか。だってアジアの家だもん…」と弱気になります。蛍光灯さえ作品に取り込んで世界観を作り出す、唯一無二の存在でした。

(C)2000 BLOCK 2 PICTURES INC. (C)2019 JET TONE CONTENTS INC.ALL RIGHTS RESERVED

そんな90年代の蛍光灯的世界観を脱ぎ捨てて、2001年に『花様年華(かようねんか)』が作られました。まさに「円熟の極み」とも言える作品で、カンヌなど世界的にも高く評価されています。映画の舞台は1962年の香港で、セットもファッションもクラシックな味わいがあります。マギー・チャンが着るチャイナドレスが見事なことでも話題になりました。

【ストーリー】
あるアパートで隣人となった二組の夫婦、暮らすうちにチャウ(トニー・レオン)は妻の、チャン夫人(マギー・チャン)は夫の不貞に気づきはじめます。しかも相手は隣人。裏切りによる傷と孤独を埋めるように距離を縮める二人。

1960年代の香港の暮らしとインテリアが楽しめます。カメラワークが秀逸で、ドア枠や鏡越しに覗き見する、いわゆる「フレームインフレーム」のテクニックや、人を追わず固定された画面を見ながら聞こえてくる会話に聞き耳を立てているような仕掛けが随所に散りばめられています。

(C)2000 BLOCK 2 PICTURES INC. (C)2019 JET TONE CONTENTS INC.ALL RIGHTS RESERVED

この映画では蛍光灯に照らされる味気のないオフィスと、テーブルランプやブラケットで照らされた住宅との雰囲気の違いがよくわかります。居住空間ではデザインの異なるシェードが画面のあちこちに散らばっていて、光と影を生み出しています。灯りのそばで新聞や手紙を読む姿、俳優たちの魅力も合わさって、人間の営みそのものがアートのようでした。

映画はひとりで観に行きましたが、今までのスピード感ある作品を期待していたからか、当時はそれほど感激しませんでした。でも25年ぶりに観て、5作品の中ではダントツによかった!わたしもそれだけ大人になったということかしら。

ちょうど今Netflixで、彼の代表作『恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』の5作品を4Kレストア版で見られます。ぜひご覧ください!

【今月、ご紹介したいアイテム】

二人の食事シーンで印象的だった、ファイヤーキングの食器。ファイヤーキングはアメリカのブランドで、実際に香港で使われていたかは定かではありません。でも二人の食事シーンがあまりに素敵で、ほしがる人が増えたそうです。

Writer:DECO-TE

京都で家族+猫2匹と暮らすインテリアコーディネーターです。 はじめてハマった映画は『ダーティ・ダンシング』、ビデオテープが擦り切れるほどみて研究し、高校の体育の授業では創作ダンスも披露しました。 好きな映画は一時停止しながら何度も見るのが好き。お部屋の細部をみながら、その人の人生や生活を想像して楽しんでいます。

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