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COLUMN
Dec. 14, 2018

【シネコヤが薦める映画と本】〔第7回〕音と映画と~映画館で感じる音の奥深さとは?~

海水浴客で賑わう江ノ島から電車で一駅。閑静な住宅街に囲まれた鵠沼海岸商店街の一角に「映画と本とパンの店・シネコヤ」がある。こだわりの映画と本を用意して街の人たちを温かく迎える竹中翔子さんが、オススメの1本と1冊をつづる連載コラム。今回は音楽映画についてつづります。

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シネコヤにちょっとマニアックな一冊がある。1960〜70年代を中心としたギターのデザイン写真集「INSTRUMENT」。音楽好きなスタッフが、シネコヤの本棚の高い位置にこっそり置いていた。曰く、電化製品やコンピューターなど、最新のものが最高とされる現代、古くなると価値が出るものもある…楽器は特殊だ、とのこと。見た目のノスタルジーだけではなく、実用面でも古くなるからこその良い音が出る。それが楽器の楽しさであり、鳴る音の奥深さにもつながるのだろうな、と思う。
相当マニアックな本だと思っていたが、案外、手に取られてじっくり熟読している人が多い、人気本だ。音楽好きの心をくすぐる本なのだろうなぁ、とお客さんが開いているページを遠巻きに眺め、ふと、音楽映画を毎月やってみようと考えた。

私はというと、音楽には疎くてあまり詳しくないが、音楽映画は好きで古いミュージカルや、最近は音楽ドキュメンタリーが面白い。特に本物のミュージシャンが演じていたり、アーティストを追ったものだったり、やっぱり作り物とは違い「音」を体感することができて楽しい。音楽好きなお客さんも多く、お客さんから教えてもらうこともある。そこから出会う映画は、また自分の知らない世界をおしえてくれる。

そんな中でシネコヤが選んだ今月の音楽映画は、ロックバンド「ザ・バンド」のラストコンサートをマーティン・スコセッシが監督した『ラスト・ワルツ』だ。
1976年11月25日、ザ・バンドのラストコンサートを追ったライブドキュメンタリー。映画はライブのアンコールシーンからはじまる。「まだいたの?」と、惜しむ客を煽るようにノリノリの音楽で盛り上げる。

ボブ・ディランをはじめ、エリック・クラプトン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ヴァン・モリソン、マディ・ウォーターズなど、豪華なゲストたちとの競演で、その一夜限りの豪華なステージの模様が臨場感たっぷりに映像化された。1978年公開から40周年を記念して、デジタルリマスター版が今年公開している。

(C)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

質感や雰囲気のある音

シネコヤで上映するのはデジタルリマスター版ではなく、35mmからデジタルにおこしたオリジナル版。映像にはフィルムの傷が多数見られるが、そのノイズもまたノスタルジーな印象となって、嫌いじゃないなと思った。音も決してクリアで美しい収録ではないが、ライブの粗さや、当時のフィルムに焼かれた磁気の質感を感じる、味わい深いものだった。

その魅力を最大限出したい。

デジタルっぽい音じゃなくて、当時の質感、時代の雰囲気を出した。良質な音ではなく、当時のアナログっぽい、まるでカセットテープのようにも感じる懐かしい音。そうすることで、当時のライブ感や音楽映画としての世界観が伝えられたらいいなと思う。

(C)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

音の不思議

イベント上映をしていたとき、いつものように準備をしていたら「ちょっと音変えていい?」と、音響機材をちょこっといじられた。その瞬間、映画が全くの別物になった。映画とその音の一体感。一気に、自分が映画の中の住人になった。何をしたのかはわからないのだけど、音が変わったことで起きた衝撃は明らかだった。

それからというもの、毎回映画にあわせて音調整をしている。とりわけ音楽映画は難しい。故に音作りは楽しい。

音は不思議だ。高い音、低い音、広い音、狭い音、浅い音、深い音…調整次第で印象がうんと変わる。スクリーンから流れ出る音と映画が、その時代の空気を感じられるような、その映画の中にいるような、一体感を感じてもらえたら嬉しい。

今回読んでほしい本

INSTRUMENT」 2011年|Chronicle Books LLC Pat Graham ()

『ラスト・ワルツ』※オリジナル版(1978年/アメリカ/117分)

■監督 マーティン・スコセッシ
■出演 ザ・バンド/ボブ・ディラン/エリック・クラプトン/ニール・ヤング/ジョニ・ミッチェル
上映期間 12月10日(月)〜1230日(日)まで上映

「映画とパンの店・シネコヤ」

【営業時間】
営業時間:9:00〜20:00
毎週木曜日定休
【料金】
一般:1,500円(入れ替え制・貸本料)
小・中学生:1,000円(入れ替え制・貸本料)
※平日ユース割:1,000円(22歳以下の方は、平日のE.F.G各タイムを割引料金でご利用いただけます。)
※お得な年間パスポート制度あり
【アクセス】
神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-4-6(鵠沼海岸商店街 旧カンダスタジオ)
小田急江ノ島線「鵠沼海岸」駅から徒歩3分くらいです。
【問い合わせ】
TEL:0466-33-5393(代表)
WEB:http://cinekoya.com/

Writer:竹中翔子(たけなか・しょうこ)

株式会社シネコヤ代表取締役
学生時代に映画館のアルバイトスタッフを経験し、映画の魅力にハマる。地元映画館の閉館を受け「もう映画館はダメだ!」と思い、映画だけではない+αの空間づくりを目指し、「シネコヤ」として本格的に活動をはじめる。鵠沼海岸のレンタルスペースで毎月2回、フードや会場演出をこらした映画イベントを主宰。2017年4月鵠沼海岸商店街の一角についに「シネコヤ」をオープン。貸本屋を主体とした「映画と本とパンの店」というコンセプトで新たなスタイルの空間づくりを行っている。

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