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MAGAZINE
INTERVIEW
Nov. 27, 2018

【FRONT RUNNER】映画アートで壁を飾る文化を根付かせたい。
ニューヨークのEast River Posterが放つ、ビンテージ映画ポスターの世界

映画の街ニューヨーク・ブルックリンで、ビンテージ映画ポスターの魅力を発信している日本人がいる。
ビンテージポスターの展示販売を行い、映画アートで壁を飾る文化を根付かせたいと語るEast River PosterオーナーのYuta Koikeさんに、ビンテージ映画ポスターの世界を聞いた。

偶然の出会いから始まったEast River Poster

Koikeさんのご経歴を教えてください。

Koike
アメリカに渡ってもう7年になるんですけど、服飾関係の専門学校を卒業後にニューヨークに渡った当初は、現地のアパレル企業で服のデザイナーをやっていました。
その仕事を退き別の仕事を始めた頃、このEast River Posterもスタートしました。映画ポスターはあまりマーケットが固まっていない分野なので、まだまだこの活動は事業というより趣味でやっている感じですね。

East River Posterは何がきっかけでスタートを?

Koike
僕のパートナーが古着のバイヤーなのでアメリカ中を車走らせて周っているんですけど、その時たまたま古いポスターを見つけ、そのインパクトにやられて買い始めたのがきっかけですね。

インパクトというと?

Koike
アメリカのロードサイドに物の蒐集家みたいな人がいて、そこでおもちゃやポスター、古着なんかが売られていたんですが、そこのオーナーの幼馴染が映画会社で働いていたそうで、映画の劇場公開が終わると共にそのポスターが送られてきていたらしいんです。で、その倉庫に大量にポスターがストックされているのを僕らが偶然見つけたっていう。
もともと映画ポスターに興味はあったんですけど、この発見に「収益にならなくても物が良いから買おう」ってなってこの活動がスタートしました。
今では約5,000枚のポスターを所有していますよ。

5000枚!?そんなにあるんですか?

Koike
日本にはあまりいないと思いますが、アメリカにはざらにいますよ(笑)。
ただ、僕らが扱っている多くはビンテージの映画ポスターなので、ここに関しては僕らが一番だと思っています。

East River Posterという名前の由来はどこから?

Koike
漠然とニューヨークを象徴する名前がいいなと考えていたんです。
イーストリバーはブルックリンとマンハッタンの間を流れている海峡のことを言うんですけど、僕自身ブルックリンに住んで活動しているという事もあってピッタリかなと思い名づけました。

ビンテージ映画ポスターの魅力

取り扱われている映画のビンテージポスターについて教えてください。

Koike
劇場用に作られたオリジナルポスターになります。
映画ポスターは、映画が始まってからずっと作られていますけど、初期のものはストーリーがポスターを観ただけで分かってしまうある意味見せ過ぎなデザインが多いので、僕らは抽象的なデザインが増え始める1970~80年代のものを主に取り扱っています。
マーケット的にはコレクター向けの商売が主流とされていますが、僕らは映画として面白い面白くない関係なく、あくまでも壁に飾ってカッコいい作品にスポットを当てていますね。

ある意味ライフスタイルに取り入れやすいポスターという事ですね。
人気なのはどんなポスターですか?

Koike
有名作品のものはもちろん人気ですが、カルト系やホラー系も好きな人いますよ。
公開当時に刷られるポスターは、有名俳優や有名監督、それに大きい配給会社が関わっている作品だと事前に沢山刷られるんですが、単館映画やホラー作品はコアなお客さんばかりなので、上映館数が少ないために刷られる枚数も少ないんです。
ただ、好きな人はいくら出しても欲しいので、カルト系やホラー系のポスターも結果的に人気も値段も高くなります。
特にB級作品ばかり撮っているTroma Entertainmentの『悪魔の毒々モンスター』とかはファンが多いですね。

小池さんが個人的に集めているポスターってあるんですか?

Koike
『ドーン・オブ・ザ・デッド(邦題:ゾンビ)』に代表されるジョージ・A・ロメロ作品は、図柄も見た目もカッコいいので集めています。何枚か持ってますけど、全部集めたい(笑)!
あとは『トレマーズ』と『ブルース・ブラザーズ』のポスターは手離したくないかな。

ビンテージ映画ポスターの買い方

ビンテージ映画ポスターを買ううえでチェックするポイントはありますか?

Koike
僕らが扱っているのは基本オリジナルの劇場用ポスターなので、納品時に専用機械で折られるため、折り目が付いているのが特徴です。
それから右下に入っているナンバーで年号がわかるようになっています。例えば「77/78」と入っていれば1977年に刷られたもの、その前に「R」と入っていれば、ロングラン上映になったことで再度刷られたものという風に。
あとは古いものなのでダメージがあったりもしますが、一般的に量販店で販売されているリプリントものとは紙質や雰囲気が全然違うので、古着のように経年変化や公開当時に思いを寄せて楽しんでもらえたらいいですね。

ポスターのサイズも全然違いますね。これも劇場用ポスターの特徴なんですか?

Koike
はい。特にアメリカはUS1シート(27インチ×41インチ)と言う独自の規格があって、他の国より1サイズ分大きいんです。中には3枚重ねて1枚の絵になるユニークなものもあります。

販売は普段どういう形でやられているんですか?

Koike
定期的に実際に見てもらって買ってもらえる場として展示販売という形を取っています。ウェブサイトも作りましたが、サイズ感とか質感は生で見ないと伝わらない部分も多いと思うので。

それはニューヨークにはビンテージポスターの市場があって、価値づけもしっかりされているということでしょうか?

Koike
というより、ニューヨークにはアートをライフスタイルに取り入れる文化があると言った方が良いかもしれません。
日本はまだまだ壁を飾る文化が浸透していないですが、向こうはエリアごとにポスター展や額縁屋さんも多いですし、普通の人が買っていきます。それこそ公開当時観たっていうおじいちゃん、おばあちゃんが、子どもへのプレゼントとして買っていくこともありましたよ。
ただ、最近は日本でもライフスタイルを良くしていこうというムーブメントが起きていると聞くので、これから壁に飾る文化が温まっていけばいいなと思っています。

映画の街ニューヨークで体感したシネマチックライフスタイル

ニューヨークは様々な映画の舞台にもなっている、まさに映画の街。
実際に暮らされていてそれを感じる事はありますか?

Koike
リアルですかね。映画で観ていた街がここにあるっていう。
周りに色んな人種がいて、みんなが英語を喋っていて、映画で観たリアクションをしているので、リアルに映画の世界の住人になった感覚があります。
例えばイエローキャブに乗って『タクシードライバー』のサントラを聞いたりすると、映画の中で生きている気分になるのでよくやります(笑)。

今後の活動や展望を教えてください。

Koike
ニューヨーク、東京と展示販売をやってきて、今後はシンガポールとバンコクでもやることが決まっています。来年は日本にギャラリーをオープンしたいとも考えているんですよ。
やはり実物を見てもらうのが一番だと思うので、もっとたくさん見てもらえる場を作り、壁を飾って生活を彩る文化を根付かせていきたいと思っています。

Yuta Koike

ビンテージポスターディーラー・キュレーター/イラストレーター/ファッションデザイナー
2011年渡米。某米系ファッションブランドのデザイナーを経て2017年より「Eastriver Poster」の活動を開始。
ポスターキュレーションの他に、イラストレーター、ファッションデザイナーとしても活動。

Writer:青目 健

ショートショート実行委員会 プロジェクト・マネージャー
撮影:大竹 悠介/構成:青目 健
取材協力:andMade北参道

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